今シーズン1年間は競技会に出場せず、休養をすると宣言した浅田真央選手。アイスショーもあり完全な休養にはなっていないかもしれませんが、日本のトップとして長期間にわたって第一線で戦ってきた選手ですので、ゆっくりとした時間を過ごすのは本当に久々のことではないかと思います。
浅田選手は私と年齢が近いこともあり、よく合宿や試合などで一緒になる機会が多かったのですが、「何事にも諦めずに挑戦し続ける」というのが浅田選手に対する私の印象です。
ルール変更にもひるまず攻める姿勢が武器
浅田選手のジャンプと言えば「トリプルアクセル」を思い浮かべる方も多いと思います。女子では難しいとされているトリプルアクセルですが、浅田選手の出身地である愛知県名古屋市では伊藤みどりさんを始め、恩田美栄さん、中野友加里さんなど、トリプルアクセルに試合で挑戦している選手はたくさんいました。幼い頃からその活躍を間近で見ていたであろう浅田選手が、練習してみようと思うのは自然の流れだったのではないでしょうか。
浅田選手がジュニアからシニアに移行する時期と前後して採点方法が変わり、ジャンプの回転不足に対して厳しいルールになりました。多くの選手は回転不足などの減点をあらかじめ回避する演技構成に変更していましたが、浅田選手はトリプルアクセルに挑戦しなかったシーズンはなかったように思えます。「常に守りに入らず攻めにいく」――。この強い気持ちこそが浅田選手の武器であり、すばらしい持ち味なのです。
ミスをひきずらず、自己ベストを出したソチ五輪
フィギュアスケートという競技は、行った演技に対して点数や順位がつきます。ですが、「自分が思い描いている演技がきちんとできれば、何位でもかまわない」というように、結果よりも内容にこだわる選手が多いように思います。
浅田選手も、そのように考えている一人に見えます。ソチ五輪での浅田選手のフリー演技は、見ている人を圧倒するようなとすばらしい演技でした。前日のショートプログラムでミスがあっただけに、気持ちの整理は大変難しいものだったと思いますが、順位よりも自分の演技をするという浅田選手の気迫のこもった演技、またそのように思っている浅田選手の強い気持ちは、テレビを通じてでも伝わったのではないでしょうか。
間もなく本格的にフィギュアスケートのシーズンが始まり、浅田選手は今までと違った視点で競技を見ることになるのではないかと思います。シーズンが終わってどのような結論を出すのかは分かりませんが、どのような形であれ、また新たな目標に向かって挑戦する浅田選手が見られるのを楽しみにしています。
筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)
1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。