Q:なるほど。ちょっとここで、次の質問の前に確認させてください。これは以前、西島さんのずっと前の時代にお伺いしたのですが、当時ですとARM Japanは単にCost Centerというお話でした。ライセンス契約などは全部本国のARMと直接という形になるので、日本はSalesとかSupportといった業務のみ行うという事だったと記憶しているのですが、これは変わっておられませんか?

A:その通りで、そこは変わっていません。

Q:ではその上でお伺いしたいのですが、そうは言っても日本の自動車メーカーに参入出来ない事はARM Japanの責任範囲という事でよろしいんでしょうか?

A:その通りです。今まで参入できなかった事もそうですし、これからも入れなかったら私の責任です(笑)。

Q:そのあたりはいかがお考えですか?

A:入れないとまずいですね。ただ、ぼーっとしていたわけではなくて、この5年間で飛躍的に受け入れられつつあると思っています。つまり私が入社した2008年ですが、どこに伺っても「Naviはいいけど他はARMには絶対牙城は譲らない」と、OEMメーカーもTier 1メーカーも仰ってたんですが、最近はそうも言えなくなっておられるな、と感じています。

Q:2009年でしたか、まだ日本のTier 1の中にも「Cortex-Mと比べて弊社のコアはこんなに良い」とか発表をしているところがあったと記憶しています。

A:仰る通りなんですが、もう(開発のトップの)人の世代が変わったということもありますが、それよりも世情、国際競争力が重要だという方向になってますね。またEV、PHEVなどを中心にエレクトロニクス化が進んでますよね。あともう1つ、震災の影響もありますね。マルチソースの方がいいんじゃないの、という考えです。

Q:そのマルチソースのおかげでPowerが選択される事になりました。しかもPowerはFreescaleだけでなくSTMicroelectoronicsもやられてるので、ちゃんとマルチソースになっている。

A:そうですね。ただARMの場合はもう少し、半導体ベンダの数が多いわけですから、Powerよりも、よりマルチソース化が図りやすいかと思っています

Q:ただ自動車メーカーに直接納入できる半導体メーカーの数は限られる訳で、要するにTier 1と付き合えるだけの体力のあるメーカーのみになります。なので、海外でもTI、Freescale、ST、Infineonといったメーカーになるし、国内では現実問題としてルネサスしかない。ですから、こうしたメーカーに採用してもらえないと入れない訳ですよね?

A:(採用してもらえないと)駄目ですね。内部コアをお持ちのところも含めてですが、しょうがないからARM、というトレンドは起きつつあると思ってますね。

Q:見ていると、自動車が一番遅いのかなという気はします。Networkの分野は、2012~2013年に雪崩を打ってARMに切り替わってきました。が、自動車はそうでもないですよね。

A:これは正直、単に遅いといわれるのも、私も同感なんですけれど、設計サイクルが長いですからね。ですから、今日の時点で使おうと決めても、もう2020年モデルには間に合わない訳です。要するにそういう事だと思っていますので、設計、つまりDesign Winでいいますと、今はもう結構…

Q:先ほど2020年のプラットフォームと仰いましたが、現実問題としてはその2020年に向けてのDesign Winが取れるかどうかはちょっと微妙なところで、そのちょっと後位をターゲットにしておられると?

A:そうですね。2022年とかになると思うのですが、そのあたりにはARMが入っていけるかという確信が出てきつつあるところです。