「iCloud」からセレブのプライベート写真が流出してから約3週間、米AppleのCEO、Tim Cook氏が事件後初めて公式にプライバシーとセキュリティに対する自社の見解を示した。Appleのメッセージは、Googleなど広告モデルを持つインターネット企業に対する批判も含まれており、自社の立場の違いをアピールしている。
Cook氏は冒頭でまず、「ハードウェア、ソフトウェア、サービスとAppleのすべての製品の設計にあたって、セキュリティとプライバシーは根本をなすもの」とセキュリティ/プライバシー重視の姿勢を強調する。そして、iCloudに2ファクタ認証(「2ステップ認証」)を導入したことで、Apple IDの保護に加えてiCloudで保存しているデータに対しても保護できると説明し、ユーザーに利用を奨励した。
これらセキュリティ対策についてAppleは、Appleとデータを共有する前にどのようになるのかを明確に伝えるようにする、ユーザーが共有したくなくなった場合は変更を容易にできるようにする、などのことを大切にしており、これらの原則に基づいた製品やサービスの開発を行っているとも説明する。Appleはプライバシーポリシーを最低でも年に1回はユーザーに通知し、重要な変更があったさいはその都度知らせるという。
自社のプライバシーとセキュリティへの姿勢に加えて、Cook氏は「インターネットサービス」企業とのスタンスの違いについても明示的に記した。「数年前から、インターネットサービスの利用者はオンラインサービスが無料の場合は顧客ではなく、製品であると認識するようになった」とCook氏。ユーザーのデータを収集し、広告の代わりに無料でサービスを提供するGoogleなどのネット企業とは異なり、Appleは製品を販売することがビジネスモデルだと違いを明確に示した。「Appleはプライバシーを犠牲にすることなくすばらしいユーザー体験を提供することを大切にしている」「iPhoneやiCloud上のユーザーの情報をマネタイズしていない」(Cook氏)。
Appleは広告ネットワークとして「iAd」を持つが、これについては広告モデルに依存する一部アプリ開発者のニーズに応じるためと説明する。iAdにも他のApple製品と同じプライバシーポリシーが適用され、Health and HomeKit、Maps、Siri、iMessge、それに通話履歴やiCloud上にある連絡先やメールについてデータを取得することはなく、またユーザーはオプトアウトできるとしている。
Cook氏は最後に、2013年6月に元職員のリークにより明らかになった米国政府の監視プログラムを示唆して、「Appleはいかなる政府機関に対してもバックドアを提供していない。われわれのサーバーへのアクセスも許可したことはなく、今後もそれは変わらない」と記している。