前回、ドイツのラーメン事情を紹介したが、実はフランスのラーメンも日本とはまた異なった深みがあるという。そして日本でこのほど、フランスと日本の食文化が融合したラーメンが新たに開発された。味に厳密な基準を設けているフランス人や、舌の肥えた日本のラーメン通からはどのような評価を受けるのだろうか? 早速、その新ラーメンをレポートしよう。
ブイヨンが和ダシと出合う
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えている日本では、日本の食文化で外国人を「おもてなし」することも大切なポイントとなる。その先駆けとも言える店舗が、新横浜ラーメン博物館に登場した。その名は「NARUMI-IPPUDO」。食の都・フランスにフォーカスし、フランスのダシ「ブイヨン」と日本の「和ダシ」を融合させたラーメンを博多一風堂の創業者・河原成美氏が開発した。
「黄金に煌めく超絶~コンソメヌードル~」(980円/ミニ620円)のフランスのダシは、ブイヨン(丸鶏、鶏ガラ、牛のスネ肉、数種類の野菜を5時間煮込んだもの)に牛ミンチと野菜、牛スジ、アキレスを加えてさらに5時間煮込んで作成。そのダシに、昆布・椎茸・あごだし(飛魚)・ポルチ-ニ茸の乾燥させたものでとった和ダシをあわせた。この融合によって、商品名のごとく「黄金に煌めく超絶」を生み出しているという。
ちなみに、麺はフランスパン専用粉を使用。具材は、ローストビーフやポルチーニ茸、シメジ、エリンギなどをオリーブオイルで炒めたソテー、レッドオニオン、ルッコラなど、コンソメスープに合うものが選ばれた。新横浜ラーメン博物館の広報・宣伝担当中野正博さんによれば、開発当初はワンタンの中にキノコを入れた具材も候補に挙がっていたそうだ。
ベジタリアンにピッタリな「野菜ダシ」も
新しく開発されたラーメンはもう一品ある。「『まさか…!』のコクと深み~ベジタリアンヌードル~」(880円/ミニ570円)は、「ベジブロス」という野菜ダシを使ったラーメン。スープは椎茸やセロリ、ニンジン、ドライトマトなど野菜からとったダシに、昆布や椎茸、ポルチーニ茸などからとった醤油ダシを合わせた、ベジタリアンも食べられるメニューとなっている。もちろん、肉はダシにも具材にも一切使われておらず、トッピングのローストビーフもローストトマトだ。
中野さんによれば、ラーメンは特にルールや定義づけはないため、他国でラーメンを食べると、日本人にとっては「これってラーメン?」と疑問に感じることもあるという。そこで、「ラーメンとは何か」を定義付けようとした時、「和ダシが入っていること」ではないかという仮説にたどり着いたという。
昨年、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたのも、和ダシの旨味を用いる調理法が大きな理由のひとつだった。「フランスのスープ×和ダシ」の融合で、和食の根幹ともいうべき和ダシ入りのラーメンを世界に広めたいと中野さんは語る。
フランス人もスープまでぺろり
このフランスと和が融合したラーメンは、いったいどのような味なのだろうか。実際にラーメンを食べた日本人に聞いてみると、「コンソメスープではラーメンという感じがしないが、和ダシが入ることによってラーメンらしさを感じる」というコメントが。思わずスープを最後まで飲んでしまった、という人も多かった。
一方、フランス人の反応はというと、「『ブイヨン×和ダシ』という発想は面白い」「母国のフランス人たちもきっと好む味」などの声が挙がっていた。ラーメンを完食するのはもちろん、スープまですべて飲み干していた人もいたようで、ひとまずフランス人の心をキャッチすることに成功したと言えそうだ。
この2種類のラーメンが提供される「NARUMI-IPPUDO」は、10月29日にオープンしたばかり。ひとりの日本人として、ぜひ実際に自分の舌と鼻と目で確かめてみてほしい。
※記事中の情報は2014年10月取材時のもの。価格は税込