ビジネスホテルの間で熾烈な競争に拍車をかけているのが無料朝食という存在。もちろん、利用者にはうれしいサービスだ。地方であっても、山形県の県庁所在地である山形駅前など、県庁所在地などを中心とした地区に無料朝食を提供するホテルが実に多い。
なお、この企画では、地元密着の独立系や小規模チェーンのビジネスホテル無料朝食にスポットをあててみたい。また、本文では別途料金が発生する「有料朝食」との対比で「無料朝食」と定義している。
お母さんが目の前でおにぎり作り
大手チェーンと地元チェーンの競争が地方都市の特徴ともいえるが、山形県の県庁所在地である山形駅前では、ホテルの壁面に大きく「朝食無料」書かれた「ソーレインホテルズ」の光景が印象的である。宿泊料金は会員価格で1泊3,800円~とも書かれているが、全国チェーンの平均を下回る魅力的な料金設定だ。こちらの無料朝食で特徴的なのは、その場で作ってもらえる「おにぎり」である。
「おにぎりバー」とも呼びたくなるコーナーでは、対面式でお母さんがおにぎりを一つひとつ作ってくれる。握って形作るのではなく、型枠にご飯を入れてでき上がるふっくらしたおにぎりで、具は明太子・昆布・シーチキンなどを用意。ひとり3個までだが、具の多さもさることながら、かなり大ぶりなので大満足だ。味噌汁、漬物などもピックアップできる。何より地方都市へ出張して暖かみのある朝食はうれしい。
おにぎりが出てくる無料朝食といえば、全国チェーンである「コンフォートホテル」や「東横イン」が有名だが、ソーレインホテルズから駅前通りを挟んだ至近に位置するのは「コンフォートホテル山形」である。こちらのおにぎりは作り置きで、ソーレインホテルズの手作り感やふっくら感はないが、ソーセージやスクランブルエッグといったソーレインズにはないおかずが魅力的だ。
部屋に持ち帰ってゆっくりと
また、駅からは離れた官公庁などがある市街中心部に位置する「ホテルステイイン七日町」で7時から9時の間に提供される無料朝食は、パン、フルーツといったシンプルなものだが、客室へテイクアウトできるのが魅力。煮物・焼物にご飯、味噌汁といったビュッフェスタイルの朝食ではほぼ不可能な客室へのテイクアウト、ひとり気ままなゆっくり朝食ができるというのはうれしい。
全国チェーンの「スーパーホテル」などでも、改装などで通常のビュッフェスタイルにて朝食を提供できない場合にはお弁当が用意されるが、こちらも客室へテイクアウトができる。ホテル内には電子レンジも設置されているので温めなおすことも可能。時間のある朝は、客室でゆっくりと時間を過ごせる無料朝食も魅力的だ。
※記事中の情報は2014年11月取材時のもの
筆者プロフィール : 瀧澤 信秋(たきざわ のぶあき)
ホテル評論家、旅行作家。オールアバウト公式ホテルガイド、ホテル情報専門メディアホテラーズ編集長、日本旅行作家協会正会員。ホテル評論家として宿泊者・利用者の立場から徹底した現場取材によりホテルや旅館を評論し、ホテルや旅に関するエッセイなども多数発表。テレビやラジオへの出演や雑誌などへの寄稿・連載など多数手がけている。2014年は365日365泊、全て異なるホテルを利用するという企画も実践。著書に『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。
「ホテル評論家 瀧澤信秋 オフィシャルサイト」