現在、『月刊少年サンデー』で連載中の『信長協奏曲(コンツェルト)』。今年の7月にはフジテレビ開局55周年記念プロジェクトの一環としてアニメが放映され、10月13日にはテレビドラマ版の第1話が放映となった。主演の小栗旬さんをはじめ、向井理さんや柴咲コウさん、山田孝之さんなどの実力派を迎え、視聴率15.8%という好発進となった。今回は、そんな人気マンガ『信長協奏曲』にゆかりのある地を紹介しよう。
病弱な信長と入れ替わる!?
『信長協奏曲』の物語は、ふつうの高校生・サブローがある日突然、戦国時代にタイムスリップしてしまうところからはじまる。そこで出会った自分とうり二つの顔を持つ、若き日の織田信長。しかし、信長は病弱で身体が弱く、戦乱の世に嫌気がさして織田家を逃げ出すところであった。信長は自分とそっくりのサブローに、織田家を任せて去ってしまうのである。
いわゆる「タイムスリップもの」「入れ替わりもの」という王道をとりながらも、既存の歴史に対する作者・石井あゆみ氏の独特の解釈やアレンジ、主人公・サブローの飄々(ひょうひょう)としたキャラクター性が魅力となり、人気はぐいぐいと高まった。
サブローが刻んだ天下への一歩~桶狭間古戦場~
サブローにとっての信長は「天下をとった人」という漠然としたもの。史実通り、サブローも天下を狙うが、その道には多くの名将たちが立ちはだかる。
まず物語序盤の大きな戦いといえば、桶狭間の戦いだ。史実でも信長の名を世にとどろかせた奇跡の一戦だが、当のサブローは今川勢4万に対し、織田軍3,000~4,000の劣勢というのに焦る表情がない。その様子に、家臣の柴田勝家や間者として送り込まれている木下藤吉郎らは籠城と思い込む。しかしサブローは、農民たちから届く今川義元の本陣位置の情報を待っていた。
サブローと光秀の共闘の地~岐阜城~
桶狭間の戦いで今川義元を倒し、着々と勢力をのばしてゆく織田家。斎藤家が治める美濃も手中におさめることに成功した。稲葉山城に居城を移すと、沢彦(たくげん)和尚の提案に従い、稲葉山を岐阜と改名したサブロー。さらに、武をもって天下を治めるという「天下不武」を発布する。
この辺りは史実と相違ないが、裏でサブローはある人物に再会した。本物の織田信長である。彼は明智家の養子となり明智光秀と改名。織田家を盛り立ててくれたサブローに感謝し、これからは織田家のために尽くすという。ここから、サブローと明智光秀、ふたりの信長による天下統一への"協奏曲"がはじまるのである。
浅井長政とお市の想いが交錯~小谷城~
京への上洛を考えるサブローは、その道筋にある浅井家へ妹・お市を嫁がせた。お市は現代っ子であるサブローの影響もあってか、美しいけれど自由奔放なおてんば娘へと育っていた。
兄が大好きで兄が天下をとると信じてやまないお市だが、夫である浅井長政は縁故である朝倉家に味方し、織田軍に攻撃をしかけてしまう。そして、織田家と対立した浅井家は、ついに小谷城に追い詰められることとなる。
サブローは長政に降伏を進めるも、長政はこれを拒否。結果、お市と3人の娘たちだけが城から出され、織田家へと返されることとなった。しかし、織田軍本陣へ向かう道中、突如お市の姿が見えなくなってしまう。お市は長政のいる小谷城へと引き返していたのだ。兄を慕う一方で、お市が長政へ抱いていた思いとは? ドラマでもここは大事なシーンになるだろう。
サブローと家康が対峙した武田騎馬隊~長篠・設楽原古戦場~
タイムスリップという設定で興味深いのは、サブローが歴史の教科書を持ってきていたことである。ひょんなことから焼失してしまったが、信長が日本史のどこかで鉄砲を使い武田軍との戦いに勝利するという記憶が、サブローの中に残っていた。ここで注目なのが武田騎馬だ。
武田信玄が死去し、跡を継いだ武田勝頼は織田側の城・長篠城を包囲。武田騎馬隊は戦国でも最強とうたわれる軍隊だ。大量の鉄砲を用意しただけでは勝てない。秘策を思いついたサブローは、友人であり同盟者の徳川家康とともに武田軍を迎え討つ準備をはじめる。史実でも重要な歴史のターニングポイント、長篠・設楽原の戦いの幕があがる。
ドラマは原作をアレンジしたストーリーを展開するため、マンガ『信長協奏曲』に親しんでいる人も、ドラマではちょっとした視点の違いを垣間見ることができるかも。小栗旬さん演じる"サブロー信長"の活躍に注目したい。
(文・かみゆ歴史編集部 青木一恵)
筆者プロフィール : かみゆ歴史編集部
歴史関連の書籍や雑誌、デジタル媒体の編集制作を行う。ジャンルは日本史全般、世界史、美術・アート、日本文化、宗教・神話、観光ガイドなど。おもな編集制作物に『一度は行きたい日本の美城』(学研パブリッシング)、『日本史1000城』(世界文化社)、『廃城をゆく』シリーズ(イカロス 出版)、『日本の寺完全名鑑』(廣済堂出版)、『大江戸今昔マップ』(KADOKAWA)など多数。また、トークショーや城ツアーを行うお城プロジェクト「城フェス」を共催。
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