2014年9月19日に発売がはじまったAppleのiPhone 6と同Plus。発売日は各国のAppleストアに転売を目的とした来客が殺到し、行列を守らないなど大きな混乱も起きたようだ。転売目的で購入されたiPhoneはそのほとんどが中国市場に流れていったと見られている。では中国ではそれらのいわば"闇取引"で輸入されたiPhoneはどのようにして販売されているのだろう? 中国の首都、北京を訪れその現場を見てきた。
販売場所はAppleストアの前、iPhone6の転売人が集まる
まずはiPhone6の正式発売前の状況を見ようとAppleストアを訪れて状況を見ることにした。中国では2014年10月19日からようやくiPhone6が発売だが、筆者が現地を訪れたのは9月末。なので、本稿の内容は9月末時点のものだ。
北京にはいくつかの店舗があるが、その中でもおしゃれなお店が集まり外国人買い物客も多いAppleストア三里屯を訪れることにした。Appleストアの入り口前に行ってみると、店に出入りする客の動きを妨げるかのように数名の人間が一定の間隔で立っていた。そして各自はそれぞれ右手に白い箱を持っており、Appleストアに入る客や出てくる客を取り囲むかのように話しかけていた。近寄ってみると手に持っているのはiPhone 6かiPhone 6 Plusの箱。なんとAppleストアの入り口で彼らは海外から輸入したiPhoneを販売してるのである。
彼らが売っているのはコピー品などではなく、SIMフリーのきちんとした正規ルートで購入されたiPhoneだ。ここで売られていることは意外にも知られているのか、この転売人からiPhoneを買う客の姿もちらほら見られた。また客が希望の色や容量を伝えると転売人同士で手に持ったiPhoneを交換するして客に渡していた。各々が独立してやっているのではなく共通の仕入れ元からここで販売しているようだ。
試しに客を装って1人の転売人に声をかけたところ「iPhone6 Plusゴールド、16GB、1万元(約17万4000円)」とすかさず返してきた。そして販売は現金のみ。値段が高いと伝えると値引きは無し、高いと思ったら買わなくていい、とまで言い切られた。ある程度の相場が決まっており、その価格で買う客のみに販売をしているようである。
Appleストアの入り口に並ぶ転売人。それぞれがiPhone6や同Plusを持っている |
転売人は10人前後。それぞれ共通した仕入れから販売をしているようだ |
Appleストアには裏側にも入り口があるので、そちらに行ってみるとやはりそこにも転売人がちらほらと見えた。しばらく見ていると大きい布の袋をかかえた人間がやってきて、その場にいた手持ちぶたさにしている人間に白い箱を渡していた。そしてそれと引き換えに各自から現金を回収。どうやらこの布袋を持ってきた人間が総締めのようだ。
なお、たまにAppleストアから警備員が出てきて「ここから立ち去るように」と転売人に注意していたが、店外を警備員が取り締まることはできないのだろう。裏側の入り口付近では転売人たちはのらりくらりとそれを交わし、警備員が店内に戻ると再び入り口前に集まる始末。見ていると店から出てくる客に群がるなど、Appleストアとしては迷惑な行為だろう。だがそれを阻止するすべは無いようだ。
店の裏側にも別の転売人がいる |
手ぶらの人間も総締めからiPhoneを受け取り転売を開始した |
表の入り口ではタイルの色が変わる部分が、店と転売人との自主的な境界線になっていた |
ちなみに中国ではまだiPhone 4Sが売られていた。iPhone好きが多い中国だが、最新モデルではなく低価格モデルを欲しがる消費者も多いのだ |
電脳ビルでは普通に転売されている
一方、北京の秋葉原とも呼ばれる中関村の電脳ビルでもiPhone6や6Plusは普通に販売されていた。各ビルの一階はPCメーカーの店が並ぶなど普通の家電店に見えるが、地下に潜ると小さいショーケースを並べた店が100店舗以上も入っている。それらの店では香港や日本から輸入されたiPhoneがそれぞれの店で当たり前のように販売されているのである。
中関村のような電脳ビルは他の中国の都市やアジア各国でもごく一般的にみられるものであり、ここで転売品の販売は珍しいものではない。だが大胆にもAppleストアの目の前で転売人たちによって販売されるなど、こっそりと売られるような状況ではなく、むしろ堂々と販売されているのである。売る場所を選ばないとあっては、中国のiPhone人気が続く限り転売は無くならないのだ。