JR西日本の9月定例社長会見にて、フリーゲージトレイン(FGT)の開発状況が説明された。国や鉄道・運輸機構と連携し、「北陸新幹線に適したフリーゲージトレイン」の実用化をめざして技術開発に取り組むという。

JR西日本は今年度中にフリーゲージトレイン試験車を設計・製作し、湖西線・北陸本線での走行試験も予定している(写真はイメージ)

フリーゲージトレインは異なるレール幅(新幹線1,435mm、在来線1,067mm)を直通運転するため、軌間に合わせて車輪の間隔を自動的に変換できる車両。現在はJR九州が鉄道・運輸機構の委託を受け、九州新幹線長崎ルートでの適用に向けて新たな試験車両による走行試験を実施している。

「耐寒・耐雪」「交直流対応」「地震対策」実験線で検証へ

北陸新幹線は来年3月14日に長野~金沢間が開業し、約10年後の2025年度には敦賀までの延伸も予定されている。しかし、敦賀~大阪間についてはルート選定などの見込みが立っておらず、当面は敦賀駅での乗換えを余儀なくされることから、「一度の乗換えによる精神的負担は30分に相当するともいわれます。利便性を損わないように新幹線と在来線を直通運転できるフリーゲージトレインの開発に取り組んでおります」とした。

北陸ルート仕様のフリーゲージトレインを実用化するにあたり、3つの課題があることも説明された。ひとつは「耐寒・耐雪」で、可動部への雪の介在や台車消雪技術の開発を解決すべき課題としている。次に「交直流対応」。新幹線は交流2万5,000ボルト、敦賀駅以南の在来線は直流1,500ボルトで、軌間も電化方式も異なる区間を直通する列車は前例が少なく、新幹線・在来線区間共用パンタグラフの開発が必要だという。加えて機器の小型化・軽量化と低騒音化も課題となる。

3つ目の課題は「地震対策」。北陸新幹線では、地震発生時に車両の大きな逸脱を防止するため、「車両逸脱防止L型ガイド」と呼ばれる装置を使用しているが、フリーゲージトレインでは取付けが難しいとされている。これらの北陸ルート特有の課題を解決するため、これまでにも検討が重ねられており、対策の効果を検証すべく、今年10月から試作機による試験が開始されることになった。

敦賀駅構内に新設される実験線と試験の概要(JR西日本提供)

実験線は敦賀駅構内の機関車庫跡地に敷設され、10月6日に開所式も実施予定。軌間変換装置(GCE)や助走区間を備えた約180mの設備で、牽引車で連結した模擬台車(車輪の間隔が変化する試作の台車)を通過させ、「軌間変換の動作がスムーズにいくか、耐久性があるか、雪が介在したときの挙動がスムーズにいくか」などを確認する。

今後は敦賀駅構内のGCE実験線での試験結果も反映させつつ、今年度中にフリーゲージトレイン試験車(6両編成)の設計・製作に着手。2016年度中に走行試験を開始する予定だ。走行試験予定線区は、新幹線区間が北陸新幹線、在来線区間が湖西線・北陸本線とされている。

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