「直線」の描画を実現した「Adobe Line」
製図アプリ「Adobe Line」の特徴は、これまでiPad上では難しかった「正確な直線」の描画に対応している点。アプリデジタル定規「Adobe Slide」を使用することで、よりリアルな製図を実現するという。先ほどの「Adobe Sketch」と同様デジタルペン「Adobe Ink」を使って描画できるほか、さまざまなジャンルのシェイプを収録したスタンプパック、パースの効いた製図を支援する遠近グリッド、Adobe Sketchと同様のジェスチャーによるアンドゥ/リドゥ、Adobe Inkに備わる拡張ボタンから呼び出せる「ペンメニュー」(ペンや定規の切り替え、カラーパレットやスタンプを呼び出し)など、製図向けの描画に適した機能を備えていると説明した。
「Adobe Slide」は直線のみならず、四角形や三角形、正円を描くことも可能。定規を円に切り替えてiPadを適当になぞるだけで円を描ける |
このようなパースの効いた描画を得意とする |
さまざまなジャンルのシェイプを収録したスタンプパックが用意され、さまざまなジャンルの図形をスピーディーに挿入できる |
また、アプリを起動させ「Adobe Slide」をiPad上に乗せると、画面上に直線のガイドが表示される。そのガイドをデジタルペンや手でなぞることで、正確な直線を引いたり、線と線をつないだり、といった作業が可能。加えて、「Adobe Slide」本体のボタンを押すことで、定規の種類を円や四角形、三角形に切り替えられる。ここでは、定規を円に切り替えたのち、iPad上の余白をなぞるだけで正円が描けるところなどを見せてくれた。
ちなみに、同アプリは必ずしもAdobe Slideが必須というものではなく、ソフトウェア上で定規としての機能を提供する「タッチスライド」が搭載されており、指だけを使って同様の操作を行うこともできる。仲尾氏は、これによって、移動中の車内などデバイスを用いてじっくり描くことができない場面でも、指を使っての製図が可能となるなど、利用シーンに応じた使い分けを勧めていた。
Photoshopの最新機能をiPadで利用できる「Adobe Photoshop Mix」
最後に紹介するのは、写真レタッチソフト「Adobe Photoshop Mix」。同アプリは「Adobe Ink & Slide」と併用して使うものではないが、前述したふたつのアプリとともに新規リリースされたiPad用アプリだ。iPad内のカメラロールから写真を読み込めるだけでなく、Creative Cloudストレージ内に保存されている写真やPhotoshopファイル、iPadおよびiPhone向けアプリ「Lightroom mobile」のコレクション、さらにはFacebook上に公開した写真にもアクセスできる。
これらの写真に対し、基本的な調整のほかに、明るく、鮮明、トワイライト、インスタント、スウィート、暖色、ビンテージなどさまざまなプリセットを使ったInstagram的なエフェクト追加、自動選択機能を利用した部分的なモノクロ化などのほか、ユニークな機能として、デスクトップ版のPhotoshopやLightroomが備えるいくつかのパワフルな機能を、Creative Cloud経由で利用できることを挙げ、Photoshop上で用いることができる「コンテンツに応じた塗りつぶし」機能を、同アプリ上で実演した。これらの機能は、今秋より提供される予定の「Creative SDK」を利用してアプリ開発者が自分のアプリに組み込むことが可能になる。
クリエイターたちへの「提案」としてのハード開発
最後に仲尾氏は、今回、アドビが初のハードウェア「Adobe Ink & Slide」に取り組んだのは、決して「ハードウェア製品の販売による利益の拡大」に主眼があるのではなく、多くのクリエイターが今も手描きで行っているラフや下絵など基礎的なワークフローを、スマートに本番のデザインへとつなげるための提案として生まれたものだと開発の意図を強調した。そして、「その回答となるのが、iPadとアプリ、そしてInk & Slideで構成されるソリューションというわけです」と締めくくった。
同社がクリエイターへの"提案"として生み出した新デバイス「Adobe Ink & Slide」が「日本上陸」するのはまだ少し先のことになりそうだが、アプリはどれも無料でダウンロードすることが可能となっているため、気になる人はダウンロードし、多くの新機能を実際に体感してみてほしい。