インドネシア・スマトラ島の熱帯雨林に、7年に1度しか咲かない世界最大の花・ショクダイオオコンニャクが生育している。動物エンターテイメントチャンネル「アニマルプラネット」では、31日(7:00~)の番組『植物の王国』(再放送28日~31日7:00~8:00)で、幻の花の撮影秘話が明かされる。

7年に1度しか咲かないショクダイオオコンニャク

23日から全4話にわたって放送されている夏休み特集「植物の王国」。番組に登場するキュー王立植物園はロンドン郊外にある世界遺産で、世界中の植物種のおよそ90%が集められている。ここの植物を最新鋭のカメラで撮影。肉眼では見ることのできないほどの極小の世界や未知の世界をのぞくことができる。

ショクダイオオコンニャクはつい最近まで謎とされていた植物。外見は木のように見えるが1枚の巨大な葉で、地上に出た緑色の部分は1週間ほどで枯れ落ちてしまう。しかし、地中に残る巨大な茎から世界最大の花を咲かせるつぼみが1カ月以上をかけて顔を出す。高さは3メートル近くにもなり、その一大イベントは7年に1度。つぼみは日ごとに大きくなり、肉穂花序(にくすいかじょ)と呼ばれる太い花の穂が姿を現す。

この花の役割は、"花粉の運び屋"をおびき寄せること。熱感知カメラで撮影すると、穂の部分が最も高温になっていることが分かり、その温度は哺乳類の体温とほぼ同じ37度。やがて、花の中では糸状の花粉が数多く作り出される。花から発せられる熱と腐った肉のようなにおいで、命を落としたばかりの動物の体を模倣。花粉を運ぶコハナバチやシデムシなどを迎え入れる。

キュー王立植物園

熱帯雨林では、夜になると冷たい空気の層が地面を覆う。ところが、ショクダイオオコンニャクの花が発する熱はその層を突き抜け、森のはるか遠くまでにおいを運ぶ。こうして広範囲から昆虫たちをおびき寄せるが、この花の寿命はわずか2日しかもたない。

7年の中のわずか2日を逃さないためにはどのような工夫があったのか。31日の放送ではその舞台裏とスタッフの苦労話が明かされる。研究も進み、最近ではある程度「開花予想」ができるようになったショクダイオオコンニャク。しかし、その誤差は6カ月。開花には約4時間を要し、咲いている期間は最長でも2日。そのチャンスを逃すと次は7年後になるため、地中からつぼみが現れると現場には緊張が走る。

花が咲くのは夜。スタッフは、深夜まで待って咲かない場合は帰宅し、翌日戻って来るという生活をひたすら繰り返した。そのような苦労があって、ようやく撮影された今回の映像。今までは一部の限られた植物学者しか、その光景を目にすることができなかったという。運を天に任せて撮影に臨んだというスタッフ・ホリングワース氏は「ひたすらその瞬間を待つのです」と振り返り、「番組の制作中に咲く保証はなかったのでラッキーでした」と安堵の表情を浮かべた。

そのほか同シリーズでは、動物と植物のコミュニケーション(24日)や種の保存のために自ら燃える植物(25日17:00~)、最新撮影技術の裏側やコウモリやカメの撮影方法(31日)など、さまざまな貴重映像が放送される。

まるで木のような1枚の葉

1カ月以上かけて地中から姿を現すつぼみ

開花には4時間を要する

糸状の花粉が生成され、昆虫をおびき寄せる熱とにおいは煙のように上空へと立ち昇る