「柴犬」といえば日本古来の犬種ですが、人懐っこさと豊かな表情が海外でも注目されているのだとか。アメリカ・ミシガン州で暮らす柴犬『Maru(マル)』も、ブログ「Maru in Michigan」をはじめ、海外メディアでも人気を集めています。
愛くるしい表情がたまらないマルの日常について、飼い主であり写真集『ことばはいらない ~Maru in Michigan~』、『ぼくのともだち ~Maru in Michigan~』(共に新潮社刊)の著者であるジョンソン祥子さんにうかがいました。
アメリカでは「子犬」と思われることも!
――『マル』という名前の由来を教えてください。
「マルを迎えた当時、主人が大江健三郎さんのような『丸』い眼鏡をかけていたことから名づけました。主人は大江さんのファンなんですよ」
――現在、アメリカで暮らしているとのことですが、どのようにしてマルちゃんを迎えたのですか?
「渡米から2年後、ニューヨークのマンハッタンから主人の出身地であるミシガンに引っ越すことになりました。大自然の中で犬と暮らす環境に恵まれていることもありますが、周りに日本人が少なく、友達のような存在が欲しかったことからマルを家族として迎えることにしたのです。
信頼できるブリーダーを探したところ、ミシガンからは車で往復30時間近くかかることがわかったのですが、主人と迷わず迎えに行きました」
――柴犬はアメリカでも人気ですか?
「特に都会では、アメリカでも柴は人気の犬種だったりするのですが、私たちの住んでいる地域では見かけることはありません。ミシガンの田舎では、まだ相当珍しいですね。
マルと散歩していても、『Beautiful puppy!』(きれいな子犬!)なんて声を掛けられます。皆さん、ハスキーか何かの子犬だと思っているようで……。マルはいま6歳なのですが、『もうこれ以上、大きくならないんです』というと感動されます。普通の柴のオスの平均は7~9kgといわれていますが、マルは15kgもあって、かなり大きいんですけどね」
一茶くんとマルの不思議な関係
――マルちゃんはどんな性格のコですか?
「柴犬らしく、とにかく素っ気なくて、常にしらっとしています。『撫でて』とやってきたくせに、ひと撫でするとサァっとどこかへ行ってしまって……。『お願いだから撫でさせて~』と飼い主が追いかけるのがおきまりのパターン(笑)。ベタベタされることは嫌いですね」
――普段はどんなことをして遊んでいますか?
「『ひとり遊び』が好きなマルは、ボール投げなどには興味がなく、黙々と穴掘りなんかをするのが好きです。なるべく家の中でも、長男の一茶(3歳)に見つからないといいなぁと思っているのではないでしょうか(笑)」
――一茶くんは生まれたときからマルちゃんと暮らしているそうですが、一茶くんにとってマルちゃんはどのような存在でしょうか?
「一言でいうなら『相棒』でしょうか。マルは動物でありながら、ときに『兄弟』、ときに『友達』、ときに『親』のような不思議な存在だと、子どもながらに感じていると思います。
今は『ノーッ!』と一茶がマルを叱ることなんかもあって、リードする関係に少しずつ変化していっていますね」
――では、マルちゃんにとって一茶くんは、どのような存在だと思いますか?
「マルにとっても、『相棒』だと思います。最初は突然やってきた一茶に対してショックを受けていたけれど、私達夫婦が大切にしているので、仕方なく受け入れて……。
でも、椅子の下にいるとご飯もこぼれてくるし、最近はイタズラも少なくなったし、おやつもたまに親に隠れてこっそりくれるし。まぁ、これからも一緒に暮らしてやってもいいって感じでしょうか」
――ふたりがとくに仲良しだ感じたエピソードがあれば教えてください。
「たまに一茶が保育園へ行って不在中、マルが一茶の毛布に顔を埋めて寝ていたりすることがあるんです。私や主人にも滅多に振らないシッポを、帰宅した一茶に向ってつい振ってしまったりすることもあります。マルにとっては不覚だと思うのですが(笑)。仲のよいツーショットを目にするよりも、こんなふとした場面にふたりの絆を感じますね。
また、マルを預けて旅行をすることもあるのですが、旅先で一茶が『マルに会いたい』なんて言い出すと、ホロッとしてしまいます」
ふたりの成長を見守る写真集も好評
――どんな表情もかわいいマルちゃんですが、とくに「ココがかわいい!」といった魅力を教えてください。
「普段は気ままでクールで素っ気ないくせに、実は飼い主に忠実で甘えん坊なところです。そのギャップがたまりません」
――2013年には写真集『ことばはいらない ~Maru in Michigan~』とフォトエッセイ『ぼくのともだち ~Maru in Michigan~』の2冊が刊行されましたが、ブログ読者の反応はいかがでしたか?
「本を出すことができて一番感激したのは、有名になるとかそんなことではなくて、ふたりを通して、素敵なご縁がじわじわっと広がったことですね。TwitterやFaceBookを通して感想をいただいたり、編集部宛にお手紙をいただいたり……。すごくあたたかいお声をかけていただいて、感激しました」
――おすすめのポイントや、見どころなどを教えてください。
「最初に出した『ことばはいらない』は、一茶が1~2歳の頃のマルとの関係を写真のみで紹介しました。それから約半年後に出した『ぼくのともだち』は、それよりさかのぼる形で、一茶が0~1歳の頃の関係を文章と共に描いています。
共に仲のよいツーショットも満載ですが、決してマルは根っからの子ども好きでも、シッポフリフリのハッピー犬でもないということを念頭に置きながら読んでいただくと、マルの内にある優しさが伝わるかなぁと思います。
じつは現在、その後のふたりを描いた、3冊目の本を執筆中です。10月に新潮社より発売予定ですので、楽しみにしていただけたらうれしいです」
――最後に、マルちゃんと一緒にいて幸せだと感じる瞬間を教えてください。
「ありきたりな答えですが、『常に』ですね。それぞれ思い思いのことをしながら一緒の空間で過ごしているときも、散歩しながらプリッとしたお尻を眺めているときも、一緒のベッドで横になって足が柔らかい毛に触れたときも、全ての瞬間が愛おしいです。
将来、マルと一緒に過ごしている『今の自分』を必ずうらやましくなるときがくると思うんです。だから他愛ないどんな瞬間にも『幸せ』を感じます。こんな風に感じられるのは、写真を撮っているお陰かもしれませんね」
『ことばはいらない ~Maru in Michigan~』 |
■ジョンソン祥子
アメリカ人男性との国際結婚を機に渡米。在米9年目。現在は夫と息子の一茶君、柴犬のマルとともに、アメリカ・ミシガン州に暮らす。2008年からブログ「Maru in Michigan」で写真を公開。日本のみならず、海外の雑誌でも取り上げられるなど、カリスマ的な人気を誇る。2013年5月にブログを元にした初の写真集『ことばはいらない ~Maru in Michigan~』を刊行。同年10月に刊行されたフォトエッセイ『ぼくのともだち ~Maru in Michigan~』とともに、写真集としては異例のヒットを記録し、注目を集める。
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