栃木県佐野市のキャラクター「さのまる」。佐野市は「佐野ラーメン」で有名なだけにラーメンの丼を頭にかぶっているのはまあ納得できる。しかし、刀のように何か串カツのようなものを脇に差していることをご存知だろうか? あれこそが佐野市名物の「いもフライ」である。
「いもフライ」。それは読んで字の如く芋をフライにしただけの、いたってシンプルな庶民のおやつだ。ふかしたジャガイモに水溶きの小麦粉とパン粉をつけてフライし、ソースをかけただけ。
このエリアで広く食べられている食べ物で、佐野市にしかないなんてことはない。でも、佐野市に多いことは確かで、佐野市内に50軒ほどの店があるという。そんな佐野のいもフライ探検に出掛けてみた。
ブランドイモだけを使ったこだわりの一品
最初に足を運んだのは、数ある「いもフライ」店の中でも老舗中の老舗と言われる「江原商店」だ。メディアでも引っ張りだこらしいが、一体何がすごいのか? その謎を解くため、まずはガブリと実食だ。
アツアツをひと口食べてみると、キメが細かいパン粉はつけたソースを過度に吸うことなく、程よくサクサク感が残っている。中のジャガイモがこれまた濃厚な味。存在感も抜群だ。もちろん全体のバランスもよい。さすがは老舗の味である。「店は創業から37年くらいで、ずっと家族経営なんですよ」そう教えてくれたには江原真紀さん。
江原さんによると、この店の特長は「ジャガイモの品質」だという。「北海道の今金という場所で育った、今金男爵というブランドイモだけを使っています。甘みがあってホクホクしているのがこのイモの特徴です」。
なんでも畑に他のジャガイモを植えると土が変わり、ジャガイモの味まで変わってしまうそうだ。だから畑も今金男爵しか育てていないらしい。
それにきめ細かい特注のパン粉をまぶし、植物油でカラリと揚げる。「串も、中国産とかじゃなくて佐野の竹細工の竹ですよ。新しい竹には殺菌作用もありますしね」という気の遣いよう。これだけこだわって、なんとひとつ80円というありがたい値段設定なのだ。
●information
いもフライの店 江原商店
佐野市高萩町561-10
自慢の卵と自家製男爵イモでふっくらホクホク
次に向かったのは、「卵かけ放題のたまごかけごはん」で知られる「たまごや食堂やませ」。ここで売られている「いもフライ」も食通の間で人気だという。 その秘密はズバリ卵だ。
「うちのは衣に新鮮な卵をたっぷり使っているので、ふっくらしているのが特徴なんです」と答えてくれたのはスタッフの依田美枝さん。1個80円でソースはいろんな材料をブレンドした自家製のもの。
食べてみるとふっくらした衣がソースを吸って実にしっとり。そして中のジャガイモが程よくホクホクしている。「6月から12月は畑でとれた自家製の男爵イモを使っていますから」と自信に満ちた笑顔をみせてくれた。
増税後も1本60円で据え置き
最後に足を運んだのは、「いもフライ 大しま」。2015年でオープン20年という中堅どころの店だ。この店の特徴はとにかく安いこと。なんと増税後でも据え置きで1本60円というから恐れ入る。
肝心の味の方はと食べてみると、薄めの衣ゆえにジャガイモの素材感が強い。植物脂100%だからサックリしていてアツアツはもちろん、冷めてもおいしいのだ。
「佐野は繊維の町だから、昔の女工さんが安く手軽に食べたんでしょうね。片手で食べられるし」 と店主の大島ヒサ子さん。ところで値段は大丈夫なのかと聞くと、「大変厳しいんですけど、県外からもお客様がいらっしゃって励ましてくれますからね。ありがたいことです」と、こっちもうれしくなってしまうコメントをいただいた。
●information
いもフライ 大しま
佐野市関川町822-1
以上ざっと駆け足で紹介した佐野市の「いもフライ」。手軽で安価でおいしい。B級グルメの条件を満たした実に魅力的なスナックだ。このエリアには数多くの店があり、それぞれ微妙に個性のある「いもフライ」が味わえる。チャンスがあればぜひ一度、口にしてみてほしい!!
※記事中の価格・情報は2014年5月取材時のもの。価格は税込