「函館」と聞いてまず何を思い浮かべるだろう。豊かな海の幸。函館山の夜景。異国情緒漂う教会。様々なイメージを胸に、列車に揺られてやってくる旅人を迎える函館駅。函館駅のすぐ隣には観光の目玉である函館朝市があり、函館山やレトロな風情の観光エリア・西部地区とも目と鼻の先だ。そして、旅の達人たちに人気の立ち食いそば屋「駅そば みかど」も、その函館駅にある。
乗り継ぎの間にささっと海の幸を
立ち食いそば。それは、時間に追われるビジネスマンの小腹を満たしつつ、「人の手で作られた出来立ての温かさがある」という点で、コンビニ弁当とは一線を画し、小さな心の癒やしとも言える食べ物。そんな立ち食いそばがここ函館では、旅先で列車の乗り継ぎを待つ合間に函館ならではのおいしい海の幸が味わえる一歩進んだ存在になっているという。
そもそも、函館駅の利用客はそのほとんどが本州と札幌方面とを行き来する遠距離移動者。長い乗車時間を考えると、食事は重要なポイントだ。豪華な駅弁を列車に持ち込むのも楽しみ方のひとつだが、早朝や冬の寒い時期には「湯気の立ったアツアツの麺が食べたい」と思う人も少なくないはず。
海鮮かき揚げを濃いつゆで
「かき揚げそばをひとつ」。注文して待つこと数分。見事な「海鮮かき揚げそば」(500円)が目の前にドンと出てきた。「お好みでどうぞ」と、小口切りのねぎと七味唐辛子も。大きな海鮮かき揚げにたっぷりねぎをのせると、かなりのボリュームだ。
カツオだしのつゆの良い香りが立ち込めるなか、そばに箸をつける。これはうまい! エビ、ホタテ、イカといった海鮮と、タマネギやゴボウといった野菜を使ったかき揚げに、北海道ならではの濃い味のつゆが染みて、懐かしさのある味わいに仕上がっている。
函館駅の名物弁当が元のそばも
メニューにはほかにも、「がごめ昆布とろろそば」(360円)、「みがき鰊(ニシン)そば」(420円)といった郷土色のある品が並ぶ。「『みがき鰊そば』も人気ですよ。駅弁としても『鰊みがき弁当』が売れ筋なので」とは、みかどを経営するジェイ・アールはこだて開発の田中さん。
甘く煮付けたみがきニシンと塩のきいた数の子を武骨に盛り付けた「鰊みがき弁当」は、1966年に発売されて以来ロングセラーを続ける函館駅の名物弁当だ。それがそばでも食べられるというのはなかなかユニーク。
「鰊そば、がごめ昆布とろろはこの近年開発したメニュー。定番も大切にしつつ、函館らしさのあるものをということで出しました」。みかどは五稜郭駅内にも系列店があるが、鰊そばとがごめ昆布とろろそばが食べられるのは函館駅店だけとか。
2016年の北海道新幹線開業を控え、再開発の進む函館周辺。旅の選択肢が増えるなか、多くの旅行者に函館の豊かな海鮮を思う存分味わい尽くしてほしいと思った。
※記事中の情報・価格は2014年9月取材時のもの。価格は税込