話題の「Surface Pro 3」をMacBook Airユーザが検証する

Surface Pro 3を「外から」眺める

Microsoft自らがハードウェアを開発/設計する「Surface」は、ジャンルとしてはタブレットに分類されるが、カバーを兼ねるオプションキーボード「タイプカバー」を装着すると、ほぼラップトップ機として使えるところが売りだ。初号機はARM版Windows 8(Windows RT)を搭載していたが、利用できるアプリがWindowsストアで販売されるものに限定されていたことから、ほどなく消費者の関心はx86 CPUを搭載し一般的なWindowsソフトが動作する「Surface Pro」へと移った。

7月発売の新モデル「Surface Pro 3」は、文字どおり第3世代に位置付けられる製品だ。OSは最新のWindows 8.1 Pro、完全版Office(Office Home and Business 2013)もバンドルされる。もはや初号機のような"タブレット的な何か"ではなく"タブレット的に使えるPC"と言っていい。

細部へのこだわりは、これまで以上かもしれない。ボディ素材は従来どおりのマグネシウム合金だが、液晶をサイズアップしたにもかかわらず107gの軽量化を実現。蒸着処理した表面の質感は高く、USBポートなど端子部まで丁寧につくられている。排熱も工夫しているようで、2時間ほど断続的に使用したところファンが回転する場面はわずかで、回転したとしても音が気になることはなかった(次第に背面右側は熱を帯びてきたが)。microSDカードスロットはキックスタンドを開けたところに移動したが、挿した状態で使うことも多く、こちらのほうが合理的にも思える。

タイプカバーとの接続部分。丁寧に仕上げられており、タイプカバーを装着したときもスキは見られない

蒸着処理されたボディ表面。わずかに青みがかったシルバーは質感が高い

Surface Pro 3には、500万画素のカメラが前面/背面の計2基搭載されている

机の上にMacBook Air(11インチ)と並べたところ。Surface Pro 3の薄さを実感できる

microSDカードスロットは、キックスタンドを開けた部分へ移動した

Surface Pro 3のココがいい

  • キックスタンド

ハードウェア面でのSurface Pro 3"らしさ"を感じさせる部分が、背面のキックスタンドだ。Surface Pro 2では24度と40度の2段階だったチルト角度は、最大150度まで無段階で調節できるようになった。液晶画面をグイッと押し込む調節スタイルは、初回は壊してしまいそうで不安を感じるものの、手を離した位置でピタリと固定される巧緻なつくりだ。ただし、しっかり固定されるために持ち上げた程度では元に戻らないため、両手を使い閉じなければならない。

キックスタンドは最大150度まで無段階で調節できる

無段階調整を支える回転機構。強めに力をくわえないかぎり、角度は変わらない

  • Surfaceペン

やはりSurface Pro 3最大の売りは「Surfaceペン」だ。タッチ操作でも利用できるが、電磁誘導方式のペンのほうが細かい部分を操作する用途に適しているし、特に手書き文字は指先で書くより違和感がないうえにキレイな文字に仕上がる。「紙と鉛筆」の操作性を日常の作業に取りこみたいのならば、有力な検討対象となるだろう。

認識精度は、既存のタブレットとスタイラスペンの組み合わせを大きく上回る。一般的な静電容量方式のタッチパネルより認識精度は高く、反応も速い。ペンで文字やイラストを書くとき、ペン先の動きと実際の描画にズレがあると扱いにくいものだが、Surfaceペンにはそれが感じられない。感圧レベルは前モデル(Surface Pro 2)の1024段階から256段階に落ちているものの、文字を書くかぎりでは支障なさそうだ。

このSurfaceペンは、いつでもすぐに使いはじめることができる。上部のボタンをワンクリックすれば、Surface Pro 3がロック状態かどうかにかかわらず「OneNote」の新規ページが開く。頭に浮かんだことをメモしておきたいとき、ほぼタイムラグなしに書き始めることができる。

スクリーンショット機能もかなり使える。Surfaceペン上部のボタンをダブルクリックし、切り取る範囲を指定すると、その画像を貼り付けた状態でOneNoteの新規ページが作成される。ペンで文字やイラストを書き足せるので、作業中のウインドウにコメントを付けて会社の同僚と共有するといった活用法が考えられるだろう。Surfaceペンの機能を生かした、直感的な機能だといえる。

少し浮かせるようにしてSurfaceペンを構えても、ペン位置は正しく検出される

  • タイプカバー

キーボード兼ディスプレイ保護カバーの「タイプカバー」も一新。本体にマグネットで取り付ける構造は前モデル同様だが、折り返し部分は2段階で可動するようになり、キーボード使用時に緩やかな傾斜を持たせることが可能になった。なにより、画面が12インチに拡大されたことに伴いサイズアップしたため、キーピッチが広がり入力しやすくなっている。タッチパッドも広くなり、クリックに対応している。

Connected Standby改め「InstantGo」と呼ばれるスリープモードとの連携も見逃せない。タイプカバーをパタリと閉じるだけでスリープ、開ければすぐに復帰するのだ。しかも、スリープ中も一定間隔で通信を許可することにより、バックグラウンドで動作する通信を維持し、メールやSNSのデータ取得を可能にする(ストアアプリのみ)。Macユーザにとっては、タイプカバーでも「Power Nap」ライクなスリープが可能といえばわかりやすいだろうか。

Surface Pro 3のタイプカバー。折り返し部分は2段階で可動するため、キーボード時に緩やかな傾斜を持たせることができる

「これさえあれば、何もいらない」?

発表時の報道から判断するかぎりMacBook Airを大いに意識しているSurface Pro 3だが、一般ユーザに対し「MacBook AirかSurfaceか」という選択肢を提示するのは少々ナンセンスなように思う。OSの違いはさておき、目指す用途とユーザ層があまりに違いすぎるからだ。

Surface Pro 3はWindowsノート機としての利用に耐えるスペックを持つが、Surfaceならではのアイデンティティは「Surfaceペン」を始めとするタブレット的な操作性にある。紙とペンの感覚で速記し、それをクラウド経由で共有するというOneNoteを軸としたソリューションは、やはりビジネスでの活用を念頭に置いてのことだろう。Office Home and Business 2013のバンドルを売りにしていることも、製品としての本質を物語っている。「個」というよりは「集団」を念頭に置いたデバイスといえそうだ。

一方のMacBook Airは、あくまでノートPCだ。タッチ入力には非対応、液晶サイズと重量の関係でいえばSurface Pro 3に見劣りする。しかし、登場から6年以上が経過するにもかかわらず色褪せないそのデザイン性、RubyやPythonといった軽量プログラミング言語(LL)を標準装備するなどOSレベルでの高い機能集積度/応用力は、Windowsノート機を寄せ付けない。標準装備ではないにせよ、Microsoft Officeも動くしクラウド経由でのコラボレーションも可能だ。Surface Proとの比較でいえば、「集団」というより「個」を指向したデバイスに映る。

Surface Pro 3は確かに完成度の高いマシンだが、現役MacBook Airユーザの身から言わせてもらうと、「MacBook AirかSurfaceか」という二択の状況はピンとこない。Surfaceペンで速記できれば便利だろうとは思うが、まとまった量の原稿を書くときはもう少しタフなキーボードを使いたいし、11インチモデルであればタイプカバー付きのSurface Pro 3と重量はほとんど変わらない。

Mac、特にMacBook Airユーザから見たSurface Pro 3は、おそらく"乗り換え用"ではなく"買い増し用"だ。異種プラットフォームへの移行はそれほど容易ではなく、ファイル/フォルダをコピーして完了とはならない。現在使っているMacがプライベート目的であれば、サウンドライブラリやフォトライブラリの移設を伴うし、アプリケーションも買い直しが必要だ。開発目的であればIDEやシミュレータといった"環境"の再構築が必要になる。将来的には移行を検討するにせよ、当初は補完する役割のほうが重要なはずだ。

むしろ買い増しであれば、可能性は大いにアリだろう。Windowsが必要な場合、MacBook AirのSSD容量では仮想化ソフトウェアでWindows環境を持ち運ぶには厳しく、予算が許せば実機を選びたいところ。それが画面にペンで書き込めるというのであれば、客先でちょっとしたプレゼンを行うときに使ってみようかという気にもなる。無段階のキックスタンドなど、所有欲をくすぐるガジェットとしての魅力もある。MacBook Air(にかぎらずMacBook ProやMac Proユーザも)にとっては、OneNoteで連携をとりつつ用途によって使い分けると、新たなコンピューティングが見えてくるデバイスなのかもしれない。

撮影したスクリーンショットは、付属の「OneNote」を利用すると、Surfaceペンを使い文字やイラストを書きくわえることができる

OneNoteはOS X版とiOS版も無償提供されているため、MacとiPhone/iPadでも作成された文書をすぐに確認できる

:Surface Pro 3とMacBook Air(Early 2014)の比較
機種名 Surface Pro 3(128GB) MacBook Air 11"(128GB)
画面サイズ 12インチ 11.6インチ
ピクセル数 2160×1440 1366×768
アスペクト比 3:2 16:9
ppi 216 135
CPU Core i5 1.6GHz Core i5 1.4GHz
メモリ 4GB 4GB
グラフィックス Intel HD Graphics 4400 Intel HD Graphics 4400
内蔵ディスク 128GB SSD 128GB SSD
OS Windows 8.1 Pro OS X 10.9.4
カメラ 前面/背面 前面のみ
Wi-Fi 802.11 a/b/g/n/ac 802.11 a/b/g/n/ac
Bluetooth 4.0 4.0
インターフェイス USB 3.0×1、Mini DisplayPort、
microSDXC、ステレオミニジャック
USB 3.0×2、Thunderbolt
サイズ 292×201.3×9.1mm 300×192×3~17mm
重量 約798g 約1.08kg
価格 (税込) 120,744円 95,904円