北斎漫画インスパイア展

数ある展示の中でも、特に興味深かったのが「北斎漫画インスパイア展」。これは2012年から始まったTDWでは特別企画となるインスパイア展で、2012年の伊藤若冲に続き、今年は人物のあらゆる生態をはじめ江戸の風俗文化や全国の名所風景を描いた葛飾北斎がテーマとなった。

「Into Hokusai」(グエナエル・ニコラ)地形を表す線画により強調された景観と形状の定義。北斎が描く二次元の富士を三次元に捉え直した作品

「HOKUSAI ROBO」(橋本夕紀夫)漫画の登場人物をロボット化。絶妙な表情で謝りながら頭を下げ続けるユーモラスな様子に釘付けだ

葛飾北斎による「北斎漫画」にインスピレーションを受けた安野モヨコ、葛西薫、片桐仁(ラーメンズ)、小林賢太郎(ラーメンズ)、菊地敦巳、五月女ケイ子、永井一史、堀江貴文、グエナエル・ニコラなど、53人ものジャンルを横断したクリエイターたちが参加した。

「平成婦女子平行宇宙絵図」(KITAJICO)「江戸と現代、いろんなことが変わっても女性の本質は普遍である」そんな洒落と皮肉の込められた人気クリエーターによるオマージュ作品

著名建築家による「提案」と「建築模型」

「建築模型とその提案書展」は、建築のアイデアが集約された提案書と、そのアイデアを具現化した建築模型を同時に展示する企画展。伊東豊雄、隈研吾ら日本を代表する建築家13組からの「提案」をまじまじと見られる貴重な機会となった。

「くるりの森」(谷尻誠+吉田愛) 浜松市にある商業施設に計画しているプロジェクト。ネットをかければ遊具に、家を足すとツリーハウスに。建築でありながら成長と完成を繰り返す「森」の概念をもつ建築

ASIA AWARDSヤングクリエイター展

30歳以下の若手クリエイターが参加する「ヤングクリエイター展」。各部門の審査員には、佐藤可士和、中村勇吾、猪子寿之、名和晃平、渋谷慶一郎ら、各分野の一線で活躍する人物たちが名を連ねた。

「Non-Verbal Communication」(菅本智) 頭から溢れ出る思考を具現化した帽子。縄で作られた有機的なフォルムが美しい

着物×きもの×KIMONO Exhibition

日本の着物文化の存続と発展を支え、着物の歴史、伝統、そして美に対する正しい理解を未来につなげていくことを目的とした「Dare to Dream Design Awards」も同イベント内で開催された。

「Kimono Dress」(廣川玉枝) 創業450年を誇る友禅染の千總、西陣織りの細尾、岡重、和晃苑の4社と協業したドレスウエアとしての着物を開発

プロ展

国内外のプロクリエイターによる個展形式の展示。国内外のバイヤーや10万人を超えるデザイン感度の高い来場者へのプレゼンテーションの場としても機能していた。

「ALUMINUM AIR CASE」(Yamaguchi Design Lab) 新幹線の先頭構体(顔の部分)を製造する「打ち出し板金」でつくられたハンドメイドのアルミ製ノートパソコンケース。丈夫で軽やか、なによりスタイリッシュで目を引く

学校作品展・学生展

クリエイティブを学ぶ"天才クリエイター"の卵たちが競う学校作品展。これからを担う若い発想が数多く披露されていた。

「Reverb Scape」(武蔵野大学プロジェクトチーム)「鐘音、透色、空間が織り成す響景を現象させる」プロジェクト。長さの異なる羽根をひっぱり、手を離す事でなんとも美しい音とカタチの広がりをみせる印象的な作品

「多能性オーラルケアカード」(岡山大学 歯学部 マツモトラボ) 日常ユースだけでなく、高齢者介護時、被災時などさまざまな状況で使えるカード型オーラルケアキットの提案。江戸時代にオシャレ薬携帯ケースでもあった「印籠」をモチーフとしてデザイン。1本ずつ切り離して使用できる(モックアップ)

いかがだっただろうか。今回の展示会を通じて、クリエイティブが国境はもちろんジャンルの広がりまで、どんどんとボーダレス化してきていることを身をもって体感した10日間となった。全体を通して、作り手というよりは受け取る側の感覚や感性が、年々育ってきているように感じた。未来に向かうこれからのデザインやアートの可能性と進化を来年度の東京デザイナーズウィークにも期待したい。