スマートフォンやタブレット端末で、社会人向けの大学講座を無料で受講できる大規模公開オンライン講座「gacco(ガッコ)」をご存知だろうか? NTTドコモとNTTナレッジ・スクウェアが共同で提供するサービスで、豊富な講座、豪華な講師陣を用意するほか、修了時には「修了証」も提供される。本稿では、世界中に広がるMOOCプラットフォームの日本版である同サービスの内容を詳しく紹介していく。
山中教授のiPS細胞について講義が受講できる!?
2014年の秋、複数の日本人研究者がノーベル賞を同時受賞するという喜ばしいニュースが列島を駆け巡った。2012年に京都大学の山中伸弥教授が「iPS細胞の開発」で"ノーベル生理学・医学賞"を受賞して以来の快挙である。ところで「ノーベル賞を受賞した研究」とは、一体どんな研究だったのだろうか? 興味を抱いた人も多いことだろう。今もし、山中伸弥教授がiPS細胞について講義してくれるとしたら? 学生時代、理科の成績があまり良くなかった筆者でさえ大いに好奇心をそそられる。実はオンライン講座gaccoでは、その山中教授が直々に監修した「よくわかる! iPS細胞」という講座が受講できるのだ。そもそもgaccoとは、どんなサービスなのだろうか?
米国では、MOOC(Massive Open Online Coursesの略)と呼ばれる"ウェブ上で誰でも無料で参加可能な教育サービス"が人気を集めており、受講者数はすでに世界で1000万人を超えている。2013年からはスペイン・フランス・中国など各国版のMOOCプラットフォームが続々と立ち上がっている中、MOOCを日本にも普及・推進させるべく、一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)が設立された。NTTドコモ、NTTナレッジ・スクウェアが運営するgaccoは、そのJMOOC公認の教育サービスなのだ。
gaccoでは本場米国のMOOCと同様に、オンライン講義を無料で提供し、修了者に対して修了証を発行する。ビジネス、化学、心理学、歴史、統計学、マンガ、服飾など、様々な分野の第一人者が講座を開講している。2014年12月には大阪大学の石黒浩教授による「人とロボットが共生する未来社会」が開講され、2015年1月には京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授の監修による「よくわかる! iPS細胞」が開講される予定だ。受講の流れは、以前マイナビニュースでも紹介している。
米国MOOCに日本の大学も積極参加!
ここで米国におけるMOOCに日本の大学が参加している事例をいくつか紹介しておきたい。MOOCの流行が、より身近に感じられることだろう。
まずは「(edX)エデックス」だ。こちらは、米ハーバード大学と同マサチューセッツ工科大学の出資により創立され、登録者数は200万人を超える。2013年5月には京都大学が日本の大学として初めて参加した。さらに、2014年2月には東京大学が配信協定を締結。東京大学は、近現代の日本に関する連携講座シリーズ「ビジュアライジング・ジャパン(Visualizing Japan)」を提供、2014年秋より順次提供を開始する予定だ。
続いて「Coursera(コーセラ)」。同団体は、スタンフォード大学コンピュータサイエンス教授らによって創立され、登録者数は約270万人、200以上の講義が提供されている。2013年9月には、東京大学が日本で初めてMOOC配信の授業を導入。村山斉氏(カブリ数物連携宇宙研究機構 機構長・特任教授)による「ビッグバンからダークエネルギーまで(From the Big Bang to Dark Energy)」と藤原帰一氏(大学院法学政治学研究科 教授)による「戦争と平和の条件(Conditions of War and Peace)」の2講座を配信した。2014年度は、上記2講座に加えて経済学分野、情報学分野の新規2講座をコーセラで開講する予定としている。
* * *
学生時代は「良い成績を取らなくては」というプレッシャーから、勉強を苦痛に感じてしまう人も多い。しかし社会に出てから、趣味として勉強を始めると、これが非常に楽しいものなのだ。国内でも"生涯学習"の取り組みが盛んになってきている。これは「学習することの楽しさ」にあらためて気が付いた社会人が少なくないということの現れだろう。
ここ最近のスマートフォン/ タブレット端末の進化、通信インフラの普及により、"オンライン学習"という選択肢が増えた。いつでも何処でも、気軽に勉強できる材料が整ったわけだ。gaccoの取り組みは、こうした時代の需要に呼応したものと言える。ウェブサイトに掲載されている、開講講座の一覧の中に興味の分野を見つけた方は、この機会に満足いくまで学んでみてはいかがだろうか。
(執筆:大石はるか)