女優の土屋太鳳、熊坂出監督らが30日、東京・新宿の新宿武蔵野館で行われた映画『人狼ゲーム ビーストサイド』の初日舞台あいさつに出席した。

映画『人狼ゲーム ビーストサイド』で主演を務めた土屋太鳳(左)と熊坂出監督

「人狼ゲーム」はヨーロッパ発祥のパーティーゲームを発展させた、心理ゲームの総称。プレイヤーは"村人"として、互いに協力しながら"村人"の中に紛れた"人狼"を見つけ出して処刑し、一方の"人狼"は正体を隠しながら"村人"の皆殺しを狙うという究極の頭脳戦が繰り広げられる。本作では、10人の高校生が強制的にこのゲームに参加させられ、疑心暗鬼の中で1人、また1人と命を落としていく。監督は、『パーク アンド ラブホテル』(2008年)でベルリン国際映画祭の最優秀新人作品賞を日本人で初めて受賞したことでも知られる熊坂出氏。桜庭ななみが主演を務めた前作『人狼ゲーム』(2013年)に続いてメガホンをとった。

登壇した熊坂監督は、前作について「嫌々連れて来られて、嫌々だまし合いをして、嫌々殺し合いをしなければならなくなるという企画に対して、『こんなことで金儲けをしやがって』という嫌悪感をエンジンにして作った」と説明。「結果としてあの映画をやらせてもらって本当によかったという感謝の気持ちでいっぱいなんですけれども、人間社会がはらんでいる矛盾とか卑しさが全面的に深刻に捉えられすぎていて、ちょっと何かに負けた気がした」と当時の心境を告白した。

また、前作を「僕の中ですごく大事な大事な作品」とした上で、「(本作で)最初に俳優部と顔合わせをした時に『とにかくその深刻さを乗り越えていきたい』という話をしました」と回顧。「前作で負けたなと思ったのは、たぶん僕が勝手に解釈しちゃったからなんでしょうね。バカバカしいとか、ひどいこととか。怒りがあったのがいけなかった」と分析し、「もうちょっと今回はニュートラルに、だましてでも殺してでも生きていこうとする子どもたちの話にしたかった」と語った。

この日は2人のほか、青山美郷、森川葵、桜田通、藤原季節、育乃介、佐久間由衣、小野花梨、國島直希といった主要キャストも参加。個々が背負ったものも相当重かったようで、キャスト陣は予定していた時間をオーバーするほど観客に語りかけ、それぞれが抱えた思いを伝えてた。主演を務めた土屋も「人の命を奪う演技だからこそ、人の命がどれだけ大切かを絶対に忘れずに伝えようと決心しました」と監督の思いを受け止めながらの撮影だったことを明かすが、「それが難しくてつらくてやめてしまおうと思った」と苦しい胸の内も。それでも「監督は常に大人の柱として存在してくださった。私たちは全力でぶつかることができた」と監督に敬意を表していた。

左から育乃介、青山美郷、森川葵、佐久間由衣、小野花梨、土屋太鳳、國島直希、桜田通、藤原季節、熊坂出監督