現在、フィギュアスケート世界ランク1位の羽生結弦選手。19歳という若さで五輪の金メダリストになるという快挙を成し遂げ、今一番勢いがある選手と言っても過言ではないかと思います。
基礎点が高い後半に加点が取れるジャンプの質
羽生選手の素晴らしいところは、技の一つひとつの質がよく、全ての技に加点がつくというところです。
技の質についてご説明します。例えばジャンプであれば、十分な高さや幅があり、着氷時に流れがあれば質が良いとされます。スピンでは、回転が速いことや同じ場所で回れていれば質が良いとされています。この他にも加点が付く条件はいくつかありますが、羽生選手はその項目をクリアし、成功したジャンプのほとんどに加点が付いているため、高得点の評価につながっています。
また、演技後半は技の基礎点が1.1倍になるのですが、この後半部分に基礎点が高いジャンプを入れて演技をすることができるというところは、羽生選手の武器の一つだと言えます。
現在は、ダブル(2回転)ジャンプはどの種類も2回まで、全てのトリプル(3回転)とクワドラプル(4回転)ジャンプは2種類だけを2回までしか行ってはいけないという規則がルールによって定められています。
選手はそれぞれ作戦を立てながら演技構成を考えます。演技後半は体力の消耗が激しくミスも出がちですが、羽生選手はそこに基礎点が高いジャンプを組み込んでいることが多いです。演技後半で基礎点が高いジャンプを跳び、さらに加点が付くということが、羽生選手の武器になっているのでしょう。
柔軟性を生かしたスピンと練習ノート
スピンでは最高評価の「レベル4」がつくことがほとんどです。羽生選手は「ビールマンスピン」などといった柔軟性が必要とされるスピンを行うことができるため、このような高評価につながっているのではないかと思います。
スピンのレベルを上げるためには、難しいポジションでスピンをしたり、一定の回転数が必要だったりといくつか条件がありますが、その多くは柔軟性が求められるものになっています。柔軟性は急に身につくものではなく、毎日の積み重ねが必要なものです。以前、羽生選手は練習ノートをつけているということを紹介しましたが、このように、日々コツコツと努力した日々が今の羽生選手をつくりあげたと言っても過言ではないでしょう。
今シーズンは五輪王者として、追われる立場でシーズン戦うことになりますが、アイスショーにて試合で行っていない種類の4回転を成功させたという話も聞きました。チャンピオンになっても成長を続ける羽生選手の今シーズンの活躍が、非常に楽しみです。
筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)
1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。