数々のカリスマ講師を生み「日々是決戦」「親身の指導」のキャッチフレーズで知られる代々木ゼミナールが、全国27校のうち20校を閉鎖すると発表した。あの代ゼミでも、少子化には勝てなかったということか。

日本の人口ピラミッドを見ると、団塊ジュニアと言われる30代が膨らんでいるが、20代・10代と年齢が低くなるほど人口が減少している。10代の人口は、過去20年間減り続けてきたことがわかる。

では、10代を対象とするビジネスは過去20年、すべて縮小に向かっているかと言うと、そうではない。子供数は減っても、子供1人にかける教育費は増加しているので教育ビジネスはむしろ拡大している。個別指導を売り物とする学習塾や、インターネットを使った学習ビジネスは、過去20年で逆に成長した。

ところが、代ゼミが注力してきた「大学受験予備校」は、もっとも逆風が強いビジネスであった。文部科学省によると、入学定員の増加と志願者減少によって、大学の志願倍率は平成25年には1.16倍まで低下している。定員割れする大学の増加で、大学側は学生確保のために推薦入学やAO入試(アドミッション・オフィス入試)枠を拡大している。学生も、現役での進学志向が強まり、推薦入学やAO入試を積極的に利用している。

文部科学省によると、平成24年度には一般入試で大学へ進学した学生は56.2%(333,889人)に低下し、推薦入学が34.8%(206,942人)、AO入試が8.5%(50,626人)に増加している。こうした流れも予備校ビジネスに逆風である。

ただし、難関大学の競争倍率は下がっていない。難関校を目指して浪人する学生は今でも多い。ところが、代ゼミはその分野で競争力を維持できなかった。かつて3大予備校といわれた「代ゼミ」「駿台予備校」「河合塾」の中で、代ゼミだけが東大など難関校の合格者数を大きく減らし、一人負けの状態であった。

では、代ゼミは経営危機にあるのか。そうではない。予備校ビジネスは縮小させても、多角化はまずまずだ。代ゼミは2009~10年に、中学受験で高い実績を持つSAPIXをグループに取り込んだ。中高一貫校を目指して受験する小学生の比率は高まっており、難関中学の合格実績が高いSAPIXの価値は高い。

代ゼミが旧校舎を活用して行う不動産事業も有望である。代ゼミの校舎は、駅前一等地の自社所有物件が多く、これまでにも多くの校舎をホテル、オフィスなどへ転用して成功している。現在、代ゼミ名古屋校舎は、23階のビルに建て替え中である。2016年竣工予定だが、うち19フロアに、名鉄不動産が経営するビジネスホテル「名鉄イン名古屋駅西(仮称)」が入居する予定である。

(※画像は本文とは関係ありません)

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。