第3話の視聴率が20.5%を記録するなど、依然注目を集めているドラマ『HERO』(毎週月曜21:00~)。第4話の目玉は、第1シリーズのメンバー・美鈴検事(大塚寧々)の再登場であり、オープニングでいきなり後ろ姿を映して期待感をあおっていた。

現在は「京都地検の女」である美鈴に、制作サイドが与えた役割は、"城西支部のメンバーを打ちのめす"こと。東大卒のエリート宇野検事(濱田岳)には、「(被疑者を落とすには)いろいろな手があるのよ。だてに十何年も検事やってませんから」とスキルの差を見せつけ、馬場礼子検事(吉田羊)に想いを寄せていたはずの末次事務官(小日向文世)には、「美鈴とどっちを選べばいいんだ……」と迷わせたあげくに振り、さらに、独身アラフォー同士のはずだった馬場検事には、呉服屋次男との"玉の輿婚"宣言。いずれも貫録を見せつけての圧勝で、牛丸次席(角野卓造)が「美鈴くんが仕事ができるって印象は全然なかったけどなあ……」と思わず微笑むほどの華麗な凱旋となった。

初回放送では江上検事(勝村政信)が登場していたが、次に登場するのは、検事になった雨宮(松たか子)か、芝山(阿部寛)か、それとも久利生と司法修習同期の敏腕弁護士・巽(飯島直子)か。雨宮なら久利生との恋、芝山ならヤメ検弁護士になっているか、巽なら久利生の過去など、いずれにしても盛り上がりそうだ。

「そばにいてやっから」以来の雄姿再び

北川景子演じる麻木、早くも久利生公平に恋心か?

目玉が美鈴の再登場である一方、物語のメインテーマは、"検察の仕事と昔の仲間"。地元・木更津でヤンキーだったころの仲間が逮捕されたことで、事務官・麻木(北川景子)の過去が徐々に明らかになっていく。「よく仲間のバイクに乗せてもらっていた」「元カレのマサルが実家の八百屋を継いだ」などのエピソードを聞いた久利生は、「やっぱりお前、ヤンキーだったのか」「キミはヤンキーモンキーベイベー♪」とからかいまくっていたが、これはクライマックスを輝かせるための周到な前振りだ。

その後、久利生は元仲間から襲撃を受けた麻木を救出し、「一人じゃ帰れねえだろ。送っていくわ。お前こんな目に合わせたのオレの責任だし」と優しい言葉をかける。さらに、終盤では元仲間から「調子こいてんじゃねえぞ」とキレられた麻木をかばって、「まともに生きてねえやつが、まともに生きているやつ非難するのおかしいだろ!」「一番まいっちゃってんのは麻木の方なんだよ。昔の仲間が犯罪者になってこんなところに来るなんて思ってなかったんだから。仲間裏切ったのはお前の方じゃねえか!」と怒りをぶつけた。

「久利生がヒロインを守る」シーンで思い出されるのは、前シリーズ第9話。過去の発言を逆恨みされ命を狙われる雨宮を守り、「オレがそばにいてやっから」という名セリフが飛び出したファン人気の高いエピソードだ。

前回は第9話と終盤だったが、今回は第4話とまだ序盤。襲撃を受けた麻木は、久利生が痛がるくらいギュッとしがみついていたが、これは恋心の前兆か。その他にも何回か黙って久利生に視線を送るシーンが見られた。そして、久利生が過去最大といえるボリュームで怒鳴り散らしたのは、単に検察の仕事や社会の秩序を守るためだったのか。もし麻木へのかすかな恋心が芽生えているのなら、今後が楽しみだ。

いじられまくる「八王子の神童」

宇野検事を演じる濱田岳

これまでの4話を通して、前シリーズとの比較で最も目につくのが、各キャラクターのさらなるコメディアン化。検事として活躍するシーンよりも、圧倒的にいじられるシーンの方が多く、第4話でも爆笑シーンが目白押しだった。

なかでも、久利生&麻木の影に隠れたもう一人の主役は、エリート検事・宇野(濱田岳)だった。自分が手に負えなかった被疑者を美鈴があっさり落としたことですっかり自信喪失。「僕は現役で東大に入って、司法試験も一発で合格したんです。なのに、何でバブル時代にいっぱい遊んだような人に負けちゃうかな」「(久利生に向かって)中卒で検事になれるなんて……じゃあ僕はいったい何なんだ! 麻木さんがヤンキーだったなんて……ヤンキーとつき合ってたなんて……僕はいったいどう変わったらいいんですか!!」と壊れまくった。

そして、かつては「八王子の神童」と言われた宇野が、ラストでまさかの久利生ファッションに。「僕も今日からジーパンで仕事することにしました。別に久利生さんのマネをしているわけではありませんよ。僕の中にある不良なオレがいるっていうか、ヤンキーのオレがいるっていうか」と迷走。しかも"シャツイン"をツッコまれてしまう。すぐに川尻部長(松重豊)から「着替えてこーい!」と叱られ、ダッシュで帰宅。最近は『軍師官兵衛』の善助役など演技派としてのカッコイイ役が増えたが、このトホホ感こそ濱田岳の真骨頂だ。

メンバーへのキャラいじりは、回を追うごとに徹底化する一方。次回は川尻部長がクローズアップされる予定だが、コワモテをベースにした顔面演技や、キレ&クヨクヨキャラを最大限に生かした演出が見られるだろう。

久利生の名言、通販、「あるよ」は?

今回も最後に、"久利生の名言"と"通販グッズ&「あるよ」"をおさらいしておこう。

久利生の名言は、被疑者に向かって発したこのセリフ。「それダメですよ! 冤罪って言葉だけは簡単に使わないでください。ウチらもそこだけはすんげえ気をつけてやってるんで」「もし夕べ、麻木がケガでもしてたら、こんなもんじゃ済まなかったですからね」。

通販グッズは、浅草にある老舗菓子店の柿の種1袋600円(段ボールには「カキノコ」の文字)。あとは、久利生が部屋でエキスパンダー型のゴム式健康用具を使っていた。また、美鈴と宇野が担当していた健康器具詐欺は、「スーパーコリンドル」という磁気ネックレスで販売価格は16万8千円。一方、マスター(田中要次)の「あるよ」は、バーに置き忘れた麻木の携帯電話だった。前回の涙をふくハンカチなど、新シリーズでのマスターは、ちょっと粋な路線で勝負している。

第4話の視聴率は18.7%と20%の大台を割ったが、この程度の上下動は織り込み済だろう。8月に入ってついに久利生の服がアロハシャツになったが、『HERO』の持つ世界観を大事にするマイペースな姿勢は全く変わっていない。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。