ガソリン車がすでに発売され、10月23日からディーゼル車の販売もスタートするマツダ新型「デミオ」。実車を見学した際のファーストインプレッションは、「欧州車と張り合える1台」というものだった。これに関して、少し整理して検証してみた。
国産車離れしたスタイリッシュなデザイン
新型「デミオ」に対する「欧州車を意識した1台」という印象の源には、世界戦略車としてヨーロッパで勝負するためだけでなく、国内ユーザー向けのメッセージ性も込められているように感じている。
国産車で「デミオ」と競合するのは、「ヴィッツ」「アクア」「フィット」「マーチ」といった、スタンダードなコンパクトカーの面々。いずれも広く普及していて、実用的なイメージが強い車種といえる。それゆえ、モノ選びへのこだわりを持っているユーザーにとっては、どれを取っても物足りなさを感じてしまうかもしれない。
そうしたユーザーがコンパクトカーを選ぶ場合、より個性的な輸入車も検討されるだろう。具体的には、「ポロ」「MINI」「(プジョー)208」「ルーテシア」「ミト」などのBセグメント車がライバルとなりうる。これらの欧州車は、優れたデザインやブランド力で、国産車をリードしている感がある。しかし、販売価格やサービス、信頼性といった面では、やはり国産車にアドバンテージを感じる人も多いはずだ。
そこへ登場したのが新型「デミオ」。ブランド力はともかく、スタイリッシュなデザインに関しては、「ちょっと国産車離れしている」と言ってしまってもいいだろう。
現状、国産のコンパクトカーは広さを確保した「フィット」、燃費を追求した「アクア」など、機能性を優先させたデザインが目立つ。対する新型「デミオ」は、あくまでもデザイン優先といった印象。インテリアの質感の高さも含めて、欧州のプレミアムBセグメント車とも相通じるものがある。そんな特別感のある国産車である新型「デミオ」は、輸入車を比較検討するようなユーザーの心にも、十分響いているのではないだろうか?
クリーンディーゼルの主戦場へ、独自技術で斬り込む
もうひとつ、ヨーロッパ志向と感じさせられるのは、ハイブリッドシステムではなくクリーンディーゼルを採用した点だ。
最近は日本でもその名が浸透しつつあるが、欧州での乗用車へのクリーンディーゼル普及率は段違いで、低燃費で環境性能も高いというイメージが定着している。Bセグメントの「MINI」にもクリーンディーゼルが採用され、「MINI クロスオーバー」など一部のモデルは日本へのデリバリーも始まった。こうした潮流の中でのクリーンディーゼル採用は、ヨーロッパではもちろん、日本のクルマ好きにも好感をもって受け入れられるのではないだろうか?
ところで、従来のクリーンディーゼルは、NOx(窒素酸化物)やPM(スス)を低減するため、フィルターや触媒などの後処理システムが必須。これが重量・サイズ増につながったり、高価だったりするため、コンパクトクラスへの搭載が難しいという事情があった。しかし、マツダが新開発したクリーンディーゼル「SKYACTIV-D 1.5」は、NOxの発生を抑える新技術を搭載。後処理システムを不要としたことで、「デミオ」への採用と、クラス相応の販売価格を実現している。
日本がリードするハイブリッドテクノロジーが欧州でいまひとつ受け入れられないのは歯がゆいが、ならばクリーンディーゼルの主戦場へ、独自技術をもって斬り込もうというマツダの挑戦には、胸のすく思いだ。
まとめると、デザイン面でもテクノロジー面でも、「欧州車と張り合える1台」というファーストインプレッションは間違いではなかったと感じている。新型「デミオ」は日本のユーザーにとっても、ヨーロッパ市場においても、「個性の光るBセグメントカー」というポジションを確保しそうだ。