賃貸物件の広告を見ているとたまに目にする「告知事項あり」という文言。「何を告知されるのだろうか……」と不安になりますよね。そこで、物件広告にある「告知事項あり」について、どのような事項が告知事項にあたるのかなどを含めて、“不動産・住生活”のプロに聞いてみました。
Q.物件広告に「告知事項あり」って書いてある。これって何?A.一言でいえば「具体的に広告には明示しないが、契約前に知らせる情報がある」ということです。一般的にはその部屋で自殺や殺人などが起きた場合に該当し、いわば「事前に知っていたら部屋を借りなかっただろう」と思われる事実を指します。こういった部屋を「事故物件」あるいは「心理的瑕疵(かし=キズのこと)物件」と言います。事実があれば、契約前に行われる「重要事項説明」で内容が知らされます。隠された状態で契約し、あとから事実を知ったら、契約を取り消せます。気に入った物件広告に、その文字を見つけたら早めに内容を聞いておきましょう。
部屋で自殺や殺人などが起きたら、その部屋は一定期間を置いて格安の賃料で募集されることが少なくありません。また、敷金や礼金が低かったり、家具家電が予め付いてきたり、設備が新しい物にリフォームされていたりと、住む条件が良い場合もあります。このため、最近では、あえてこのような物件を限定して探す人がいます。こういった物件だけを紹介するインターネットサイトもあります。気にならない人にとっては、オトク度の高い部屋、といえるでしょう。
UR賃貸や東京都住宅供給公社では、室内での病死も含んでおりそれぞれ「特別募集住宅」「特定物件」として一定期間、賃料半額で入居者を募集しています。興味があるなら、インターネットで検索してみましょう。
ところで、「心理的瑕疵」といっても、内容について明確な基準はありません。たとえば、「以前の借り主が救急車で病院に運ばれてそのまま亡くなった」という場合、これを「心理的瑕疵」と定義するのは難しいかもしれません。また、室内での自然死は、長期にわたり放置されていた孤独死を除き、説明されないことも少なくないでしょう。さらに、隣の部屋での病死などは借りる部屋と直接、関係がないので説明されない可能性はあるでしょう。
また、事件や事故が起きたときからどの程度時間が経っているか、ということもあります。8年7カ月前に、敷地内の駐車場で焼身自殺が起きていた説明がなかったことは「瑕疵ではない」との判例があります。「8年以上」という時間の流れが「影響はない」と結論づけられました。
加えて、事故物件であっても、一度、人が借りて入居してしまえば、次の人に説明する義務はありません。裁判では、人の出入りの激しい大都市のワンルームにおいては「2年を経過すれば次の賃借人に告知する義務はない」との判断があります。つまり、事実が明らかになったとしても、いつまで説明されるかは事例ごとに異なります。それは、地域や状況、物件によって異なり、2年~10年程度となっています。
また、場合によっては告知の内容が人の死でなく、騒音などの「環境」に関する場合などもあります。
このように見てくると、事故物件を明確に避けるというのはあまり簡単ではないかもしれません。どうしても心配な人は、新築かそれに準じるくらいの新しい部屋で、周辺相場と同等の賃料が設定された住まい探しから始めてみましょう。また、周辺環境も近隣のお店などを回ってみて、情報を収集しましょう。
高田七穂(たかだ なお):不動産・住生活ライター。住まいの選び方や管理、リフォームなどを専門に執筆。モットーは「住む側や消費者の視点」。書籍に『最高のマンションを手に入れる方法』(共著)『マンションは消費税増税前に絶対買うべし!?』(いずれもエクスナレッジ)など。「夕刊フジ」にて『住まいの処方銭』連載中
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