家計に重くのしかかる教育費。大学進学時におおよその金額が準備できていることが理想だが、そうでない場合には奨学金を利用するという手段がある。しかし、最近では奨学金返済の滞納者が増えている。そこで今回は、ファイナンシャル・プランナーの村松祐子さんにどの程度の額までなら奨学金を借りても大丈夫か教えていただく。
結婚後も長く続く返済
奨学金制度を利用する動機としては、大学時代の資金が貯められていなくて、「それなら奨学金を利用すれば」というケースが少なくないようです。ただ、給付型以外の奨学金は返済しなければいけないお金で、借金と一緒です。
日本学生支援機構の奨学金制度には、利子がかからない第一種奨学金、利息が付く第二種奨学金があります。第一種奨学金の場合には、貸与された金額を卒業後に返済期間の月数で単純に割った金額を月々返すことになります。利子付きの場合の金利は経済・金融情勢により変動しますが、上限年3%の利息と合わせて借りたお金を返済していきます。
今、大学生の約半数が奨学金を利用していますが、就職して結婚してからも夫婦ともに奨学金の返済が終わらず、その返済額に家計が圧迫されているケースもあるのが現実です。
例えば、大学院までの借入金額が780万円の場合、0.5%の金利では総返済金額はおよそ822万円。卒業後に20年かけて月3万4200円の返済を続けていくことになります。上限となる年利3%の場合には、総返済額は1000万円を超え、月返済額4万3000円が20年続きます。平成26年1月末の利率は、貸与終了時の利率を返還完了まで適用する利率固定方式で年0.89%となっています。なお、返還中5年ごとに利率を見直す利率見直し方式は0.3%となっており、いずれかの選択制になっています。なお、第二種奨学金は、在学中は無利子で卒業後に利息が発生します。
では、奨学金はいくらまで借りていいのか。将来の収入見込額により試算も分かれるところですが、負担を軽減するために、家計と返済率の目安を知っておいた方がよいでしょう。
社会へ出て独立し、生活を始める場合、家計費の内訳をそれぞれ使用目的(費目)ごとに割合を決めておくことをお勧めしています。食費13%、住居費25%、水光熱5%、通信費6%、趣味・被服費・交際費15%、日用品3%、保険料5%、お小遣い10%、貯蓄15%という具合です。
返済額を最優先し、貯蓄分から5%、趣味・被服費、お小遣いを抑え、返済金に充てるとした場合、世帯収入のおよそ8%までを返済額の限度とすることが堅実ではないでしょうか。
学歴別にみた初任給は、大学院卒 23万4500円、大学卒 20万2000円(出所: 厚生労働省 平成23年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況<学歴別にみた初任給>男女計)。大学院に進んだ場合でも借入金額がおよそ300万円までであれば、全年利のケースで返済期間20年間、返済月額1万5000円から1万9000円となり、収入に対して約8%程度の返済負担率に納まります。
旅行したい、住宅を買いたい、子への教育、安心できる老後、人生のあらゆる選択肢を諦めないためにも将来の負担を減らしておきたいですね。