パナソニックでは50代、60代のユーザーに向けて、シンプルで高級感がある家電シリーズ「Jコンセプト」を新たに展開している。同社では、この「Jコンセプト」シリーズを体感できるイベントを日本橋三越本店本館 7Fにある「はじまりのカフェ」で開催した。21日まで開催されていた同イベントの模様をパナソニック担当者のコメントとともに紹介しよう。
目利き世代に向けて上質な製品を提供
現在50~60代の世代は高度経済成長期の日本を支え、その後の激変する社会を生き抜いてきた世代。パナソニックでは、こうしたシニア層を"生活経験の豊かな、モノの本質を見極めることができる世代"と捉え、「目利き世代」と名付ける。同社では、この目利き世代に向けて冷蔵庫、掃除機、エアコンといった白物家電を扱うJコンセプトシリーズを展開していく。「Jコンセプト」のJは、ジャパンの"J”と、上質感の"J”を由来としている。
パナソニック担当者によると、Jコンセプトのプロジェクトは2年前にスタートしたという。「日本らしい上質な暮らしを提案するために、お客様のライフスタイルの分析や、さまざまな悩みや不満の声、使い勝手の検証などを積み重ねてきました」とのこと。3万人以上の利用者を対象に家電に関する調査を実施し、「ニッポンの心づかいと美意識を、かたちに。」をキーワードに製品を開発しているそうだ。
キライなのは掃除じゃなくて、重い掃除機
このように新しい家電の世界を切り開くべく生まれた「Jコンセプト」は、同シリーズ第1弾として「エアコン Xシリーズ」 (10月21日発売)、「紙パック式 掃除機」(11月25日)、「トップユニット冷蔵庫」(2015年2月)の3製品をリリースする。
「どの製品も、機能的にはとてもシンプルです。例えば冷蔵庫は6ドアが現在の主流ですが、あえて4ドアにしました。ターゲットの方々のニーズが高かった野菜室を真ん中にレイアウトし、さらに冷蔵庫の高さも日本人女性が最も使いやすい、床上88cmに設定することで使いやすくなっています。また100%引き出せて、奥の奥まで見渡せる「ワンダフルオープン」も搭載しているのもこだわりのポイントです」(担当者)。
前述の調査では、掃除機の重さに対する不満が多いことが分かった。そこで、掃除機には特殊な繊維「PPFRP」を織り込んだ独自素材を採用。モーターの部品をアルミ素材を採用し、構造を見直すことで容積のスリム化にも成功した。この結果、重量わずか2kgという国内製品における最軽量(2014年9月17日時点)を実現。「展示製品を使ってみて、軽さで驚かれるお客様がとても多いようです」と担当者は語る。高い場所を掃除する、あるいは掃除機を持って階段を上がるというような場面で、使いやすい掃除機となっているという。
「Jコンセプト」では、デザインにもこだわった。毎日"ウキウキ"した気分で使うことができるような、そんなデザインを目指したという。「最近の住宅事情としてLDKが増えてきています。リビングから冷蔵庫が見えるという家庭も少なくありません。また、毎日掃除機を使う家庭では、出しっ放しになることもあります。家電もインテリアのひとつ、という考えから、美しいデザインになるようこだわりました。パナソニックには日本の暮らしとともに培われた日本の家電メーカーとして、日本の美意識が息づいています」(担当者)。
なぜ、日本橋三越でイベントを開催?
今回、なぜ日本橋三越本店に製品を展示したのだろうか。担当者によると「ターゲットの『目利き世代』の方々のご意見をゆっくりお聞きしたいからです。通常の店頭では慌ただしさもあり、なかなか製品を落ち着いて選ぶことができない。一方、上質なライフスタイルを望む層と親和性が高いのが百貨店です。百貨店に展示すれば、落ち着いた雰囲気の中で製品を見ていただけます。日本橋三越本店には、上質な生活空間をイメージした住居風のセットを用意しました。実生活を想像しながら、使い勝手が体感できるスペースにしました」とのこと。
このほか同展示では、50~60代の「目利き世代」に家電製品を提案するため、製品の展示以外にも、「Jコンセプト」の世界観に沿った和風カフェなども設置されていた。
日本橋三越本店での展示は、トライアルの意味合いも強かったとのこと。今回、スタッフの教育にも気を遣ったそうだ。「スタッフには機能の説明以上に、コンセプトや世界観、ものづくりの想いを伝えることを大事にしてもらいました。まずは"良いね"と共感してもらえる、そんなシリーズを提案していければ」と担当者は語る。
機能ばかり追っていたことを反省
これは筆者の主観だが、国内メーカーの白物家電、というと”機能が満載されている”というイメージがある。今回、パナソニックが「機能重視」ではない「コンセプト重視」の製品展開を開始した狙いは、単なるシニアマーケットへの商品投入というだけではない。もう一度、日本の暮らしを見直し、ものづくりや価値提案のアプローチ方法含め新しいマーケティングに取り組むという意気込みを感じた。
「Jコンセプト」の展開する製品は、来年度以降、第2弾が投入される予定だ。同社ではこの流れを洗濯機、炊飯器、テレビなどのAV機器、カメラなどの分野にも波及していくことを検討しているという。
「Jコンセプト」でものづくりの考え方、伝え方の新たなかたちを提案するパナソニック。このような取り組みが海外メーカーの勢いに押され、存在感が薄れつつある国内の家電産業を盛り上げる突破口になるかも知れない。