9月9日に森永乳業から発売された新商品「焼プリン 本日のスペシャリテ」。“焼きプリンの王道”とも言うべきロングセラー商品が発売から20周年を迎えるにあたり企画された、まさに特別仕様とも言える商品だが、商品化にあたってのコンセプトやエピソードについて、開発担当者、マーケティング担当者を直撃し、商品の魅力に迫った。

焼プリン 本日のスペシャリテ

本商品のコンセプトは“大人のためのプリン”。家庭的な味わいが人気の「森永の焼プリン」に比べると、隠し味として使われる洋酒をたっぷりときかせ、生クリームや洋菓子用のブランド卵をふんだんに使用するなど、かなりリッチなテイストに仕上がっている。このようなコンセプトの商品を開発するにあたった経緯について、マーケティング担当の海野文雄氏は次のように明かす。

「発売以来ご好評いただいている『森永の焼プリン』は家庭でお母さんが手作りしたような味わいということでヒットにつながりました。それに対して今回の新商品は“大人”という切り口で開発しました。『森永の焼プリン』として発売から20年経ち、人間で言うとちょうど成人式。焼プリンの違った顔を見せたいということで、チャレンジ的な商品を出してみることにしました」

同社マーケティング担当の海野文雄氏

大人仕様の新しい側面を持つ焼プリンとして、同社が掲げたのがまずはスペックを上げていくこと。そこで商品としての“エッジ”をきかせるために、特にこだわったのが隠し味となる洋酒の選定だ。20種類以上のいろいろな洋酒を掛け合わせて50~60個ものサンプルが試作された結果、“ネグリタ・ラム”と呼ばれるフランスで最も一般的に使われている洋菓子用のラム酒と、“グヨ・カルバドス”というアップルブランデーが最終的に採用されている。2種類の洋酒を掛け合わせたことの理由について、開発担当者である森永乳業食品総合研究所の田中学氏は「トップ・ノートと呼ばれる最初に感じる香りとしてまずはラムの芳醇な香りを味わっていただいた後、後味の余韻を楽しむ香りとしてフルーティーなアップルブランデーを採用しています」と語ってくれた。

また、同製品では“エグロワイヤル”というブランド卵を使用しているのも大きな特徴のひとつ。これはフランスで修業をしたパティシエの声をもとに数年前に誕生した卵だ。開発段階で数種類の卵が検討された結果、風味が引き立つ卵として本製品でも採用されることになったそうだ。

そしてプリンにとってもう1つの大事な素材である乳製品には厳選された生クリームをたっぷりと使用。加熱殺菌の処理方法にもこだわっており、蒸気で優しく乳成分を加熱することにより、素材への負担を減らし、生乳の風味がより感じられるように工夫している。これは、同社の「おいしい牛乳」にも用いられている製法だ。

さらに“焼き”の行程にもこだわり、焼き目を濃くしてより香ばしい味わいが楽しめるように工夫している。「プリンは絶妙な火加減でないと“す”が入ってしまうお菓子。そこで、オーブンの加熱方法も通常とは変えていて、工場でオペレーターが細かく温度設定を制御して焼いています」

材料から製法に至るまでこだわりを尽くした本商品だが、従来の製品から変えることをしなかったという意味でこだわったのが“食感を維持する”ということ。その理由について田中氏からは次のように語られた。

森永乳業食品総合研究所の田中学氏

「『森永の焼プリン』と言えば、食べごたえのある食感というのも支持されている理由の1つです。そのため、食感は変えずに、味で変化を出すというのも実はこだわったポイントでした。そのため、従来同様、ゲル化剤を一切用いず卵の自然の力だけで固め、ほどよい弾力と滑らかな口どけは新商品でも変わらずお楽しみいただけるように再現しています」

なお、「森永の焼プリン」の20周年記念的に発売された本商品は、今年1年間をかけ、“本日のスペシャリテ”シリーズとして第2弾、第3弾を発表していく予定とのこと。

「『森永の焼プリン』は朝食として召し上がられる方も多くいらっしゃるようです。それに対して、本商品は食後のデザート風にほんの少し召し上がっていただくのにちょうどいい量で中身の濃いものを出していきたいと考えています。朝は焼きプリンではじまり、食後は本日のスペシャリテで締めるというような朝から晩まで楽しんでいただける新たなスタンダードを生み出していきたいです」

これまでにない画期的な新商品の登場を予期するような発言。同社の今後の展開に、「森永の焼プリン」ファンのみならず、21年目以降もますます期待が持てそうだ。