ローランド ディー.ジー.は9月3日、東京・浜松町の同社クリエイティブセンター内において報道関係者向けイベントを開催し、"机上でのものづくり(Desktop Fabrication)"の新たなあり方を提案するデジタル製品新シリーズ「monoFab」の立ち上げを発表。その第1弾として、3次元積層造形機(3Dプリンタ)の「ARM-10」と、小型3次元切削加工機「SRM-20」の2機種を紹介した。

3Dプリンタの「ARM-10」と3次元切削加工機「SRM-20」発表会場にて

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3Dプリンタ市場に新規参入

発表会では、まずローランド ディー.ジー.の四半世紀に渡る3D事業の歴史が紹介された。1986年に世界初の卓上サイズの切削加工機「CAMM-3」を開発した同社は、"机上での身近なものづくり"をコンセプトに数々の切削加工機を生み出し、ものづくりのデジタル化を推進してきた。

今回の「monoFab」シリーズは、それを一歩推し進めて新たな創造の世界を実現するためのもので、切削加工機に加え、同社としては初となる3次元積層造形機(3Dプリンタ)もラインアップしている。

同社によれば、素材を削って加工する「切削」と、無から盛って造り出す「積層」という2種類の加工方法を提供することで、ものづくりに新たな価値と楽しみをもたらすことが狙いだという。monoFabというネーミングは、monozukuri(ものづくり)とDesktop Fabricationからの造語で、「イメージを形に」という同社のビジョンを表現しているそうだ。

ちなみに、切削機は精度の高い加工を追求できるが複雑な形状は苦手。逆に3Dプリンタは複雑な形状を造形するのが得意。両者の使い分けをすることで、これまでは難しかった加工・造形ができ、夢やアイデアをより具体的な形に落とし込むことが可能になるという。

会場ではプロダクトデザイナーの安富浩氏(コトック株式会社)の協力のもと球形アクティブスピーカーを試作する様子がビデオで紹介され、プロトタイプの製作プロセスにおける可能性の大きさがアピールされていた。

小型3次元切削加工機「SRM-20」

小型3次元切削加工機「SRM-20」。アクリルや木材などの立体素材をドリルで切削することで、精密な造形が可能

続いて、今回発売される2機種の特長や詳細なスペックも紹介された。

まず、「SRM-20」は同社のデスクトップ切削機「MODELA MDX-20」の後継機となる製品で、一般的な家庭用電源で使用することが可能。素材を削る際に出る音や削りかすを意識して本体を覆う透明なカバーを設け、設置場所を問わず使用できるようにしているという。

また、3~6mmまでの太さの異なる刃物を取り付けられるようコレットチャック式のツール固定構造を採用。対応する素材の幅も広く、ケミカルウッドやスタイロフォーム、アクリル、ABS、PCBなどを加工することができる。ちなみに動作速度やモーターの改良などで切削効率は前モデルの倍近くに向上しており、素早く精密な造形を実現できるとのこと。

製品には、CAMソフトウェア「MODELA Player 4」、2次元切削ソフトウェア「iModela Creator」、簡易加工ソフトウェア「ClickMILL」などが付属。切削機本体には電源オン/オフ用のボタンが搭載されているだけで、細かい操作はソフトウェア経由で直感的に行うことが可能だという。

新開発の3Dプリンタ「ARM-10」

光造形方式の3Dプリンタ「ARM-10」。液体樹脂を樹脂槽に貯め、一層ずつ下からUV-LEDを照射することで硬化させ造形していく

「ARM-10」は、光造形方式を採用した同社初の3Dプリンタ。本体下部にあるプロジェクターから光を照射して樹脂槽内の樹脂を一層ずつ硬化させて造形していく仕組みを採っている。

光源はUV-LED(紫外線発光ダイオード)で、専用の樹脂「imageCure」も新たに開発しているとのこと。同樹脂は表面の磨き加工など、造形後の加工が簡単に行えるなどの特長を持っている。なお、機材の洗浄は薬局などで市販されているごく普通のエタノールで行うことができる。

製品には、新開発の光造形機出力ソフト「monoFab Player AM」が付属する。同ソフトは、直感的で分かりやすいユーザーインタフェースを採用しているほか、3Dデータの不備を自動で修復するヒーリング機能やシミュレーション機能などを搭載しており、初めて使うユーザーでも造形が可能とのこと。

ものづくりを気持ちよく行える製品を

新製品の紹介が行われたあと、会場では各製品を担当した開発リーダーが登壇し、それぞれ開発の際に心がけたことや苦労したことなどを語った。

「SRM-20」を手がけた木下元邦氏(左)と「ARM-10」を担当した大草圭吾氏(右)

「SRM-20」を手がけた木下元邦氏は、「削ったときの粉や音をいかに軽減するかにこだわり、試行錯誤を繰り返しながら開発した。使いやすさを実感してほしい」とコメント。また、「ARM-10」を担当した大草圭吾氏は、「これまで実績のないものを開発するのが大変だった。3Dプリンタは何もないところからものができていくのが魅力だし、感動する。そのドキドキ感をぜひ体験してほしい」と語った。

国産ならではの「安心・信頼」でサポート

最後に、販売活動やサポートへの取り組みも紹介された。今回発表した新製品は、世界各国の営業拠点で展開している同社のショールーム「クリエイティブセンター」や、教育・トレーニングサービス「アカデミー」、サポートシステム「ケア」などを有効活用して販売促進や顧客サポートなどが行われる。また製品は企業の研究・開発業務や教育、医療、ホビーなどの分野で使用されることを想定し、国内外で発売後1年間で各機種とも1,000台の販売を目指すという。

製品価格は、「SRM-20」が48万円、「ARM-10」が68万円(いずれも税抜)で、9月3日より発売が開始されている。

光造形方式の3Dプリンタ「ARM-10」の作品例。写真左はBluetoothスピーカーの試作機(コトック株式会社の安冨浩氏による)

小型3次元切削加工機「SRM-20」の作品例。製品購入後にダウンロードできるチュートリアルでは小型のファンを切削。ドリルに装着すると、切削時の削り屑を吹き飛ばすことができる