筆者のような仕事をしていると、どんな新型車を見ても、「ふーん、なるほどね」と冷めた見方になってしまいがちだ。夢のようなスーパーカーでさえ、「そう来たか」などと斜に構えて格好をつけてしまう。しかし、4代目「ロードスター」のアンベールには素直に心が踊った。ワクワクとドキドキ、そして見た瞬間ニヤニヤ。笑顔になってしまった。
何がうれしいといって、なにより小さくなったこと。全長が約10cm短くなり、車重は現行モデルより100kgも軽くなったという。これは本当にうれしい。自動車というのは、モデルチェンジするたびに大きく重くなってしまうものだ。車重に関しては、この1~2年で軽量化を敢行するメーカーが増えているが、ボディサイズを小さくするモデルは少ない。
新型「ロードスター」なら、すべてが楽しいに違いない
マツダは以前にも、「RX7」をFCからFDにモデルチェンジする際、ボディを小型化した。このときもその勇気に賞賛が贈られたものだが、「RX7」の場合、そもそもFCが肥大化していたという事情がある。しかし、「ロードスター」は現行モデルでも十分すぎるほどコンパクトだ。それをさらに小さくするとは、マツダの面目躍如といえる。
「魂動」デザインが採用されたボディは豊かな曲面を描きながらも、ギュッと引き締まって見える。その姿を見ていたら、ふいに「これは着られるぞ」という思いが閃いた。
「着るスポーツカー」、それはかつて、ポルシェ「911」の初期モデル(ナロー)に与えられた賛辞だった。クルマに乗り込むのではない。クルマを着るのだ。かつての「911」はそれほどにコンパクトで、体にぴったりと洋服のようにフィットした。
いまや「911」は全長4.5m近い堂々たるボディに成長し、とてもではないが「着る」という雰囲気ではない。それより小さな「ボクスター」「ケイマン」を見ても、やはり「着る」という言葉は浮かんでこないし、その他のあらゆるスポーツカーにしても同様だ(ロータス「エリーゼ」だけは別だと思うが、あれは「着る」というより「履く」というイメージか?)。
ジャケットをサッと羽織るように、新型「ロードスター」を"着て"ドライブへ。ああ、なんと魅惑的であることか。このクルマなら、近所のコンビニからロングドライブまで、すべてが楽しいに違いない。詳細なスペックが発表されていない現時点で何らかの評価を下すべきではないが、期待は膨らむばかり。願わくば、その期待を裏切らないスペックと、そして中高年だけでなく、若い人が買える価格を実現してほしい。