2000年にデビューしたオードリー(若林正恭、春日俊彰)、ウーマンラッシュアワー(村本大輔、中川パラダイス)、ナイツ(塙宣之、土屋伸之)、流れ星(ちゅうえい、瀧上伸一郎)、南海キャンディーズ・山里亮太を集めたバラエティ番組『ミレニアムズ』(フジテレビ系 毎週土曜23:10~)がスタートした。

フジテレビの土曜23時代で同世代を集めたバラエティ番組と言えば、ダウンタウンやウッチャンナンチャンらの『夢で逢えたら』、ナインティナインやオアシズらの『めちゃ×2モテたいッ!』、くりぃむしちゅーやおぎやはぎらの『リチャードホール』、ピースや平成ノブシコブシらの『ピカルの定理』など、そうそうたる番組が並ぶ。

言わば、フジテレビの土曜23時代で同世代番組に出演することは、芸人たちの憧れなのだが、はたして『ミレニアムズ』はこれらの人気番組を超えられるのか? 初回、2回の放送から、その魅力と今後のポイントを探っていく。

集まった"ひとクセあるひねくれ者"

オードリー(左:若林正恭 右:春日俊彰)

そもそもフジテレビの土曜23時代は、バラエティとドラマを交互に放送してきた。このところドラマが放送されていたが、2年半ぶりにバラエティが復活。その第一弾として選ばれたのが『ミレニアムズ』であり、この9人だった。

メンバー構成でまず気になるのは、所属事務所のバランス。オードリーはケイダッシュ、ウーマンラッシュアワーと山里はよしもと、ナイツはマセキ芸能社、流れ星は浅井企画と、うまくバラけている。芸風も、若林のボヤキ、春日のスベリ筋肉、塙の言い間違い、ちゅうえいのギャグ連射、村本の人でなし、山里の卑屈ツッコミなど多彩で、コラボによる化学反応が楽しみだ。

9人のキャラが共通しているのは、"ひとクセあるひねくれ者""暗くてあか抜けない"の2点。ゆえに、自他ともに認める実力派でありながら、「なかなか冠番組を持たせてもらえない」のが悩みの種だった。それもあってか、『ミレニアムズ』では無感情の若林がいつになくハイテンションで、春日を思い切りひっぱたくシーンも。今後は他のメンバーも、既存のキャラだけに頼らず、新たなキャラをブッコんできたら面白くなりそうだ。

コントよりロケ&トークで勝負

流れ星(左:ちゅうえい 右:瀧上伸一郎)

番組のオープニングでは、私服のままアイマスクで連行され、40万円かけて泡まみれにされるなど、メンバーたちはイジられまくっていた。中堅芸人のバラエティは、「遠慮なく仕掛けるスタッフの罠を笑いで跳ね返す」図式が魅力。そのイジリが失礼でバカバカしいほど、卑屈、毒舌、不器用、適当、ドケチなど、彼らのキャラが輝くのだ。

過去の同枠バラエティと異なるのは、コントのパートがほとんどないこと。2回目の放送で短いコントがあったが、基本的にロケ企画とトークの2本立て。『夢で逢えたら』のガララニョロロや伊集院みどり、『リチャードホール』の下衆ヤバ夫、『ピカルの定理』のビバリとルイらのようなメインコントは見られない。これは「漫才師の強みであるトーク力を生かそう」というものであり、「ネタをじっくり見ない」若者視聴者に対応したものだろう。

メインとなるロケ企画には、新番組ならではの手探り感が見える。初回は、「エレベーター内で大物芸能人にプレゼンを仕掛け、約30秒でビッグチャンスをゲットする」エレベーターピッチ。2回目は、「笑いを取ったことがない先生にネタを教えて爆笑を取らせる」爆笑先生。m.c.A・Tに塙が「エムキャット」と言い間違えて意気投合したり、超マジメ先生が「おっちょこちょいちょいちょい」の爆笑ギャグをかましたり、それぞれが「バリエーションのある笑いを提供しよう」という意図を体現していた。

「売れると続かない」芸人集合番組

南海キャンディーズ・山里亮太

過去の名番組を振り返ってみると、『夢で逢えたら』と『リチャードホール』はメンバーが売れたため、発展的終了。一方、ゴールデン昇格した『めちゃめちゃモテたいッ!』は現在も続行中だが、『ピカルの定理』はその反動かわずか1年半で終了した。

ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、くりぃむしちゅーのように単独MCとして引く手あまたになるとスケジュール確保が困難で、やはり番組続行は難しい。芸人集合番組は、「メンバーが売れすぎると続かない」という宿命を背負っているのだ。『ミレニアムズ』がどの番組と同じ道をたどってくのか、それとも新たな道を切り開いていくのか、興味深い。

また、同番組の「メインコントはやらない」という方向性は諸刃の剣。コントは「人気キャラが生まれやすい」というメリットがある反面、「コストが高い」というデメリットがある。つまり『ミレニアムズ』は、「経費的には長続きしやすいが、爆発的なブームにはなりにくい」という無難な道を歩いているのだ。それだけに今後のポイントは、「ロケ企画とトークの中で、いかに金脈(看板コーナー)を見つけるか?」。しばらくは9人のキャラを押し出しながら試行錯誤していくのだろう。


『ミレニアムズ』は、今後10年、20年続く番組になっていくのか? それとも、半年で打ち切られるダメ番組として消えていくのか? あるいは、何度となく打ち切りが噂される『めちゃイケ』の後継番組になるのか? できれば人気の上下に関わらず、安易なトークやゲームに頼ることなく、土曜の夜に笑いを届け続けて欲しい。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。