今では家計を支える一方でマネー系の取材をするような筆者だが、お金と初めて真剣に向き合ったのが30代の頃だった。そこで今回、今振り返って「30代の時にやっておいてよかったな」と思えることを紹介したい。
自分の歩幅を知る
30代にやっておいて良かったなと思うことのひとつに、"自分の歩幅を知ったこと"がある。自分の歩幅とは、1年間のザックリとした生活費を把握することだ。結婚、出産、転職などと、30代には転機がつきもの。そんな時、自分の歩幅を把握していれば、お金のことで不安になることが少ない。
歩幅を知る第1歩は家計簿つけから。筆者は結婚して最初の10年間家計簿をつけられなかったが、「家計簿を長続きさせる秘訣4つ」でも紹介したように、相性の良い家計簿に出会って家計簿をつけられるようになった。家計簿は、集計、分析が大事。家計簿を様々な角度から分析し、総決算書を作成することで、一年を振り返る。その積み重ねが、自分らしい人生を作っていくのだと思う。
住宅ローンの知識を持つ
「1,641万1,046円」。これは筆者が住宅ローンのメンテナンスをした結果、削減できた金額である(平成26年7月末現在)。36歳の時に一目ぼれして買った中古住宅は、割高なローンしか組めなかった。その後、「繰り上げ返済」や「借り換え」といったローンの見直し技を駆使して、当初のままでいるより、ローン残高を1,641万1,046円減らした。住宅ローンは人生最大の負債。労力や時間を使って勉強した知識は、必ずモトがとれる。
保険についての知識を持つ
「約150万円」。これは筆者が保険請求をすることで得た概算額である。30代で3人の子を産んだ際、切迫流産や乳腺炎で入院をしたが、割安な医療保険に入っていたのが幸いした。また、男の子は小学生低学年まではケガが多かったので、損害保険の保険請求もこまめにした。保険に苦手意識があったとしても、自分が加入している保険の保障(補償)内容はきちんと把握しておきたい。
今度は「約220万円」。夫の加入保険の見直しをした結果、削減できた金額だ。夫が新入社員の頃に入っていた保険を見直したところ、保障内容は同じで保険料は月額1万4,000円下がった。見直しをしてからかれこれ13年たっているので、220万円ほどの保険料が浮いた計算となる。保険料は、毎月かかるいわば「固定費」。日々の細かい節約に気を配るより、一度きちんと保険料(固定費)を見直す方が、結果的に家計見直し効果は高い。
お金について相談できるプロを持つ
前述の2項目を書きながら、「そうは言っても、お金のことは敬遠されがちだよな~」と思った。そこで提案したいのは、お金のことを相談できるプロを持っておくことだ。新聞・雑誌の記事、著書などを読んで意見に共感できる人がいたらネットで検索し、その人の他の記事やホームページもチェックする。相談料の相場は面談で約1万円くらいから。
会ってみて「ちょっと違うかも」ということも当然あるだろう。その場合は他を当たってみるなど、手間やお金を惜しまないで"自分に合う人"を探すようにしよう。日本には「お金を払って優良相談を受ける」という風土があまりないが、海外ではごく当たり前のこと。前述の2項目の金額を浮かすコストと考えれば、相談料は決して高くない。また、日本FP協会が設けてみるような無料相談窓口(東京・大阪)を活用するのも手だ。
相手の収入で暮らしてみる
最後に書いておきたいのは、筆者が30代で最もためになったお金のこと。それは、子育てが大変な時期、夫の収入だけで暮らしてみたことだ。男性の場合は難しいかもしれないが、「妻の収入があることで助かる部分」に思いをめぐらせてみるだけでも十分だ。
実際、お金の力は大きい。「相手を思いやる気持ちを持とう」といった精神論より、筆者は「夫が稼いでくれるから生活できる」という「実際のお金の力」の方が、パートナーシップを学ぶのに説得力があった。共働きを続けていたら、経済力があるがゆえに「私が、私が」という気持ちを引っ込めるのは難しかったかもしれない。もちろん、お金だけが夫婦という共同生活を支える考え方ではないが、現実的な問題に向かい合う上で必要な認識・理解ではあると筆者は感じている。
※本文と写真は関係ありません
筆者プロフィール : 楢戸 ひかる(ならと ひかる)
1969年生まれ 大手商社勤務を経てフリーライターへ。中学生と小学生の男児3人を育てる主婦でもある。生活に役立つ情報を「主婦er」にて更新中。