ダイキン工業は、同社の社会的責任に関する活動をまとめた「CSR報告書2014」をこのほど発行。報道関係者を対象に、その取り組みについて説明を行った。
ダイキン工業では、環境への取り組みとして、2011年度から「5ヵ年環境行動計画」を実行。2008年からは、森林再生・保全活動を世界7カ国へ広げる「"空気をはぐくむ森"プロジェクト」を展開している。
今回発行した「CSR報告書2014」は、地球環境保全への貢献や人材育成をテーマに特集を掲載している点が特徴だ。次世代冷媒であるR32のほか、ダイバーシティマネジメントの一環として取り組んでいる女性の活躍推進、森を地球のエアコンとして捉えた「住民と森林との持続可能な共生を支援」といった内容も紹介している。
同報告書によると、2015年度を最終年度とした「5ヵ年環境行動計画」への取り組みでは、2013年度の実績として、新興国のCO2排出量を2300万トン抑制。2012年度の1800万トンの抑制実績から進展するとともに、2015年度の3000万トン抑制の目標に向けて進捗していることを示した。また、生産時の温室効果ガス排出量を、2005年度比で69%を削減。2015年度目標の67%削減を上回る実績になっているという。
「環境パフォーマンスデータは信頼性確保のため、ビューローベリタスジャパンによる第三者検証を受けている」(ダイキン工業 CSR・地球環境センター担当部長の三品孝氏)という。
また、温暖化係数が従来の冷媒の約3分の1となる低温暖化冷媒「R32」を採用したルームエアコンを世界展開していることにも言及した。
ダイキン工業 CSR・地球環境センター担当課長の山中美紀氏は、「冷媒はエアコンの中の血液ともいえるもので、これを入れ替えるのは力を伴う仕事になる。だが、冷媒が環境に大きな影響を与えると見られており、エアコンメーカーにとっては避けては通れない課題となっている。新興国で使われているHCFC(R22)にはオゾン層を破壊する物資が含まれており、先進国で利用されているHFC(R410A)も、地球温暖化係数が高いという問題がある。より環境に配慮し、経済的にもバランスが取れた冷媒へとシフトしていく必要がある。我々が様々な試行錯誤の結果、行き着いたのがR32冷媒である」とし、「R32冷媒は、オゾン層破壊係数がゼロであり、優れた省エネ性を持ち、地球温暖化への影響も低い。懸念されるのはわずかな燃焼性があることだが、これも安全面での検証が完了している」と説明した。
同社の試算によると、新興国における冷媒がすべてR32に転換された場合、2050年の温暖化影響は46%も抑制できるという。同社は2012年11月から、世界初のR32を使用したルームエアコンを日本で発売。安全性や省エネ性を確認しており、すでに日本向けの全機種でR32冷媒への転換を図っている。また、世界30カ国で、R32冷媒を搭載したルームエアコンを展開。昨年11月には世界で初めて業務用ルームエアコンにもR32冷媒を搭載した。
また同社では、新興国市場における普及に向けて、R32冷媒を搭載したエアコンを商品化するために必要な基本特許を、新興国で製造する場合に限定して無償で提供。また、国際会議などを通じた情報提供や、政府の代表団を製造工場に招くといった技術情報の提供活動を行っている。
「さらに微燃性冷媒を正しく取り扱うための知識の習得支援、修理・点検などのサービスに関するネットワークの構築といったインフラ整備にも取り組んでいく」として、インドでは、すでにエアコンのサービスマンを対象にした教育を実施。12都市76回のセミナーを通じて、3600人の技術者を育成した。
一方、「"空気をはぐくむ森"プロジェクト」については、ダイキン工業 CSR・地球環境センターの中川智子氏が説明。「森林を持続的に保全するための植林だけでなく、環境知識の向上や生活基盤の確率などの総合的な支援を全世界7カ所で実施。NPOとの協力によってプロジェクトを推進している」と報告した。
ブラジル、中国、インド、リベリア、カンボジア、インドネシアのほか、日本では知床で実施。合計で約1100万ヘクタールの森林保全により、700万トン以上のCO2排出量削減に貢献しているという。これは2014年6月から2024年5月までの10年間に渡る支援であり、約5億円を支援するという。