キヤノンは11月11日、「EOS」シリーズ用の交換レンズ「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」の発表に合わせて技術説明会を開催した。

「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」

キヤノンが誇る高い光学技術で広いズーム域と機動性を両立

説明会ではまず、イメージコミュニケーション事業本部 副事業本部長の岡田正人氏から製品の概略説明があった。

キヤノン イメージコミュニケーション事業本部 副事業本部長の岡田正人氏

岡田氏はカメラ用レンズ以外にも、プリンターや複写機(コピー機)など幅広いキヤノン製品に光学技術が使用されている点を引き合いに出し、「キヤノンは世界最先端の光学技術を誇り、(光学技術以外も含めた)特許登録件数も世界で3番目に多い」と、自社の光学技術の高さを強調した。

その上で、EFレンズの開発設計フローに言及。3D CADによる設計やシミュレーション、独自の非球面加工技術、最新鋭の蒸着機といった最先端の技術と、レンズのわずかな形状変化さえも巧みに感じ取る高技能者マイスターの"匠の技"が高度に融合して製造されている点を説明した。

【左】カメラ用レンズ以外にも広く用いられている光学技術 【右】最先端の技術と匠の技が融合して作られているEFレンズ

今回発表されたEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMも、100~400mmという広いズーム域と高い描写力を持ちつつも、機動力を求めるプロ、ハイアマチュアカメラマン向けに高い光学性能を持つ一本に仕上げられている。蛍石やスーパーUDレンズ、逆光によるフレアなどを抑制する新技術「ASC(Air Sphere Coating)」などにより、それらが高いレベルで実現されているという。

【左】プロ、ハイアマチュアのニーズを充たす一本 【右】逆光によるフレアやゴーストを抑制するASC

続いて、イメージコミュニケーション事業本部 ICP第一開発センターの金田直也氏より、技術説明があった。

キヤノン イメージコミュニケーション事業本部 ICP第一開発センターの金田直也氏

EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMでは、第三群に蛍石、第一群にスーパーUDレンズがそれぞれ1枚使用されるなど、高い光学技術を投入。ズーム全域にわたり画像周辺部も含めて従来モデル「EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM」よりMTF特性が向上したという。

加えて、前述のASCがフレアやゴーストを大幅に抑制。ASCはレンズの多層コーティングの上に、微細な空気の球を含む超低屈折率層を形成するもので、レンズに対し垂直に対して光の反射を大幅に抑制する技術だ。

【左】高い光学性能を備える 【中】従来モデルよりMTF特性が向上 【右】ASCのイメージ

また、金田氏はこのクラスの望遠ズームレンズで最高レベルの近接撮影能力についても言及。フローティングフォーカス機構により、近距離撮影時でも高画質を維持可能となり、最短撮影距離0.98m、最大撮影倍率0.31倍を実現したという。従来モデルでは1.8mだった最短撮影距離は約2分の1に短縮されている。

そのほか、構図の固定や微調整を可能とするため、従来は直進式だったズーム方式が回転式に改められた点、従来は1.5段分だった手ブレ補正効果が4段分に引き上げられ、より望遠撮影に強くなった点などが紹介された。

【左】近接撮影に強くなった 【中】回転式になったズーム方式 【右】手ブレ補正なども強化された

EOS 7D Mark IIとの組み合わせにピッタリ!

説明会では、写真家のルーク・オザワ氏、水谷たかひと氏によるトークセッションも設けられた。

従来モデルのEF100-400mm F4.5-5.6L IS USMを愛用していたという航空写真家のルーク氏は「僕の作品は9割方、このレンズで足りる」と切り出す。飛行機のランディングギアが収まったところを撮るような場合、短い望遠域では飛行機を大きく構図に収めるのが難しいが、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMであれば望遠域も十分だと語った。

また、動きの速い飛行機という被写体だけに、連写性能がウリの「EOS 7D Mark II」との組み合わせにピッタリだとの感想で締めた。

従来モデルを愛用していたというルーク・オザワ氏はこのズーム域で9割方足りるという

スポーツ写真家の水谷氏がEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMを渡されて撮ったものはラグビー。太陽を背に前傾姿勢になった選手を撮る場合、腹部が影になってしまうが「そういう部分でも黒つぶれせずしっかり描写される」と、高い描写力を評価していた。

水谷たかひと氏はラグビーを試し撮り

EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMの発売は12月下旬。希望小売価格は300,000円となっている(税別)。