インドネシアの首都・ジャカルタには、外国人に人気の高級コンドミニアムが数多くあります。その中でもトップレベルのコンドミニアムでコンシェルジュとして働くデウィ・アンドリアナさん(32歳)にお話をうかがいました。

■これまでのキャリア変遷を教えてください。

デウィ・アンドリアナさん/インドネシア・ジャカルタ/32歳/コンドミニアムのコンシェルジュ

もともとホスピタリティに関する仕事に興味があり、大学ではホテル学科のホスピタリティを専攻していました。卒業後、インドネシア国内のホテルで働いたあと、イスラエルのクルーズ船に転職しましたが、イタリアで体調を崩してしまい、インドネシアに戻ってきました。半年間休暇を取って、今度は銀行の営業という畑違いの仕事にチャレンジ。でも、自分の中では「ホスピタリティに関わる仕事が好き」という気持ちがかえって大きくなり、キャリアのやり直しを求めて、外国人が多く集まるレストランのウェイトレスから再出発、2012年に今の会社に移りました。

現在、外国人やインドネシア人富裕層が多く住むコンドミニアムのTRO(テナント・リレーション・オフィサー)のコーディネーターとして働いています。TROはホテルのコンシェルジュのような役割で、入居者の生活全般をサポートするのが主な仕事です。水漏れやネズミ駆除といったトラブルの対応はもちろんのこと、例えば、最寄りの郵便局への道案内や営業時間の確認など、生活に関わるすべての手助けをします。おそらく、同じ外国人向けのコンドミニアムが多いシンガポールなどには見られない、インドネシア特有のサービスだと思います。TROは英語が堪能であることが条件。インドネシア語を話せない外国人の方には必須の存在です。

■現在のお給料は以前のお給料と比べてどうですか?

クルーズ船のお給料は月15万円ほどでしたが、その分仕事がきつく、体調を壊すことになってしまいました。今のお給料はそのときに比べると少ないのですが、インドネシアのこの職種としてはかなりよいほうだと思います。健康にもまだ不安がありますし、生活するには十分な額なので、今のお給料に満足しています。

■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?

外国人、インドネシア人を問わず、テナントの方々と話すのはとても楽しいこと。他人と仲よく話せる能力は、なかなかあとから身に付くものではないと思うので、その素養が自分にあったのはよかったと思っています。

現在私はTROすべてを管理するコーディネーターの立場にいます。インドネシアには多くの島や部族があり、同じインドネシア人といえども出身地で気性も習慣がかなり違うので、その人たちをひとつにまとめる仕事はかなり大変。でも、その分やりがいを感じていますし、会社も仕事ぶりを認めてくれて、入社から1年ごとに昇格しています。昇格すればするほど、求められる仕事のタスクは高くなりますが、それがまたやる気につながっています。

■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?

現在のテナントの構成はインドネシア人40%、外国人60%。言葉や習慣が違う国から来た方に、インドネシアの状況を理解してもらうのはかなり難しいこと。きちんと説明しないと、私たちが努力を怠ったと思われてしまうことも。クレーム対応はかなりうまくなったと自負しています(笑)。

■ちなみに、今日のお昼ごはんは?

近所のレストランで、アヤム・ルンパ(スパイシー・チキン)とトゥミス・トウゲ(塩魚風味のもやし炒め)を、ご飯とともにいただきました。食後はアイスティー。全部で40,000ルピア(約400円)くらいです。もともと食べることが大好きで、健康のためにもお昼はしっかりと食べます。

アヤム・ルンパ(スパイシー・チキン)

トゥミス・トウゲ(塩魚風味のもやし炒め)

■日本人のイメージは? あるいは、理解し難いところなどありますか?

仕事柄、いろいろな国の人と会いますが、日本人にはかなりよい印象を持っています。ただ、男性はワーカホリックであまりフレンドリーではないと感じることも。朝早く出勤し、夜遅く帰ってくるので、あまり日本人男性と話す機会がないせいかもしれませんね。全体的には、技術を進化させることに長けていて、時間にも遅れない国民、という印象。混沌(こんとん)としたインドネシアに比べ、日本は整然としている感じで、その分物事がきちんと決められているような気がします。印象に残っているのは、駐車場で駐車料金のほかにお金を取られたというクレーム。インドネシアでは整理係から小銭を請求されることがあり、それは当たり前の習慣として受け入れられているのですが、どんなに説明しても分かってもらえなかったことを覚えています。

あとは、コンドミニアムで見る日本人の赤ちゃんはどうして香水を付けないのかな、と不思議に思っています。インドネシアの赤ちゃんはみんな香水をつけていて、いい匂いがするのが普通なので。

■最近TVやラジオ、新聞などで見た・聞いた日本のニュースは何ですか?

出身が以前大きな津波の被害を受けたAceh(アチェ)なので、地震のニュースに興味があります。日本のニュースで地震対応の防波堤の細かい説明があって、その基礎工事があまりにもしっかりしているのを見て心から驚きました。ただ、残念ながら今は仕事が忙しすぎてテレビや新聞を見る時間があまりありません。

■休みのとりかたは?

とにかく忙しいので朝11時くらいまで寝ているのが唯一の楽しみ。起きた後は部屋の片づけや料理をしたり、アチェにいるお母さんに電話をしたり。ボーイフレンドは以前働いていたクルーズ船でまだ働いていて、1年に1回くらいしか会えないんです。できればもっと会いたいけれど、基本的には1人で過ごす時間が好きなので、今の状態がちょうどいいのかも。

■将来の仕事や生活の展望は?

もともと料理が好きで、過去のクルーズ勤務ではキッチンを担当していた事もあるんです。料理のレシピを自分で考えて作るのも好き。将来は、小さなカフェの経営やケータリングなどで独立して、人とかかわり合いながら料理の腕も生かせる仕事をするのが夢です。子どもがあまり好きではないので、家庭を持つよりは仕事で独立をしたいです。