寒くなり、家で過ごす時間が増えてくる頃。家での過ごし方の定番といえば、読書ですよね。そして、いろいろと読みたい本はあるけれど、やっぱり一番は胸がときめく恋愛漫画ですよね! それも、個人的にオススメしたいのはBL、つまりボーイズラブ漫画です。……え? 自分は男だけどBL漫画を読んでも楽しめるのかって? ご安心ください! 僕も男ですが、男女の恋愛物とはまた違った萌えを楽しんでいますので。

ということで、今回はBL初心者にもオススメできるとっておきの漫画を、電子貸本サイト「Renta!」からピックアップしてみました。ぜひ気になる作品をクリックしてみてください!

『東京心中』(ファットキャット刊)

東京心中

今回、もっともグッときた作品がこの『東京心中』。トウテムポール先生の作品で、現在4巻まで読むことができます。この漫画、とにかく面白い! 正直、BLだとかBLじゃないとか関係なく、最高にキュンキュンする恋愛漫画です。

物語の舞台となるのはテレビ業界。何となく応募した番組制作会社に入社した宮坂絢は、顔はきれいだけど無愛想なディレクター・矢野聖司の下で働くことになります。何を考えているかわからない無表情な矢野さんですが、時折見せる仕事への情熱や印象的な表情に宮坂は惹きつけられていくのでした――。

もうね、矢野さんですよ、矢野さん! こんなにもグッとくるヒロイン(?)に僕はここしばらく出会ったことがありませんでしたよ。この漫画の魅力の大部分は矢野さんのキャラが占めています。単純なツンデレとも違うし、なんていうか……とにかくもう、かわいいんですよね!

基本的に矢野さんはクールで、何を考えているかわからないタイプなんですよ。女性的な顔立ちで、背も小さくて、めちゃくちゃ美形なんですけど、無表情で謎めいていて、決して嫌な感じではないんですが、しゃべり方や考え方がワンテンポずれて入ってくるような、そんな不思議な存在。先輩として仕事には情熱を燃やす一方で、勇気を出して告白した宮坂をバッサリ振っておきながら、いきなりキスしてきたり、もうわけがわからない! だけど、そんな矢野さんに、読者は宮坂の視点でどんどん惹きつけられていくのです。普通の人よりも、ちょっと変わった人の方が気になるってこと、よくあるじゃないですか。まさにそんな感じ。この感覚は読んでもらえればすぐわかると思います。

で、また宮坂が矢野さんとは正反対でいい味を出しているんですよね。昔から特にやりたいこともなく、何となく人よりは何をやらせてもできるタイプで、なかなか本気になれるものが見つからないという、よくいるっちゃよくいるキャラなんですが、そんな彼がテレビの番組制作という仕事を好きになって夢中になっていく様子がリアルに描かれていて、心理描写が本当にうまい。

矢野さんに対する宮坂の気持ちと同じで、読者は宮坂と一緒にテレビ業界の魅力を知っていくことになります。矢野さんへの思いと、本気になれる場所を見つけたことがクロスして、どんどん毎日が刺激的で面白いものになっていく――もちろんBLだし、恋愛漫画ではあるのですが、一方で遅咲きの青春漫画でもあると思います。

『奈落何処絵巻 あなたのためならどこまでも 平安調スペシャル』(芳文社刊)

奈落何処絵巻 あなたのためならどこまでも
平安調スペシャル

中村明日美子先生の名作『あなたのためならどこまでも』のスピンオフ作品。もともとはおオマケページ的なネタだったものが一冊になった感じです。……といってもそちらを読んでなくてもまったく問題ないのでご安心を。一応最初に2Pくらいで簡単な説明もありますしね。

主人公は高千穂巧と七海洋一。『あなたのためならどこまでも』では堅物刑事と詐欺師だった2人ですが、今回は舞台を平安時代に移して活躍します。タイムスリップとかではなく、完全なパラレルワールド。メタ的なセリフもあって、軽いノリで楽しめます。

で、中村明日美子先生といえば繊細なタッチの絵柄と色気のある表情が魅力的ですが、スピンオフになってももちろんそれは健在! むしろ平安時代ならではの雅さがすごくよく出ていると思います。

基本的には一話完結で、町で起こる怪事件を2人が解決しながら話が進んでいきます。平安時代ということで、妖(あやかし)がらみの事件が多く、和風ファンタジーミステリーとしても面白い! ぜひ本作から中村明日美子先生ワールドに触れてみてください!

『溺愛イトコン!』(リブレ出版刊)

溺愛イトコン!

いろんな意味で伝説的なBL作品『ちんつぶ』を生み出した大和名瀬先生による大家族BLコメディ。もうこれだけで買いなのですが、読んでみると、さすが期待を裏切らない面白さです。

兄弟や親戚など、男ばかりが暮らす宇田川家。料理や洗濯、掃除など家事を一手に引き受けている透司は一家の主夫的存在。そんな宇田川家に、ある日、いとこの有都がやってきます。純真で引っ込み思案な有都が宇田川家に溶け込めるよう苦心する透司でしたが、次第に有都に対する気持ちが募るのでした――。

『ちんつぶ』に比べるとぶっ飛び具合はかなり控えめ、というよりも全然ぶっ飛んではなくて、基本的にはしっかり者の透司と無邪気でかわいい有都との淡いラブストーリー。……なのですが、テンポの良さやコメディ的な面白さはさすが大和先生で、しっかりとギャグのエッセンスが生きており、何度も爆笑させられます。同居している親戚連中もしっかりそれぞれの個性が描かれていて、最初は「人数、多っ!」と混乱しそうになったのですが、読んでいくうちにちゃんと全員のキャラクターが頭に整理されて入ってくるからすごい。読者自身が有都になった気分で、少しずつ宇田川家に溶け込むことができます。ああ、大家族の一員になるって、こういう感じなのかな。

後半に収録されている短編もかなりいい味を出しているので、そちらもオススメです!