文系の就活生は企業に入社すると、かなり高い確率で営業に配属されます。
これは営業には一定数の人間が常に必要であり、また仕事の基礎が詰まっているため、なるべく新入社員に経験させたいからだと思われます。
筆者も社会人生活3年目――。
一人前として機能しているべき年次になり(プレッシャーが半端なくて抜け毛がヤバい)、それなりの数の営業を『受けて』きました。自分も経験をしていますが、営業を受ける機会のほうが圧倒的に多く、いろんな営業マンを観察することができました。
以下、僕が営業マンならぬ『営業受けるマン』として感じた、好かれる営業マン像です。
まずは「見た目」だけども
注意点は一つ、『小ぎれいであること』です。さすがにどんなに『営業力』なんていう謎スキルを持っている人物がいても、例えば「なんか臭そう」と思われたらその時点で、商品が臭そう、ひいては会社自体が臭そうに思えてきます。僕なら二度と会いたくありません。アポ取りの電話機越しに臭気が襲ってきますからね。
そしてそれ以外は大して重要ではありません。
別に一様なスーツを着て面白みのないネクタイをする必要もありません。それがいかにさまつな問題で、現実に相手方がどれほど気にするか考えてみるとよいです。形にこだわる人は、それで安心感を得ているだけです。
『営業っぽい』と思われたら既に劣勢。
よっぽど重要なのが『営業っぽくなさ』です。
ていうか、僕は経験上、『いわゆる営業マンっぽい人』には心を許しません。なぜなら、そういう人に限って、見込みがないと分かったときの手のひら返しが半端じゃないからです。
僕が社会人になって間もない頃に営業の電話を受け、しばらく検討した結果にお断りの電話を入れたことがありました。
「また何かありましたら、そのときはよろしくお願いいたします」
と言ったら
「はァァァん!? うちにはこれしか商品がないんですよォォォォ! そんじゃー!」
とブチ切れられたことがあります。それまでのヘコヘコした電話から打って変わった口調と態度に僕は面食らいました。あのときくらいから会社員という生物が背負う業(カルマ)、そして悲しみを考えるようになったのですが、それはまた別のお話。
とにかく、人見知りをこじらせて24年の僕には良いトラウマになり、それから営業を受けるときは、警戒心を全開フルスロットルで臨むようになりました。
「金としか見られていない」と思われたら負け。
営業は受け手から考えると『何かしらの提案をされること』ですが、極端に言えば「これあげるからお金くれ」と言われているのと同義です。
つまり、営業される側は、多かれ少なかれ自分が金としか見られていない感じがします。
そして、表面を取り繕っていることは、受け手にはよく伝わってきます。
先ほどのエピソードの営業マンも、やけに腰が低いし、声をつくっているし、再現VTRとかに出てくる営業マンのようでした。そんな人は世の中に腐るほどいますが、気付けば当然みんな直しているでしょうから、無意識にそうなっているのでしょう。
(完全に余談ですがリアルで「いやー、勉強になるなァ」と太鼓を持つ人を見て僕は戦慄したことがあります)
結局、会社員は人間で、会社の奴隷でもなければ、血の気のないロボットでもありません。人として好意的な印象を持たせるのが、人に相対するときにはベストなのです。
「この人と仕事をしてみたいなあ」と受け手が思えば、8割は勝ちと考えましょう。 『人と人の繋がり』という、温かく、時には血なまぐさく、面倒臭いもののうえに仕事は始まっていくことが多いです。人の性から考えたら、ごく自然なことですね。
そのため、実行してほしいのが「まずは雑談から」です。ふつうに考えて雑談もしていない人と仲良くなれるわけがありません。
とりあえず仕事の話は置いといて雑談。
雑談のポイントは『事前調査』と『プライベート性』です。
まず『事前調査』について。
会社の事業などを調べてくる人は山ほどいますが、受け手の『金にしか見られていない感』を増長させかねません。雑談のための事前調査をすることで『人として見られている感』を演出できます。
そして『プライベート性』。
いかにプライベートを持つ『一人の人間』として見せるかです。格好をつけて営業マンぶられると「うわ、話しにくッ」と思います。
以上を踏まえると、営業されている側から話に乗りやすくなります。
具体的な例をあげます。
まずは名刺交換があるので、『名前』の話題がオススメです。 少し変わった名前の人は、突っ込みに慣れているため、何かしらのネタを持っています(由来や同名が多い地区など)。
相手に地元トーク(じもとーく)をさせると良い感じです。例えば僕のように都市圏出身じゃなく未開の秘境のような土地から出てきた人は、地元の話をするのがほぼ例外なく好きです。
僕に関して言えば、コミュ障生活24年のルーキーですが、まれに営業をするときは、話題を引き出して、あとは聞き役に回ることが多いです。話している人は、話しているうちに勝手に盛り上がりますから。
次は『近くの有名な飲食店の話』。
以前に受けた営業で感心したのはあいさつのあとに初っぱなで「このあたり、おいしい店がとっても多いですよね。この前も○○に行ったんです。ご存じですか?」と話し始めた人です。
徒歩5分圏内くらいなら、その会社の人のかなり多くが行ったことがあるはずです。食べ物の話は誰しもがたいてい興味を持ちますし、広がり方も多様です。
アポイントが午後イチならランチで食べておくと具体的に話せるでしょうし、行ってなくてもネットでチェックして休日に友達ときたけど入れなかったなどと言えば『プライベート性』も演出できます。
僕はこんな流れから一緒にランチに行ったり、お酒を飲みに行ったりしたことが何度かあります。そこで「こういうことやりたい」「ああいうのがおもしろそう」と話が膨らんで生また仕事もあります。
社内の人でもオフィスだけでは生まれないものがある、というのはよくある話。社外の人でも、変わらないですね。
(でも僕はゆとり世代ど真ん中なので、心を許している人でない限りプライベートにまで会社の要素が入ってくるのは大嫌いですが)
次が『持ち物』の話です。
文房具などが代表例でしょうか。あまり一般的ではないものを使用する人は、ほぼ例外なくこだわりを持っています。プレゼントかもしれませんが、好きだから使用しているわけで、聞かれて(褒められて)うれしくないことはありません。
相手から話題を広げられる(広げやすい)ことを条件とすれば、何でもいいでしょう。
とはいえ、TPOをわきまえないとキレられる。
ただ、空気は読みましょう。
時間に関していえば、通常、来客を受ければ1時間くらいは誰もが余裕を持つはずです。ですからアポ自体をその時間内で終わらせることを順守しましょう。提案なんて相手が乗り気になってくれれば、2回、3回と聞いてくれます。
営業のテクニックは世の中に星の数ほどありますが、よほど殺伐としている事業や業界でない限り、どこにいても通用します。少なくとも金絡みの話しかしない人を好きになる人はいないことを、お忘れなきよう。
※画像は本文とは関係ありません
>武野光
>平成2年生まれ。「TOEIC未受験」「サークル未所属」「友達の数が片手未満」といった状況から就職活動に挑み、その体験から得た教訓をつづったブログ『無能の就活。』が大きな反響に。現在はサラリーマンと兼業で作家活動を行う。著書に『凡人内定戦略』『凡人面接戦略』(中経出版)、『就活あるある ~内定する人しない人~』(主婦と生活社)など。マイナビ2016でも、マンガ『キミ! さいよー』(石原まこちん/小学館)内で、一言コラム平成ベビーの就活用語辞典掲載