キヤノンITソリューションズは26日、昨今高まりつつあるサイバー犯罪への対抗手段として、日本国内でも好評を博しているセキュリティソフトウェア「ESETセキュリティソフトウェアシリーズ」の新バージョン(Windows版)を発表した。

Windows版の新バージョンでは、日々進化するセキュリティ脅威に対して効力を発揮する脆弱性対策機能「エクスプロイト ブロッカー」を強化し、新たに「Javaエクスプロイト ブロッカー」を搭載。さらに、通信を解析してリスクに備える「ボットネット プロテクション」と呼ばれる防御機能を搭載しているのが特徴だ。価格や発売日、ラインナップについては、別記事『キヤノンITS、セキュリティソフト「ESET」シリーズ新バージョン』を参照してほしい。

日本でも被害が続出した不正送金にも効力を発揮

発表会ではまず、ESETアジア セールス・ディレクターのパーヴィンダー・ワリア氏が「ESETビジネスのアップデートおよび今後のビジョン」を語った。

ESETとしてもアジア太平洋地域は重要な市場と位置付けており、その約半数を日本市場が占めているという。さらに、ワールドワイドにおいてESETは10%のシェア成長率、こと日本においては20%の成長率を実現してきていると述べ、現在は4番手の地位に甘んじているが、さらなるシェア拡大に意欲を見せた。

ESETアジア セールス・ディレクターのパーヴィンダー・ワリア氏

スライド内グラフの赤い部分が日本市場、緑の部分がアジア太平洋地域を示している

アジア太平洋地域(写真左)と日本における市場展望の詳細

アジア太平洋地域におけるESETのシェアは、ニュージーランドでは2番手、香港では3番手、台湾では5番手に位置している

日本においては、トレンドマイクロやシマンテックらの後塵を拝してはいるが、4番手につけている

モバイルセキュリティの分野においても、ユーザーから高い評価を得ているESET。Androidユーザーでお世話になっている方も多いのでは?

第三者調査機関からも高い評価を得ているESETの製品だが、今回の新バージョンでは旧バージョンをブラッシュアップするとともに、「ボットネット プロテクション」「Javaエクスプロイト ブロッカー」という新たな機能を追加した。

第三者機関からも高い評価を得ており、その技術力や信頼性が着実に積み重ねられているのがうかがえるだろう

新バージョン「ESET Smart Security v8」のスクリーンショット

旧バージョン(写真左)の機能に加え、「ボットネット プロテクション」「Javaエクスプロイト ブロッカー」を新たに追加(写真右)

ESETは、個人向けのセキュリティ製品はもちろん、企業向けの製品にも注力している。大企業向けエンドポイントセキュリティ製品「ESET ENDPOINT SECURITY6」や、中小企業にも利活用してもらうべく開発された暗号化製品「DESlock encryption」が、2015年に市場投入される。また、モバイル端末向けソフトウェア認証製品「ESET Secure Authentication2」も予定されており、様々なデジタルデバイスを駆使するビジネスシーンにおいて、よりセキュアな環境を提供していく考えだ。

日本市場への投入時期は未定とのことだが、ESETは企業領域でも新たな製品をローンチしていくという

次いで登壇したESETのウイルスラボ責任者ユライ・マルホ氏からは、今年のサイバー脅威の動向、それら脅威にどうやって対処していくか、ESET新バージョンに盛り込まれた機能について語られた。

スライドでは、「Homeエディション」「Businessエディション」の双方において、どのような脅威にユーザーがさらされていたのか、上位の30位がリストにまとめられていた。一般ユーザーは、企業ユーザーに比べて、マルウェアやアドウェアの脅威により多くさらされる傾向にあるとユライ氏。

また、日本で見られたマルウェアも紹介してくれた。なかでも、不正送金ウイルス「Win32/Aibatook」はInternet Explorerの脆弱性を突いたものや、Javaの脆弱性を突いたものなどが見られる。コモディティ化するサイバー犯罪において、日本の銀行にターゲットが絞られている特徴があるという。

ESETのウイルスラボ責任者ユライ・マルホ氏

スライド左側の青い文字が「Homeエディション」、緑色の文字が「Businessエディション」の脅威トップ30。特定の企業にターゲットを絞った攻撃も見られたという

不正送金ウイルス「Win32/Aibatook」はJavaの脆弱性を突いた亜種が新たに出現。写真右は「Win32/Aibatook」の活動推移をグラフにしたもの

ESETは、日進月歩のマルウェアに対して、現在はもちろん将来のトレンドを調査する活動も行っている。その一環として、Linuxサーバーをターゲットとしたマルウェアとインフラを突き止め、「Operation Windigo」と題した70ページにもおよぶレポート公開している。また、2007年頃から見られ始めた脆弱性を突いたマルウェア「BlackEnergy」についても紹介し、マルウェア感染に用いられた実際の手法や感染が広まった地域など、具体的な事例を示してくれた。

「Operation Windigo」で白日の下にさらされたボットネットの脅威。写真右はウイルス制作者からも"グッドジョブ!"と賞賛(?)されたことを示すひとコマ

東欧で多く見られたマルウェア「BlackEnergy」

マルウェア拡散のために、WordやPowerPointの脆弱性を悪用。ファイルを展開した際に感染させていた

「BlackEnergy」が多く活動していた地域にピンをプロットしたもの。ウクライナやポーランドで多く検出された

脆弱性を悪用されたソフトウェアのバージョンをまとめたグラフ。写真左はInternet Explorer、写真右はAdobe Reader

そして、新バージョンに盛り込まれた機能について、ユライ氏の口より語られた。旧バージョンでは、Web経由でファイルをダウンロードする際に「バルナラビティ シールド」、「エクスプロイト ブロッカー」、「アドバンスド ヒューリスティック」によって脆弱性を検知、マルウェアをブロックし、「アドバンスド メモリスキャナー」によって高度に難読化・暗号化されたウイルスを検知してきた。

今回の新バージョンでは、従来の機能を強化するとともに、Javaの脆弱性に特化した「Javaエクスプロイト ブロッカー」機能、不正送金ウイルス対策に有効な「ボットネット プロテクション」機能を追加。セキュアな環境を提供しつつ、高いパフォーマンスを実現しているという。

旧バージョンのESETならではの機能がまとめられたスライド

「ボットネット プロテクション」機能と「Javaエクスプロイト ブロッカー」機能が新たに実装された新バージョン

「ボットネット プロテクション」はボットネットとC&C(Command and Control)サーバーとの通信を検出してブロックするほか、エクスプロイトキットについても同様にブロックするという

「Javaエクスプロイト ブロッカー」は文字通りJavaの脆弱性に対する攻撃を検出してブロックする。また、LIVE GRIDによって陣酷な脅威に対し迅速に対応することが可能だという

ファイルのコピー、Webからのダウンロードにおいて、旧バージョンに比して格段にパフォーマンスが向上している

最後に、キヤノンITソリューションズ 執行役員 プロダクトソリューション事業本部 セキュリティソリューション事業部長の近藤伸也氏がプレゼンテーション。今回のESET新バージョンに向けて、約500名を対象に行われたモニター版プログラムのユーザー評価において、総合評価で94%が満足と回答したそうだ。セキュリティソフトウェアにおいて重要視される動作の軽快さにおいても、93%が満足と評価していると述べた。

国内セキュリティソフトウェア市場の全体が約3%強の伸長率なのに対し、ESETは二桁の伸長率を見せており、国内個人向け市場のシェアにいたっては、年間平均シェア10%を超えている。「顧客満足度をより高めるため、情報発信の強化や、ESETを使い続けてもらえるためのサービス、エンタープライズ向けラインナップの充実やパートナー企業への支援強化を推進していく」(近藤氏)としめくくった。

キヤノンITソリューションズの近藤伸也氏

ユーザーからの評価も高い新バージョン

成熟したセキュリティソフトウェア市場において堅調な伸びを見せるESET

さらなる顧客満足度のため、今後推進していくという4つの施策