レスキュー隊に入隊したダスティが、仲間と共に命がけの救出に挑むアクション・アドベンチャー『プレーンズ2』が7月19日に公開を迎えた。前作では、主人公ダスティが世界一周レースに出場しチャンピオンを目指す姿を描いたが、本作では、ダスティは故障を抱えてレースに出られなくなり、故郷の町に必要な消防飛行機となるべく、レスキュー隊に入隊する。
本作の製作において、実世界にも通じる"第二の人生"というテーマにどのようにしてたどり着いたのか。そして、実写かと思うほどリアルな映像は、どうやって作られたのか。ボブス・ガナウェイ監督とフェレル・バロンプロデューサーにインタビューした。
ボブス・ガナウェイ監督(右):1965年6月26日生まれ。アメリカ出身。テレビシリーズ『ライオン・キングのティモンとプンバァ』でアニー賞監督賞にノミネート フェレル・バロンプロデューサー(左):1970年5月30日生まれ。アメリカ出身。『くまのぷーさん/完全保存版II ピグレット・ムービー』や『Mike Da Mustang』などを手掛ける |
――世界一周レースを描いた前作からガラリと変わった本作のストーリーは、どのようにして思いついたのですか?
ボブス・ガナウェイ(以下ガナウェイ監督):ダスティのモデルになった農薬散布機を調べると、山火事に空から立ち向かうためにも使われていたんです。それは僕たちを自然に山火事の世界へと導き、その世界で素晴らしいさまざまな新しい乗り物に出会えました。また、レース用にデザインされたわけではないダスティがレース機になることで、エンジンが消耗して、ギアボックスがズタズタになるという話を、メカニックから聞きました。それで、ダスティは、レースができなくなり、セカンド・チャンスを探さないといけなくなるというストーリーを考えついたんです。
――そのストーリーにたどり着くまでに、どのくらい時間がかかりましたか?
ガナウェイ監督:ストーリーを書き始める前に、最初にリサーチをします。そのリサーチに1年かけます。そこからストーリーを書き始めて、ストーリーが脚本という形で完成するのに1年から1年半。ただ、この映画は、企画から完成まで約4年かかっていて、アニメーションをつけるなどほかの作業をする中で常にストーリーは変化し続けるので、本当は丸4年かかっているといっても過言ではないと思います。
――リサーチで米・イエローンストーン国立公園に行ったそうですが、どのように本作に生かしているのでしょうか?
ガナウェイ監督:公園の中に「オールド フェイスフル イン」という世界最大の木造建築、丸太小屋があり、そこが映画に出てくるロッジのモデルになっています。リサーチでは実際にロッジの屋根に登り、映画で描いているようにたくさん付いているスプリンクラーが、どんな仕掛けになっていてどんな見た目なのか、そのディテールを詳しく見るなど、細かいところまで調査しました。また、1988年に実際に、イエローストーンでオールド フェイスフル インが焼け落ちてしまう大火災があったんですが、それがクライマックスの山火事のヒントにもなっています。
――ものすごい細部まで徹底して作られているんですね。
ガナウェイ監督:一つ一つのディテールまで観客は目がいきません。気が付くものではないんだけれど、どっちかというと感覚的に感じるものなんです。ないとうそっぽいと感じてしまう。だから必要なんです。映画の中で、壁に新聞の切り抜きが貼ってある場面がありますが、あの記事も自分たちで書いたんです。肉眼では見えないレベルですが。そうやって細かい作業をしているうちに、逆にキャラクターについてより深く理解できるというのがあるんです。例えば、メーデーという消防車の思い出の壁というのが出てきますが、今までの活躍や友達の写真を飾るなど細かく作っていくうちに、彼のバックストーリーが生まれていきました。そうやってキャラクターがより進化していくんです。
――山火事のシーンは、実写かと思うほどのリアルな映像でした。山火事のシーンでこだわった点とは?
ガナウェイ監督:製作に4年かかったと言いましたが、火と煙の要素を完成させるだけで2年半くらいかかりました。それくらい複雑なエフェクトでした。本作は、ディズニートゥーン・スタジオで今まで手掛けた作品の中で一番野心的な作品と言えるくらい大掛かりな作品となりましたが、アニメーション映画でここまで大々的に火事のシーンを描いた映画はかつてなかったと思います。そういう意味でも、きちんと描かなければいけないという責任感もありました。それで、2年半かけてリアルな火の要素を作っていったのですが、映画の半分以上の662ショットに特殊効果が使われているんです。煙や火、水、すべてをあわせたショットなど、たくさんの効果、ショットを使い、リアルさを追求しました。
――そして、山火事と並んで本作の大きなテーマとなっているのが"第二の人生=セカンド・チャンス"。このテーマに込めた思いを教えてください。
フェレル・バロンプロデューサー(以下バロンP):まず、ダスティが故障により、第二の人生を進まないといけないというのがありましたが、それと別に、消防飛行機というのは、ほぼすべてが再利用された飛行機なんです。元輸送機、元軍用機、元貨物機など、違う用途で作られた飛行機が転用、改造され、消防飛行機として活躍している。そういった意味でも同じテーマが重なりますし、さらに、自然の循環という意味でも、火災というのは大地を焼きつくすと同時に、まっさらになって新しい土地が芽生える再出発の意味があります。その3つの意味での再出発が重なって、うまく描けていると思います。
――今までのディズニーアニメと比べ、とても現実に沿った作品だなと感じます。
バロンP:なるべく現実に根差したストーリーにしたいという思いがなかったことはないのですが、実際に消防飛行士たちと会って、彼らの勇敢さや素晴らしい仕事ぶりを知り、彼らの真の物語を忠実に伝えたいという気持ちがどんどん湧いてきました。この映画は消防士たちにささげられていますし、真の英雄たちの真の姿をアニメーション映画として描くことで、より多くの観客たちに彼らに対する敬意を深めてほしいと同時に、消防士たち自身が見ても納得する映画に仕上げたいという思いがありました。
ガナウェイ監督:実際に100人を超える消防関係者たちがアドバイザーやコンサルタントとして映画に携わっており、協力してくれたお礼に、彼らや家族を集めて、アメリカで完成披露試写会を行ったんです。映画を見て彼らが喜んでくれて、リアルに自分たちの仕事が描かれていることを誇りに思ってくれたことが、とてもうれしかったね。
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