多くの女性にとって、悩みの種である生理(月経)。デリケートなことだからこそ、周囲の女友達にさえ相談できずにいる女性も多いのではないだろうか。そんな生理にまつわる悩みを解消するための対策をライオンのヘルスケアマイスター・山岸理恵子さんにうかがった。
生理と腸の意外な関係
生理と並び、女性特有の悩みの一つとして挙げられやすい便秘や下痢。「体質によるものだから仕方ない」とあきらめている女性もいるかもしれないが、実は生理と便秘などは密接に関わっており、生理周期を原因とした便秘や下痢も多いという。
「排卵から生理が始まる間までは、子宮の収縮を抑える『プロゲステロン』というホルモンが多く分泌されますが、便などを移動させるための腸の収縮運動も同時に抑えてしまうので便秘になりがちです」。
生理が始まると、「プロゲステロン」が減少して便秘症状は解消されるが、今度はまた別の物質が女性を悩ませる。それが「プロスタグランジン」だ。
「生理直前から前半まで、子宮を収縮させ、生理痛のもとにもなる生理活性物質『プロスタグランジン』が分泌されます。この物質の量が多すぎると、子宮だけでなく腸にまで作用して腸を異常収縮させてしまうため、下腹部痛を伴う下痢が起こることがあります」。
このように、生理が始まるまでは便秘がちで、生理が始まるとおなかがゆるくなる、という場合は生理を由来とする腸トラブルの可能性がある。生理のときに下痢が続くときは、衣服や防寒具などをしっかりと選び、冷えに注意するようにしよう。それでも下痢が続くようならば、市販の下痢止め薬を使うのも一つの方法だ。
子宮の収縮を和らげる栄養素とは?
気分が沈んでしまうつらい生理痛の対応策のひとつとしては、食事が考えられる。生理の痛みをやわらげてくれる栄養素は「マグネシウム」と「ビタミンB6」の2つだという。
「これらの栄養素には、子宮の収縮をやわらげる作用があります。マグネシウムが不足すると多くの不快症状が増大するという報告があり、ビタミンB6はホルモンの代謝に作用して生理痛などの症状を緩和してくれます」。
マグネシウムを多く含む食品には「アーモンド」「干しひじき」「大豆」などが挙げられる。欧米を中心に人気が高まり、その美容効果でも注目されている「アーモンドミルク」などでも手軽に摂取できる。
ビタミンB6は「マグロ」「サケ」「サバ」「サンマ」などの魚類に多く含まれている。このビタミンは腸内細菌によって体内合成ができるため、一般には普通に食事を摂(と)っていれば不足することはあまりないという。
ただ、青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)や、DHA(ドコサヘキサエン酸)には血行をよくする作用があり、生理痛の原因物質である「プロスタグランジン」を作るための酵素の働きを抑えるという報告もある。血行をよくすることで、生理痛の緩和も期待できるので、ぜひ食事に取り入れていきたい食材だ。
生理中は、アルコールはコーヒーは控えめに
ただ、せっかくの栄養素もその吸収を阻害されてしまっては効果が期待できなくなってしまう。肉類や加工食品などに多く含まれるリンは、マグネシウムの吸収を妨げてしまうので、生理の重い期間には避けたほうがよいという。
「大豆はマグネシウムを多く含むものの、腸の働きを活発にしてしまいます。下痢をしている期間は避けたほうがよいですね」。
また、アルコールやコーヒーなどのカフェインを含む飲料も、ビタミンやミネラルの吸収を阻害してしまうので控えめにしたほうがよいとされる。
「和食中心の献立を心がけるとよいかもしれませんね。どうしても食事で摂取することが難しい場合は、サプリメントなどで上手に補っていくとよいでしょう」。
大切なのは、自分の体のサイクルをしっかりと理解すること。そして、そのサイクルに合わせて必要な栄養素を食事に上手に取り入れて、快適な毎日を目指そう。
取材協力: ライオン ヘルスケアマイスター・山岸理恵子さん
ボディーソープほか、スキンケア商品の開発に長年携わった後、現在のヘルスケアマイスターとなる。商品開発の経験を生かし、主にライオン快適生活研究所にて健康で快適な暮らしのための情報発信に尽力している。