使いこんで分かった良い点、悪い点

様々な形で活用されているiPadだが、今回のモニター製品によってiPadの活用法は変わったのだろうか。約一ヵ月間、製品を使ってみた感想を訊ねた。

iPadの活用スタイルは様々でも、キーボードがあることで文字入力がしやすくなった、長文入力の負担が軽減されたという声は、参加者から異口同音に聞かれた。以前からiPadでの文字入力に使いづらさを感じていたという和泉さんは「今までメールのやり取りにもPCを起動していたが、iPadだけで済むようになった」そうだ。

入力しやすくなった分、逆に使いなれたPCのキー配列との違いに微妙な違和感があるという声も聞かれた。日頃Windowsを使っている後藤さんは「かな/英数切り替えのつもりでホームボタンキーを押してしまう」、またMacを使っている篠原さんは「Deleteキーが小さくて誤タッチしやすい」といったことがしばしばあるそうだ。このあたりの問題は、モデルを変えることで吸収できるようになるようだが、後藤さんからは「贅沢を言えば、ソフトウェアで対応してくれると嬉しい」と要望が挙げられた。

後藤さんが試用したiPad Air ウルトラスリム キーボードカバー ホワイト

もう一つ多かった意見は「若干重い」というもの。iPad自体が軽いため、少しの重量変化も感覚的には3割、5割増しになってしまうことも影響しているだろう。ノートPCと併せて持ち歩く場合にはキーボードを外すこともある、という意見もあった。

一方で、キーボードにとってはタッチも重要な要素。微妙なストロークやクリック感といった、物理的な制約との兼ね合いが必要な部分だ。実際に、他のiPad用キーボードも使ったことがあるという内海さんからは「タッチでは今回の製品が一番いいかな」との評価も聞かれた。

また、太田さんはiPadをセットする位置がキーに近いために「画面が見づらくなってしまった」ことが気になり、iPadはスマートカバーで自立させ、その手前にキーボードを置いて打つというスタイルに辿りついた。しかし、この意見に後藤さんがアドバイス。「私も当初はそう感じたことがあったが、iPad+キーボードでは画面のタッチ操作が必要な場合が多く、実は画面が近い方が便利だということに気付いた。それを考えて設計されているモデルもあるのだと思う」との見解を述べた。

iPadをビジネスに使う場合に限っても、使い方も好みも人それぞれ。多様なスタイルで使われるPadだけに、アクセサリにも小数点以下のミリ単位・グラム単位での洗練が求められている。

画面とキーボードを離して使いたいときはスマートカバーで自立されるという太田さん(手前)

キーボードがプラスされることの可能性

では、キーボードを使うことで実務的なレベルではどんな変化があったのだろうか。仕事で文章を書く機会が多い山崎さんが今回のモニターに応募したのは、「どこでも書けるといいなと思った」ことがきっかけ。漢字変換にまだ慣れない部分はあるが、現在のところ目的を達成できているとのこと。

坂木さんは、地方出張の多い部署で、出張の際にはSFA(Sales Force Automation)への登録用に毎回原稿用紙1~2枚分の報告書の作成が求められる。この作業がそこそこの負担になっていたという。そんな折に会社からiPadが支給された。従来は現場で書いたメモを持ち帰って会社のPCで入力していたが、iPadから出先で入力できるようになり、業務効率が改善されたそうだ。

とはいえ、ソフトウェアキーボードしかないiPadは入力効率に難がある。原稿用紙1~2枚分なのでなんとかこなせてはいたが、まだまだ改善の余地はあった。そうした課題を抱える中での今回のモニターである。

坂木さんは、「私も重宝していますが、むしろ横目で見ている部下からの反応のほうがすごかった」と言い、モニター製品のキーボードを見た瞬間に「眼の色が変わった」と振り返る。

「やはりハードウェアのキーボードでタイプしたいと思ったのでしょうね。文章を比較的たくさん打つので、重要なところで少しでもやりやすくしたいと。実際に触らせたところ、早く欲しい、買ってくれと言われています(笑)」(坂木さん)

移動が多い人にとって、持ち運ぶ際にはカバー一体型であることは利点のひとつ。また、通常のノートPCに比べてiPadのバッテリーは頼りになる上、セルラー版であればWi-Fi環境の心配も不要。最大の弱点である入力性能が増強されれば、こうした利点が生きてくる。現場の負担軽減への寄与は大きいだろう。

外出先で業務ドキュメントを作る機会が多いという山崎さんは、iPad Air mini ウルトラスリム キーボード フォリオ ブラックを試用。入力の効率が大幅に向上したという

一方で、iPadのビジネス利用に関して不安と期待の声も挙がった。

WebブラウザからSFAを利用する坂木さんのケースとは異なり、PCで作ったMicrosoft Officeドキュメントを扱う機会が多い後藤さんは、互換性にまだ難があるという。

「Officeドキュメントの変換ツールやGoogle Driveなどを使ってiPadからOfficeドキュメントを閲覧していますが、PowerPointなどはどうしてもレイアウトが崩れるんですよね。フォントの問題もあるし。そこはちょっと使いにくいところです」

WordやPowerPointが必須の職場では、ここがハードルになることも多いだろう。当然ながら、こうした要望は世界的にも一定のボリュームがある。そして、すでに解決策も登場しようとしている。

今年3月にはUS版iTunes StoreではMicrosoftから「Office for iPad」がリリースされている。これを一足先に使ってみたという内海さんは、従来の互換アプリに頼って使う環境とは「全然違います」と絶賛。早期の日本上陸に期待を寄せている。

次に登場するiOS 8では、アプリのマルチウィンドウ化に対応するのではないかという噂もある。そうなれば、これまでそれぞれの特性を活かして使い分けてきたiPadとノートPCの関係が、変わってくるかもしれない。モニターの方々の様々なiPad活用事例と、それに対する意見・要望から、「iPad+キーボード」の組み合わせによる新たな可能性が見えてきた。