今回のメディアイベントではiPhone 6/6 PlusとApple Watchが発表された。発表内容自体は、事前のリーク情報が概ねそのまま当てはまる形となり、個人的に大きなサプライズはなかった。とはいえ、各製品については十分魅力的なものだったと考えている。
iPhone 6と6 Plusについては、ほぼ完全にリーク通りの内容。ファブレット人気に便乗した安易な大型化ではないかと危惧もしていたが、現地でのハンズオンの感想を読む限り、その心配は杞憂に終わったようだ。iPad mini/Airの流れを汲む新しい本体デザインは美しく、大型化したディスプレイは表示できる情報量の増加に加え、視認性も向上しているという。CPUの高速化や画面の大型化・高解像度化にも関わらず、システム全体の省電力化によってバッテリー寿命も延びている。スペック的にはライバルに見劣りする点もあるが、全体的なバランスは極めて高いレベルでまとまっている。
スペック面を見ていくと、カメラの解像度は800万画素と据え置きだが、一方で像面位相差AFや光学式手ぶれ補正(Plusのみ)の採用など、着実に使い勝手を改善するモデルチェンジは果たしており、個人的には十分。また、一部で期待されていた4k動画撮影がなかったことについても、現時点でほとんどのMacやiOS機器では4k動画を再生できないので、採用するのは時期尚早ということだろう。
注目の新機能としては、NFCによる決済機能「Apple Pay」が挙げられる。日本ではおサイフケータイによるタッチ決済は珍しくないが、欧米ではまだまだ普及初期にある。Apple Payではすでに所有しているクレジットカードを画像として取り込んで使うため、手続きが簡単で、すぐに利用できるのが便利そうだ。
ただし、Apple Payは当面、米国のみでの展開。現時点では日本でのサービス時期は未定だ。また、日本でサービスが開始しても、日本ではすでにカウンターの上にFelica系のリーダーが鎮座しており、いかに日本での普及率が高いといえども、iPhone 6でしか利用できないApple Payのリーダーがどれだけ普及するかは疑問が残る。
むしろiPhone 6のNFCに求めたいのは、周辺機器との接続の手間を省くことだ。ソニーの「Cybershot QXシリーズ」など、NFCで接続を簡略化できる機器は多い。現時点では、こうした機能が利用できるかどうかは定かでないものの、Android端末と同様に、iPhoneでもワンタッチで接続できるようになるのを期待したい。
全体としてiPhone 6は、正常進化モデルとして、まっとうなアップデートをとげたといえる。スペック面では最強ではないかもしれないが、アップルならではのハードとソフトの綿密な連携により、トップクラスのライバルと渡り合うだけの魅力を備えている。個人的にはiPhone 6 Plusを購入する予定だ。