Q:ではそのHEMSも含めたIoT周りはどうお考えですか?

A:IoTのマイコンは当たり前ですが、マイコンだけじゃ足らないですよね。1つ最近買収したのがフィンランドのSensinode Oyという会社なんですが、Ultra Low PowerのPANの技術を持っている会社です。PANのエリアはマイコンと密につながります。ただこれはあくまでも氷山の一角で、まだまだ他にも必要なテクノロジーを自社で持つべきところは持とうとしています。これは投資も含めてですが、無線系がメインです。これが無しと話にならない。Low Data RateのUltra Low Power、ボタン電池で10年動く無線の載ったIoTに使われるテクノロジーを揃えて行こう、と思っています。

Q:ただ、実は今のCortex-M0+ですらOverspecという話はありませんか?

A:仰るとおりです。

Q:ただ、ARM本国の方にも何度かお話聞いた事があるのですが、「Cortex-M0+の下は考えていない」と仰ってました。

A:そのためにウチはProtocol Stackなどもそっちに載せる事で、Overspecにならないようには出来ると思っています。

Q:競合製品ということで申し上げればAtmelのATtiny、あるいはMicrochipのPIC10/12。Sensor NetworkのEnd Nodeというのはあのクラスのマイコンで足りる訳ですよね? 4~8pinで動作周波数は数MHz。でもその上で6LowPanとかが動く訳ですから、そう考えるとCortex-M0+は凄くOverspecなんじゃないか、と。今、IoTそのものがBuzzwordになりつつありますが、IoTは数は出る代わりに、コストは思いきり下げないといけません。ARMのQ3のResultに出てきた数字で申し上げると、ロイヤリティの平均価格が確か4.9cent(Photo05)とされています。ところがIoTの時代には、マイコンの一番下の製品の価格が10centとかになります。

Photo05:ARMの1チップあたりのロイヤリティの平均価格

A:単価がですよね。そこからどうやって5centとるのか、と思われますよね。実は、まったく違うビジネスモデルを提供しております。今もすでにやっています。具体的な事はあまり申し上げにくいのですが、10円とは言わないにしてももう少し高い金額の製品に、すでにCortex-M0+は使っていただいています。

Q:もう確かFreescaleが1ドルを切ったCortex-M0+製品を発表されてますよね(*4)。

*4:最安値という意味では、NXPのLPC800は1個39centからとなっている

A:そういうわけです。ということで、そのあたりについては何となく判っていただけるんじゃないかと思います。ウチも、下げるべきところはちゃんと下げている訳です。

Q:なるほど。ただ、Cortex-M0+はそれでも32bitコアで、これはThumb-2を動かす以上は必要なのですが、それより下はIoTの時代には無いのでしょうか?

A:今のところは無い、と申し上げさせてください。ARMとしては、(32bitの)必然性があるようにして行こう、という考えがあって、先ほどのProtocol Stackは当たり前で、SDR(Software Defined Radio)の処理もプロセッサで出来ない事ではないですし、そういうことで上手く廻していければという考えです。

Q:SDRが出来る事は判ってますし、やられているところも知っていますが、普通にRF入れた方が安くないですか?

A:そうなんですよ。あと電力ですね。私もそこは、どう工夫するのか判りませんが、会社としてはそう言ってます。ただ日本は特にものづくりがうまいので、普通に考えたらデバイスがあった方が良いのではないかという気はします。その方が冗長度が少ないわけですから、電力効率も良いわけです。専用ハードウェアに勝るものはないですから。

Q:もちろん世界中で使われる携帯電話のモデムが、世界中に対応するために、というのは判るんです。

A:アレはダイが大きいものですし、値段も高いですから。ただ数十円のIoTデバイスには、もっと特化したほうが良いと、技術的には思います。向き不向きはありますから、あくまでも、ウチでも無いIoTは一杯あると思います。ただ、今までよりは16bitコントローラのマーケットにも入って行けますよ、というのがARMとしてのメッセージです。

Q:8/16bitのHigh Performance系はすでにCortex-M0+で完全に互角かな、と思います。問題は、8/16bitのLow Power系をどう攻略されて行くかですね。

A:その通りです。かつ、IoT系でそこが一番問題ですから、本当にボタン電池で10年動くようにはどうしますか?、と。一応出来る方向で考えておりますが、そこで「Cortex-M0+で?」と聞かれると今のところは「そうです」と答えざるを得ない状況なのは確かです。