賃貸住宅ではエアコンが備え付けられていることが多いですが、このエアコンがもしある日突然故障してしまったら?
賃借人はどんな対応をすればよいのでしょうか。
そもそも修理負担は誰がするものなのでしょう。
“不動産・住生活”のプロに聞いてみました。
Q.入居してすぐ、備え付けのエアコンが壊れた!自分で取り換えないといけないの?A.特に暑い時期にエアコンが壊れると大変ですね。あなたが壊したなどの問題がなければ、設置されていたエアコンの取り換え費用は、大家さんが負担します。まずすぐに大家さんや管理会社に連絡しましょう。
もともと室内に設置されていた設備が入居中に壊れた場合、どちらが費用を負担するかについては、契約書に明示されています。契約書を確認する際は、こんなところを中心に見てみましょう。
通常、借りている間の修繕費用については、借り手に「故意や過失がなければ」貸し手が負担することになっています。例えば、給排水管から漏水し、下の階が水びたしになった場合でも、給水管の劣化が原因ならば、大家さんの負担になります。しかし、「洗濯機の蛇口を閉め忘れたままホースが外れてしまい、床や下の階が水びたしになった」などはあなたの過失です。給水管が古いという原因ではないので、あなたの負担になります。
ただし、電球の取り換えなど小さな修繕は、借り手が自分の費用で行うのが一般的です。詳しい項目などについては、国土交通省が2012年2月に改訂版を発表した「賃貸住宅標準契約書」(契約書のサンプル例=ひな型)では、以下のように示されています。
■国土交通省「賃貸住宅標準契約書」(改訂版 2012年2月)
(契約期間中の修繕)
第9条 甲は、乙が本物件を使用するために必要な修繕を行わなければならない。この場合において、乙の故意又は過失により必要となった修繕に要する費用は、乙が負担しなければならない。
2 前項の規定に基づき甲が修繕を行う場合は、甲は、あらかじめ、その旨を乙に通知しなければならない。この場合において、乙は、正当な理由がある場合を除き、当該修繕の実施を拒否することができない。
3 乙は、甲の承諾を得ることなく、別表第4に掲げる修繕を自らの負担において行うことができる。
別表第4(第9条第3項関係)
畳表の取替え、裏返し
ヒューズの取替え
障子紙の張替え
給水栓の取替え
ふすま紙の張替え
排水栓の取替え
電球、蛍光灯、LED照明の取替え
その他費用が軽微な修繕
※「甲」は貸主、「乙」は借主。
先にご紹介した「賃貸住宅標準契約書」では、小規模な修繕だけを借り手が行うことになっています。また、一般的には、日常生活を送る中で自然につく傷や汚れ、経年劣化は借り手の負担ではありません。
ところで、2020年4月1日に、民法改正法が施行されます。賃貸借にまつわる内容も変わります。これに伴い、国土交通省では2018年3月、「賃貸住宅標準契約書」改定し、改正される民法に合致したものを公表しました。それによると、大家さんに通知したにも関わらず、正当な理由がないまま修繕されないときにはあなたが修繕できることが明記されています。費用については、あなたに責任があればあなたの負担になりますが、その他のものは大家さんの負担です。
高田七穂(たかだ なお):不動産・住生活ライター。住まいの選び方や管理、リフォームなどを専門に執筆。モットーは「住む側や消費者の視点」。書籍に『最高のマンションを手に入れる方法』(共著)『マンションは消費税増税前に絶対買うべし!?』(いずれもエクスナレッジ)など。「夕刊フジ」にて『住まいの処方銭』連載中
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