前回のレポートでも述べたように、乳製品を中心とした"ソフトコモディティ"の輸出で確実な経済成長を遂げるニュージーランド。しかし、輸出だけに頼っていては、相手国が不景気に陥ると、大きな影響を受けてしまう。ニュージーランド経済の強さは、輸出だけでなく、足元の国内景気も堅調という点だ。
スポーツツーリズム、アドベンチャーツーリズムで、観光客は5倍に!
皆さんがご存知のように、ニュージーランドは観光地としても魅力的である。国土の3分の1が国立公園や自然保護区に指定されており、世界でも類を見ない自然風土が大切に保護されている。3カ所の世界遺産指定地域もあり、活火山やフィヨルド、氷河などの美しい自然の風景や、キウイなどをはじめとする珍しい動物の生息地としても有名だ。
観光立国を目指して、これらの地域には無数の遊歩道が整備されており、壮大な景色を眺めながらトレッキングやハイキングを楽しむことができる。スポーツツーリズム、アドベンチャーツーリズムの誘致が功を奏し、海外観光客数は1980年に50万人だったものが、2013年には約270万人まで増えている。この結果、2013年の観光収入は100億NZドルと乳製品輸出に匹敵する額にまでなっている。堅調な内需を支える大きな柱として、観光収入を拡大させてきたというわけだ。
震災復興費はGDPの20%、内需を支える原動力に
また、ニュージーランドは2011年2月に南島中央部クライストチャーチ近郊で大地震が発生。特に被害が大きかったクライストチャーチ中心部はレッドゾーンと呼ばれ、立ち入り禁止区域があったほどだった。地震から3年が経ち、現在、急ピッチで復興事業が国をあげて行われている。その規模は年間3.5兆円。GDPの20%にあたる大きなプロジェクトで、復興には今後10年を要するといわれている。この復興需要も内需を支えるひとつの原動力となっている。
地震で多くの歴史的建造物が被害を受けたが、中でも、そのシンボル的存在のクライストチャーチ大聖堂は、その再建に長い時間がかかると言われている。そのため、仮聖堂が建てられているが、建材には防水加工された特殊な紙が使われており、新名所として人気を博している。クライストチャーチ地震からの復興が、ニュージーランド経済復活とはからずも同調しているわけだ。
先進国でありながら継続的に人口増加、積極的な移民受け入れ政策が奏功
経済復活が著しいニュージーランドだが、先進国でありながら、継続的な人口増加が見込まれているのも強みのひとつ。というのも、政府が積極的に移民を受け入れており、働き盛りの人口の割合も、総人口の60%を超える水準が続くと予想されている。こうした人口増加は個人消費の増加や住宅に対する高い需要にも通じ、堅調な個人消費につながると期待されている。
ニュージーランドは、エネルギー資源に恵まれているわけではない。日本のように、エネルギー面での輸入が多いと思いきや、実は電力供給の約7割を水力や地熱発電などの再生可能エネルギーで賄っている。石油や天然ガスなどの化石燃料をほとんど有していないが、化石燃料の消費を抑制した社会を実現するという政府の政策により、再生可能エネルギー先進国となっているのだ。
政府によって、貿易拡大、観光振興、復興需要、再生可能エネルギーの推進が政策的に推し進められ、人口の増加もあり、確実な成長を遂げるニュージーランド。投資対象としても注目してみたいところだ。
魅力的な金利水準、景気好調で上昇する為替推移と投資条件も揃う
実際、経済好調な同国は、金融緩和が続く先進国のなかで、いち早く政策金利の引き上げを行ったことで注目されている。ニュージーランド準備銀行(中央銀行)は、2014年3月13日に3年8カ月ぶりに2.5%だった政策金利を0.25%引き上げて2.75%に。その後、5月、6月と引き上げが実施され、7月24日には4回目の引き上げにより政策金利は3.5%まで上がっている(グラフ1)。結果、ニュージーランド国債の利回りも上昇傾向にあり、他の先進国と比較して相対的に高く、魅力的な水準となっている。
また、ニュージーランドは主要先進国の中でも、政府債務や財政赤字の水準が相対的に低く、財政の健全性が高い点も魅力だ(グラフ2)。大手格付け会社であるムーディーズにより、Aaaの信用格付(自国通貨建て長期債務)を付与されており、国際的にみても高い信用力を有しているといえる。
そして、もっとも注目なのが、ニュージーランドドルの為替動向だ。足元では下げているが、今後も底堅い成長が続くと見込まれていることから、中長期的には、対円でニュージーランドドル高が期待されている(グラフ3)。
堅調な経済成長、魅力的な金利水準、上昇傾向の通貨と、まさに、投資対象としての条件が揃っているニュージンランド。外貨MMFや外貨預金など為替に投資する術はあるが、先ほどの好条件を踏まえると、投資対象として注目されるのが債券だ。
そこで注目したいのが、『ニュージーランド公社債ファンド』(毎月分配型・愛称ニュージーボンド)(販売会社:三井住友信託銀行、設定・運用:日興アセットマネジメント)。主としてニュージーランドドル建ての公社債に投資を行い、インカム収益の確保と信託財産の成長の両方をめざしていくというもの。
2回にわたり紹介したニュージーランドの魅力。日本と同じ島国でありながら、戦略的な政策でいち早く金融緩和から脱し、さらなる成長を目指す同国から目が離せない。
<著者プロフィール>
酒井 富士子
経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長歴任後、リクルート入社。『あるじゃん』『赤すぐ』(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に『0円からはじめるつもり貯金』『20代からはじめるお金をふやす100の常識』『職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術』『ハローワーク 3倍まる得活用術』『J-REIT金メダル投資術』(秀和システム)など。