秋田県には、思わず二度見してしまうほど衝撃的な商品名のパンがある。その名も「学生調理」に「中年調理」。パッケージを見た途端、俄かに誕生の背景にあるストーリーを妄想してしまうのは筆者だけではないはずだ。
高校の売店で人気になったから「学生調理」
「学生調理」の中身は自家製ナポリタン・魚肉ソーセージフライ・キャベツサラダ。このパンの誕生は、昭和61年(1986)のとあるハプニングに起因する。とある高校の売店用に、今でいう"がっつり系"のパンを試作して提供したところ、売店側が試作品であるにも関わらず売り物として販売しちゃったという。
しかも、これが生徒たちの間で話題となり、間もなく大量の注文が入るや"あおられる形"で製品化に至ったというのがすごいところ。試作の段階では無名だったこのパンに「学生調理」の名がついたのは、「学生から火がついたから」だとか。「火がついた=調理」のダブルミーニングにもとれそうで、なんともユニークだ。
「以降、口コミで広がり、各売店への納品を開始することになりました。それ以来ずっと、今日でも変わらず販売していることから、『ロングセラー』『青春の味』『ご当地パン』と称してくださる方もいらっしゃいます」と話すのは、製造元であるたけや製パン企画課の加藤勇人さん。
「中年調理」はラジオ番組とのコラボで
加藤さんによると、続いて大ヒットとなった「中年調理」は、FM秋田の人気番組「秋田宣伝ミーティング」のコラボレーションによって誕生したのだとか。
「番組MCを務めていらっしゃる放送作家の中村羅漢さんが、秋田で『学生調理』に出合って衝撃を受けたことから、"コラボ企画"がスタートしました。秋田県民にとっては『学生調理』はおなじみの商品なのですが、中村さんは東京在住なので、初めて見たこのパンに衝撃を受けたようです」(加藤さん)。
そして後日、中村さんからたけや製パンに取材申し込みが入った際、「学生調理」の誕生秘話を披露。そこで、「当時の人たちは中年になってるね」との言葉とともに、「中年調理」と命名したのだとか。
「中年調理」は赤・黒・緑の3種類のラインナップをそろえているが、一番人気は「赤中年」。メンチカツ、キャベツ、ヤキソバが挟まれたなんとも豪華な一品だ。ちなみに、「黒中年」の具材はナポリタン、チーズポテト、油淋鶏。「緑中年」にはササミカツ、ごぼう、ビーフンが挟まれている。
人々がSNSで販売情報をシェア
実際に商品化した折には番組内で盛り上げたこともあり、またたくまに話題製品となり、発売一週間で品切れ店が続出したのだとか。「●●の店に売ってますよ~。残り2個です」なんて情報を、SNSでシェアする人も出るほど社会現象化したというのだから驚きだ。
発売に合わせて中村さん自らが手掛けた「ナイスミドル~中年調理の歌~」がたけや製パンwebサイトでも公開中だが、発信する側も購買者も全力でこの社会現象を楽しんでいるのがよく分かる。
「学生調理」は健在だが、「中年調理」は今年の8月24日までの発売だったため、今では"幻の味"となっている。「第2弾も検討中なので、楽しみにお待ちください」と加藤さんが教えてくれたが、発売の際にはまたもや秋田全土がお祭り騒ぎになるに違いない。県民総出で盛り上がれるほどの力を持つ「●●調理」シリーズから、今後も目が離せなそうだ。
※記事中の情報・価格は2014年9月取材時のもの