腸に良い食べ物と腸内環境の関係性を探る

体によい食べ物、腸に良い食べ物とは、一体何だろうか

私たちの体は、毎日の食事によって成り立っている。すなわち、体に良いとされている食べ物を摂取することによって、健康でいられる確率は高まるということだ。では、「体に良い食べ物」とは、一体どのような物があてはまるのだろうか。大腸に生息する腸内細菌が体に及ぼす効果を研究している、理化学研究所の辨野義己特別招聘研究員に話を聞いた。

善玉菌のパワー

腸内に棲(す)みついている600~1000兆個の腸内細菌は、実にさまざまな力を秘めている。腸内細菌には、乳酸菌やビフィズス菌といった「善玉菌」とウェルシュ菌などの「悪玉菌」、どちらにもなりうる可能性を秘めている「日和見菌」がある。

辨野特別招聘研究員は「善玉菌優位の腸の状態を作ることが、健康には大切」とし、この善玉菌を増やす食材こそが「体に良い食べ物」としている。

善玉菌の代表には乳酸菌がある。現在、乳酸菌と呼ばれる菌種数は見つかっているものだけで400種類以上あり、「乳酸菌」と名の付くものでその機能が特定されているのは、50菌株にも及ぶ。一方、人の腸内でも圧倒的な数を示すビフィズス菌の力が大きい。40種類ほどのビフィズス菌がおり、人の腸内に住むビフィズス菌は6~7種程度である。

例えば、「ラクトバチルス・ブレイビス・ラブレ株」は免疫力を強化する力があるとされ、「ビフィドバクテリウム・ブルーベ・ヤクルト株」は皮膚の乾燥を抑えて美しい肌に導く作用が認められており、人体にさまざまなよい効果をもたらしてくれるのが乳酸菌やビフィズス菌なのだ。

「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」

腸に良い食べ物とは、善玉菌を増やす食材のこと

これらの特異な乳酸菌・ビフィズス菌は特定保健用食品(トクホ)に含まれていることが多い。辨野特別招聘研究員は、乳酸菌・ビフィズス菌のような善玉菌を腸内で元気に保ち続けるための活動を"菌活"と名付け、その活動を推奨している。

"菌活"をする上で、知っておきたい概念が「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」だ。

「プロバイオティクスとは、生きたまま腸に届いて人体に好影響を及ぼす生きた微生物やそれらを含む食品のことを指します。代表例で言うと、乳酸菌やビフィズス菌です。一方のプレバイオティクスは、ビフィズス菌のエサになるもので、食物繊維やオリゴ糖などがあてはまります」

善玉菌が喜ぶ、体によい食材

プレバイオティクス、プロバイオティクスに該当し、辨野特別招聘研究員がお勧めする食材は以下の通り。

プロバイオティクス

ヨーグルト、乳酸菌飲料

プレバイオティクス

穀類/玄米、ひえ、あわ

いも類/さつまいも、やまいも、里いも

豆類/大豆、おから、枝豆、あずき、きなこ

野菜/かぼちゃ、にんじん、ごぼう、大根、れんこん

きのこ類/しいたけ、しめじ、えのきだけ

海藻類/ひじき、わかめ、昆布、めかぶ

果物/りんご、バナナ、ほしぶどう

辨野特別招聘研究員はヨーグルトを摂取する際に、食物繊維とオリゴ糖を含むバナナ、オリゴ糖を含むはちみつ、さらに豆乳・乳酸菌飲料などをヨーグルトとミキサーにかけて飲んでいるという。プロバイオティクスとプレバイオティクスによる相乗効果で、"菌活"を効率よく行っているというわけだ。

多くの"ミラクルパワー"を秘めている善玉菌を増やしてくれる食材を毎日摂取することで、手軽に健康的な体づくりに励んでみてはいかがだろうか。

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筆者プロフィール : 辨野 義己(べんの よしみ)

理化学研究所イノベーション推進センター辨野特別研究室特別招聘研究員。専門領域は腸内環境学。腸内細菌のDNA解析によって新しい最近を多数発見。腸内細菌と病気との関係を掘り下げて研究するとともに、ビフィズス菌や乳酸菌の健康効果をメディアなどで発信している。

著書「一生医者いらずの菌活のはじめ方
・定価: 1,320円(税別)
・発行: 株式会社マイナビ
・200ページ