NTTドコモとNTTナレッジ・スクウェアが無料のオンライン講座「gacco(ガッコ)」というサービスを運営している。スマートフォンやタブレット端末で、社会人向けの大学講座が受講できるとあり、着実に利用者が増えてきているという同サービスだが、知らない読者も多いだろう。そこで本稿では、いったいどんな内容のサービスなのか詳しく解説していく。
gaccoってどんなサービス?
米国では、2012年頃からMOOC(Massive Open Online Coursesの略)と呼ばれる"Web上で誰でも無料で参加可能な教育サービス"が人気を集めている。そんなMOOCを日本にも普及・推進させるべく、一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)が設立された。そのJMOOC公認の教育サービスが、NTTドコモ、NTTナレッジ・スクウェアが運営するgaccoだ。
gaccoでは本場米国のMOOCと同様に、オンライン講義を無料で提供し、修了者に対して修了証を発行する。ビジネス、化学、心理学、歴史、統計学、マンガ、服飾など、さまざまな分野の第一人者が講座を開講している。2014年12月には大阪大学の石黒浩教授による「人とロボットが共生する未来社会」が開講され、2015年1月には京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授の監修による「よくわかる! iPS細胞」が開講される予定だ。
受講の流れをチェック!
はじめに、gaccoの会員登録(無料)を済ませる。次に、受講したい講座を選択。講座は、開講の3カ月前を目処に生徒が募集される。gaccoでは、受講登録時にアナウンスされた開講日が来ると受講が可能となる。まずは、講師による講義動画を視聴する。動画の長さは10分程度で、ネットで集中して学べるように工夫して作られている。概ね1週間ごとに新しい動画が提供される仕組み。PC、スマートフォン、タブレットなどで視聴できるので、生活リズムや環境に合わせた受講が可能だ。
講義動画を見るだけではなく、理解度を確認するためのクイズが用意されている講座もある。間違えた場合は、繰り返し講義動画を視聴し直して、しっかりと内容を理解した上で次に進むことができる。動画やクイズで理解できない事項を、掲示板で質問することも可能。他の受講者とディスカッションすることによって、学びが深まり、同じ興味を持つ仲間ができる。このあたりも、オンライン講座ならではの特長と言えるだろう。
gaccoのいくつかの講座では、レポート課題が用意されている。ユニークなのは、レポートを受講生同士で採点し合うという点。他の受講生のレポートを採点することで、自分とは異なる考え方に接したり、新たな気付きを得たりできる。
またネットの学習だけでは物足りない受講者のために、gaccoでは一部の講座でオンライン講座と対面授業を組み合わせた反転学習コースを提供している点も特徴だ。
同コースは、講義動画の視聴や宿題で基本的な内容を学んだ後、対面授業において先生の指導のもと、白熱した議論を通じて発展的な内容を学べるというもので、“インプット”と”アウトプット”を繰り返すことで講義内容を定着させることができるという。
このほか、憧れの先生に直接指導してもらうことも可能なほか、所定の基準を満たすと講師から修了証(電子ファイル形式)が授与される。なおJMOOCによれば、gaccoの講座 第一弾として4月14日に開講した東京大学 本郷和人教授による講座では2万名超が受講し、そのうち18%(約3,600名)が本講座の修了条件(得点率60%以上)を満たしたとのこと。
同講座では世界初の試みとして、反転学習コースが採用された。東京大学において対面授業が4月26日および5月10日に開催され、有料にも関わらず13歳から81歳までの約100名が全国から参加、同コース登録者のうち80%が修了条件を満たしそうだ。
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社会に出てから、あらためて「学習することの楽しさ」に気が付く社会人は少なくない。国内で”生涯学習”の取り組みが盛んになってきている背景には、そうした実情があるのだろう。それに加えて、ここ最近のスマートフォン/ タブレット端末の進化、通信インフラの普及である。オンライン学習が、いつでも何処でも気軽に行える材料が揃ったわけだ。gaccoの取り組みは、時代の需要に呼応したものと言える。
既述の通りgaccoでは、学生時代に陥りがちな"インプットを繰り返すだけの受動的な学習方法"に陥らず、反転学習という効果的な方法で学習できるのが特長になっている。Webサイトに掲載されている、開講講座の一覧の中に興味の分野を見つけた方は、この機会に満足のいくまで学んでみてはいかがだろうか。
(執筆:大石はるか)