文部科学省は8月19日、日本の航空産業を自動車産業と比肩し得る成長産業にするためのロードマップとして「戦略的次世代航空機研究開発ビジョン」を公表した。
航空産業を自動車産業並みの世界シェアに
世界の航空機産業は25兆円規模に対し、日本は約1兆円とシェア約4%にとどまっている。世界の産業規模は今後20年で約2倍に成長することが見込まれている中、航空機産業を自動車産業(世界シェア23%)と比肩し得る成長産業とし、政府として関係機関が一丸となって積極的に取り組んでいくことが必要としている。
今後、次世代・次々世代完成機開発動向を踏まえ、それぞれ2020年・2025年をターゲットに革新的技術を実証。なお、リージョナルジェット旅客機の分野では、YS-11型機以来約50年ぶりの国産旅客機である三菱リージョナルジェット(MRJ)を三菱航空機が開発中であり、2015年の初飛行、2017年にはエアラインに納入され運用フェーズに入る予定となっている。
2020年頃をめどに飛行実証
現在、民間航空機に求められている 「安全性」「環境適合性」「経済性」の課題に対して、文部科学省は他国よりも優位な技術を早急に獲得し、国際競争力をつけることが重要としている。このためには先進的な航空科学技術において、国際競争力向上に直結する革新技術の研究開発および技術実証に取り組むことが重要と述べている。
具体的な取り組みとして、エンジン技術についてはファン・低圧タービン等の優位技術を開発し、地上実証を行う。また、機体・装備品技術については、フラップ・スラット、車輪(脚)、ライダー等の優位技術を開発し、JAXA飛翔等実験用航空機への適用により、2020年頃をめどにスマートエアプレーンとして飛行実証を行う。
さらに、日本がまだ保有していないハイインパクトな技術(高圧タービン等)の開発にも着手する。これらの成果については、MRJ等への適用を想定しナショナルエアプレーンとして、2025年頃をめどに飛行実証を行う。また同時に、エンジンについても地上実証を予定。国産エンジン・国産旅客機の実用化は2040年頃を目指している。
超音速機研究開発プログラム
加えて、日本の航空機産業を将来に亘り持続的に発展させるために、国家戦略として長期的な視点で超音速旅客機についての研究活動を推進する。超音速機市場を先取りするために求められる「高速性」「環境適合性」「経済性」に対応した超音速試験機による技術実証を行い、次世代超音速旅客機に必要となる技術を確立する。
蓄積された独自技術を発展させるとともに、次世代超音速旅客機の実現に必須のキー技術を開発し、これらを適用する試験機の開発を目指す。具体的には、次世代超音速旅客機の実現に向けて、これまで蓄積してきた低ソニックブーム技術等の独自技術の研究成果を評価するとともに今後必須となるキー技術を精査し、計画を立案する。
同プログラムは、2030年頃までにエンジン技術の地上実証と機体・装備品技術の飛行実証を目指す。飛行実証は、JAXAが新たに開発する超音速試験機(Smart supersonic transport:SSST)を想定。これらは、2040年頃に想定される実機開発フェーズにおいて、国内の技術を総結集させた国産超音速旅客機の実用化に貢献し、アジア地域を日帰り圏とする高速移動の実現の一翼を担うものという。
「高速性」「環境適合性」「経済性」の3要素については、「超音速輸送により目的地までの所要時間を半減する高速化」「陸上超音速飛行を可能とする環境適合性の確保」「燃費向上による旅客事業レベルの経済性の確保」を実現し、2040年をめどに未開拓の超音速旅客機市場を先取りすることが目されている。