9月15日、ジャーナリストの田原総一朗氏が会長を務めるNPO法人「万年野党」主催「政策シンポジウム」が開催され、「秋以降の政治・経済の行方」をテーマにした様々なパネルディスカッションのなかで熱い議論が交わされました。
このシンポジウムでは、田原総一朗氏、森本敏氏(拓殖大学教授・元防衛大臣)、中谷元氏(衆議院議員)、枝野幸男氏(衆議院議員)らによる「集団的自衛権」をテーマにしたパネルディスカッションのほか、宮内義彦氏(オリックス株式会社・シニアチェアマン)、堺屋太一氏(作家・元経済企画庁長官)、岸博幸氏(慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授)、磯山友幸氏(経済ジャーナリスト)らによる「今後の政治の在り方」をテーマにしたトークセッションなど、日本の政治・経済・社会が抱える課題や、今後の展望について、闊達な議論が交わされました。
第三部では、9月29日に召集される秋の臨時国会を前に、「どうなる? アベノミクス第二幕」をテーマにしたパネルディスカッションが開催されましたので、その内容をレポートしたいと思います。
モデレーター:竹中平蔵氏(慶應義塾大学総合政策学部教授・産業競争力会議民間議員)
八代尚宏氏(国際基督教大学客員教授・元経済財政諮問会議民間議員)
ロバート・フェルドマン氏(モルガン・スタンレーMUFJ証券 チーフエコノミスト)
原英史氏(株式会社政策工房 代表取締役社長)
「医療、介護、保育など、重要な分野を厚生労働省が抱えている」
まず、内閣改造を終えたばかりの第2次安倍改造内閣に対する海外の評価について、フェルドマン氏は、
『今回の内閣改造に対する海外の評価は悪くはない。ただ、やはりアベノミクスの成長戦略を含め、結果がどう出てくるのか、海外の眼はそこに集まっている。特にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の改革を進める厚生労働大臣が変わったことへの印象は大きい』
と分析しました。
この点について八代氏は、
『GPIFを始め、厚生労働省は実は今後の日本経済、社会を形成する重要な分野を管轄している省庁だ。改善すべき成長分野である医療、介護、保育など、重要な分野を厚生労働省が抱えている。そういう意味では、厚生労働大臣が一番の重要ポストだと言える。
また、労働市場も改革すべきである。他の先進国における女性の管理職比率は3割に達しているのに対し、日本は未だ1割程度。ということは無能な男性管理職が2割いるということだ。そうしたなか、安倍内閣が打ち出している成果主義は、女性に有利な仕組みと言える。ここを改善するためには地道に労働改革、雇用改革を進めていく必要がある』
という見解を述べました。
また、改革という点について原氏は、
『本来、規制改革担当大臣と国家戦略特区担当大臣への注目がもっと集まるべきだ。この二つは並行して進めていく分野のため、一緒にすべきだったとも言える。農業や医療など岩盤規制を持つ分野は、特区における戦略で規制を突破していくことになる。一方、国の総務と、地方創生は利益相反する関係にあるので、総務大臣と地方創生担当大臣が分かれたのは良かった』
と分析しました。
「この秋が、今後の日本経済・社会を見据えた"改革"を進めるチャンス」
モデレーターを務めた竹中氏は、
『ローカルアベノミクスについて、地方まで波及してないという意見も多い。第2次安倍改造内閣の掲げている重要項目のなかには「地方創生」と「女性の活用」があるが、実際には地方自治体が規制を続けているなど、岩盤規制の問題は根深い。岩盤規制は15から20程度あるとされているが、そのうちの7割は厚生労働省が管轄する分野だ。
そのほか、社会保障の分野も厚生労働省が担当している。少子高齢化が進むこの国において、社会保障制度改革も重要なテーマである。しかし、7月17日に開催された第1回「社会保障制度改革推進会議」に関して、マスメディアはほとんど報道していない。これでは国民の関心も集まらない。
年金支給開始年齢の引き上げや、医療・介護事業を政府主導から民間へと移行させる体制づくりなど、課題は山積している。国内外の注目が集まっているこの秋が、今後の日本経済・社会を見据えた「改革」を進めるチャンスであり、まさに勝負の時だと言える』
と、アベノミクス第二幕の幕開けとともに、早急に政策、改革を推進すべきだというメッセージを訴えました。
執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)
経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。