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呪いの招待状

『呪いの招待状』曽弥まさこ(ぶんか社)

呪殺を生業とする呪術師のカイ。もし死ぬほど憎い相手がいるならば、10年の寿命と引き換えに、望みを叶えてくれるという……曽弥まさこの『呪いの招待状』は、そんなカイと猫の姿をしたカイの“影”、そして魂を持ったフランス人形のマリーらによるオムニバス形式のホラー・サスペンス。多重人格の中の1人を殺してほしいという少女、一目惚れをした呪術師カイに会うために、義母や実の父を見殺しにする女子高生、幼なじみの男性を取り合う3人の娘、お互いの呪殺を依頼する夫婦……そのストーリーのどれもがありえなく、ヒドく曲がった先入観に満ちあふれている。人はそんなに簡単に人を殺すものなのか? しかしこの『呪いの招待状』は、そんな全的堕落な物語ではない。正体不明の(後々判明することになるが……)主人公の3人の人間味ある関わりが、妙に納得できてしまう、人間ドラマであるのだ。あなたの隣に“死ぬほど憎い相手”はいるのだろうか?

魔法少女・オブ・ジ・エンド

『魔法少女・オブ・ジ・エンド』佐藤健太郎(秋田書店)

佐藤健太郎の『魔法少女・オブ・ジ・エンド』は、つまらない学校生活を送る高校一年生の主人公、児上貴衣(こがみきい)の学校へ、突然現れた“魔法少女”との格闘を描いた学園不条理ホラー。この一見かわいらしい出で立ちの“魔法少女”が、ノッケから痛快なくらい、とにかく片っ端から人を“爆発”させていく。どうやら空に浮かぶ宇宙船のようなものから降りてきて人類を滅ぼそうとしているらしく、爆発された人間は、仲間にされてしまう。「まじかる~」といって襲いかかる“魔法少女”の様子がとってもシュールだ。いったいこの漫画は何人の人が殺されるのか、なんて頭をよぎってしまうが、先がまた読めないので、ドンドンと読み進めてしまうほど、とにかくストーリー展開が早いのが好感触。“魔法少女”の目的は? 次々と仲間を失っていく貴衣は果たして生き残れるのだろうか? このスピード感に乗って読んでいただきたい。

ハカイジュウ

『ハカイジュウ』本田真吾(秋田書店)

学園スポーツもののような爽やかな絵柄とストーリーではじまる本田真吾の『ハカイジュウ』は、その爽やかさから一転、とにかくグロいのが特徴のモンスター・パニック。ムカデのようなでかい“謎の生物”が次々と人を襲い、街を破壊していくハリウッド映画のような内容だ。物語の舞台は、周辺がグルリと深い穴で囲まれ、孤立する立川。主人公・鷹代陽は生き延びて幼なじみの藍沢未来に出会えるのか? この孤立した地獄から出ることができるのか? そしてそもそも“謎の生物”は何なのか? さまざまな謎が交錯するこの『ハカイジュウ』、著者による画力のせいもあろう、とにかく何匹も現れる“謎の生物”がキモい上、殺されていく人々もイヤになるくらいの描写が秀逸。逃げて食われる、生き延びて逃げる、“謎の生物”との終わりのない攻防が続く。実は狂気に駆られながらも主人公の命を助ける教師・武重 や未来の行方を知る同級生・桜浅古などサブキャラの個性も強く、読みどころ満載だ。

3位は吉川うたたの『黄昏堂へようこそ』、5位は押切蓮介の『ミスミソウ』、7位はナカタニD.の『リバーシブルマン』などがランクインしている。なお8月のホラー・サスペンス漫画ランキングは以下の通り。

順位 作品タイトル 著者/原作者名
1位 呪いの招待状 曽弥まさこ
2位 王様ゲーム 終極 金沢宣章 栗山廉士
3位 黄昏堂へようこそ 吉川うたた
4位 新呪いの招待状 曽弥まさこ
5位 ミスミソウ 押切蓮介
6位 リセットシリーズ 山本まゆり
7位 リバーシブルマン ナカタニD.
8位 魔法少女・オブ・ジ・エンド 佐藤健太郎
9位 王様ゲーム 連打一人 金沢信明
10位 関よしみ傑作集 欲望の炎—がまんできないー 関よしみ