中沢けいの群像新人賞受賞小説の映画化作品『海を感じる時』の初日舞台あいさつが13日、東京・テアトル新宿で開催され、市川由衣、池松壮亮、安藤尋監督が登壇した。

1978年、中沢けいが18歳の時に書いた『海を感じる時』の原作小説は、当時、現役女子高生が書いたスキャンダラスな文学として話題を呼んだ異色作。ひとりの少女・恵美子(市川由衣)が洋(池松壮亮)との恋を経て、大人の女へと目覚めていく過程を精緻な描写で描く。

ヒロイン恵美子役で濃厚なラブシーンに挑んだ市川は「私自身、覚悟を決めて挑んだ作品です」と笑顔であいさつ。セクシーなワンピースで登壇した市川に、池松は目のやりどころに困りながら「『おはようございます』しか言えない。すみません」とタジタジの様子だった。

冒頭の絡みのシーンにはこんな撮影秘話が。市川が「池松さんと初めてお会いした日、『はじめまして』で、次に裸になっていたので、池松さんにはもう見せられないものはないです。全部むき出しでやってました」と告白。池松も「こんな役、誰が引き受けてくれるんだろうと思っていたら、市川さんがやってくれた。作品に捧げようととしているのが見えて、一緒にやっていて幸せでした」と市川を称えた。安藤監督も同シーンについて「リハーサルとかをやらずにインしたのは、かえって良かったなと。いろんなところを取り繕わないピュアなところから撮れました」と手応えを口にした。

また、市川が池松に殴られるシーンの撮影も大変だったと言う。池松は「いくら作りものだからといってもね。いろいろと考えました」と激白。安藤監督も「あそこは話し合いました。池松さんも大変だったし、市川さんも一発で決めなきゃと言っていました」と感慨深い表情で振り返る。結果、一発で決まったそうで、市川は「殴られるのも1回です。また、恵美子が洋を殴るシーンも本気でやらせていただきました」とのこと。3人の本作へ懸ける熱い思いが伝わってきた。

クランクアップ時には泣いてしまったという市川。帰りの車の中ではそのままダウンしてしまったそうだが「やり切った感がありました。この映画をやるってなった時、自分がボロボロになるくらい全身全霊でやろうと決めていたので、それで良かったと思います」とキッパリ。さらに「女優を始めて15年目。自分が大好きな作品、役に出会え、本当にやってきて良かったと思います」と、充実感あふれる表情で舞台あいさつを締めくくった。