連日のように夏日が続くこの時期に気をつけたいのが熱中症だ。「外にさえいなければ熱中症になる心配はない」と考えている人もいるかもしれないが、それは誤った認識。屋内で活動しているときでも、睡眠をしているときでさえも、熱中症の「魔の手」は忍び寄ってくるのだ。
熱中症による搬送者の半分は屋内にいた?
熱中症に詳しい横浜国立大学教育人間科学部の田中英登教授によると、統計的に把握されている熱中症が原因の搬送者のうち、およそ半分が屋内で熱中症になっているという。
「特に高齢者による熱中症の約8~9割が屋内で発生しています。屋内は状況によっては、熱がこもって屋外よりも気温が高くなることがあります。その段階でエアコンをつけていれば、熱中症になりにくい状況となるわけですが、『屋内だから』と安心して対策を特別にとっておらず、熱中症になるというケースが多いようです」
睡眠時の寝汗に伴う脱水が原因
屋内でも熱中症になるリスクが十分にあることはわかった。それではなぜ、特別に活動もしていない睡眠時に熱中症になるのだろうか。そのカギは、睡眠時の発汗、いわゆる「寝汗」にあるという。
「脱水状態になることが、熱中症の最も大きな原因です。人は寝ている間にも汗をかきます。睡眠時間は人によって異なりますが、6~7時間寝るとなれば、その間水分を一切摂取していないということになるので、脱水状態につながりやすいです。湿度が高い状況も脱水につながりやすいので、注意が必要です」
直接日光を浴びることのない屋内でも熱中症になる可能性はあり、それは体を休めている就寝時でも同じこと。「屋内にいるから大丈夫」と決して油断することなく、夏場は常に自分の体調に気を配るようにしよう。
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記事監修: 田中英登
横浜国立大学教育人間科学部の教授(保健体育講座)でもあり、医学博士でもある。主な研究課題は「運動時の体温調節機構に関する研究」「スポーツ活動時及び生活における熱中症予防」などで、セミナーや講演などで熱中症にまつわる正しい情報の発信にも努める。